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【 White page 2 】

君がいなくなったと聞いた
雪の降る夜に
赤いコートを着て
駅のホームのはじっこに
ひっそりたたずんでいたと

あの日
そう 君の好きな夕暮れ時に
かじかんだ両手を握り締めて
病室に来てくれたね
涙をいっぱい浮かべて
言葉もなく僕を見つめた
数年ぶりに見た君は
やつれきっていた

ポケットから手紙を出して
枕元に置き
僕の髪にそっと触れて
静かに立ち去って行った

君がどんな暮らしをしていたか
僕は知っていたよ...
君を助け出したかった
そこから連れ出したかった
君が泣いているとき
そばにいてあげたかったよ...

僕の体は
もう 手術には耐えられない
今度発作が起きたら
それで終わりだ
君には言えなかったんだ
あまり長く生きられないことを
だから 君に気持ちを打ち明けなかった
どんな時も
いつでも 君の
安らぎの場であろうと決めてたんだ

あの時も あの時も あの時も
そう いつでも どんな時も...

恋人が死んで
絶望の果てに
夜の街で生きた君
雪の降る寒い夜
酔ってタバコをくゆらせたまま
肌をさらして ”抱いて...”と泣いた
どうして君に触れることが出来ただろう

銀世界を
真っ赤なコートではしゃぎまわった
小さな君を思い出す
雪のように清らかで
僕にはいつも君はまぶしく輝く希望だった

僕は君を見失ったりしないよ
どんな君でも 僕にはいとおしい
すり抜けてしまう君の心が叫んでいるから

僕は君を見失ったりしないよ

いくつもの仮面を身につけて
この世の毒に汚されようと
君は雪のように清らかで
まぶしく輝くあどけない少女のままで
どんな君でも 僕にはいとおしい

君が戻って来るまで
あの無邪気な笑顔に戻るまで
僕は生き続ける

僕は君を見失ったりしないよ...


#詩物語