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【 White page 5 】

あいつが見舞いに来た
君の噂話を
いつも聞かされていた
いつも いつも・・・

  

   今回だけはわからないんだ
   彼女がどこに行っちまったのか
   元気でいるといいけどな・・・

タバコを出しかけて
ふと手を止めて
引っ込めた

   全館禁煙だったよな・・・

時には
心痛むことも
聞かされたよ・・・

   指くわえてたの
   お前だけだったんだぜ

始まった・・・

    仲間うちじゃ
    彼女の”客”じゃなかったの
    お前だけだったんだぜ

次々名前があがる
あいつも あいつも
あいつの名前も

・・・沈黙

    ・・・お前な・・・
     彼女はな
    お前が思ってるほど
    子どもじゃなかったってことさ
    それでも何とも思わないのかよ

・・・沈黙

    ”マリヤ様”扱いされる身にも
    なってみろよ
    好きなヤツに死なれて
    気を紛らわしてただけの女さ
    そんなヤツいつまでも想って
    挙句の果てに
    指一本触れないまま
    お前 死ぬのかよ

・・・沈黙

    お前 それでも男かよ
    死ぬのわかってて
    好きな女のそばにいた
    アイツの方が正直だよ
    お前は卑怯だ

             

・・・沈黙

    情報通の俺でさえ
    もう彼女の情報集められないんだ
    お前に何かあっても
    彼女に伝えられないんだぜ
    何とか言えよ!

・・・沈黙

    ・・・好きにすればいいさ
    俺はおりる 
    随分長い間お前とはダチだったけどな
    あきれたよ
    そうやって聖人君子ぶって
    くたばっちまえ!

・・・沈黙

   
    お前・・・
    これだけ言われても
    何とも思わないのかよ・・・

             

心臓に悪いからな


    ・・・・
    わかったよ・・・
    もう見てらんないよ
    俺 もう来ないよ
    見てらんないよ・・・


椅子が音を立てて
倒れた
ドアが締め切る前に
あいつが振り向いた

    ・・・生きろよ・・・

目にいっぱい涙をためて
あいつが立ち去った

わかってるよ
お前達が彼女のことで
後悔してること
黙っているのは
耐えられなかったんだろう?
お前とは
長い付き合いだもんな
わかってるよ・・・
お前の言うとおり
俺は卑怯だよ

お前から彼女の噂聞かされるたび
気が狂いそうだった
頭かきむしって
床に打ち付けて
泣き叫んでた
まったく無様なもんだったよ
お前は知らなかったけどな

彼女の前では
俺は”男”であることを忘れた
通り過ぎていくだけの
そんなヤツだと思われたくなかった
気の弱いヤツさ

素肌になって泣いてる彼女に
服を着せて家まで送って
寝付くまでそばにいて
帰ってきて・・・
泊めることも泊まることも出来たのにな
彼女の前では
いつも”男”の自分を捨てたよ
一番近い他人でいた
それが
彼女のそばにいる
唯一の方法だった・・・
お前の言うとおり
俺は卑怯だよな
それでも・・・
こんな馬鹿なヤツ
1人くらいいたっていいだろう?

お前はこれからも
必死で彼女の行方
探すだろうな・・・

お前はもう本当に
俺の前には現れないだろうな・・・
・・・いいダチだったよ・・・

俺の分まで元気でいろよ・・・