ノルウェイの森と吉野家の水

ぼくは5時半に目を覚ました。昨日は寝て起きて食べてたばこを吸ってコーヒーを飲んでまた眠る、という行為をルーティーン的に繰り返していた。
ぼくはカフェインには耐性がある方で、コーヒーを飲んでも、レッドブルを飲んでも、一気飲みしてげっぷをした後、その勢いでベッドに沈み込み、5時間くらい眠ることができる。それでもやっぱりエナジードリンクに頼りたくなるのがティーンエイジャーの性であって、今まで徹夜をしようと思って買い込んで無駄にした空き缶の量はゴミ袋2袋分くらいにはなるだろう。
そんなことはどうでもいいのだ。
エアコンがきいたヤニ臭い部屋を見渡してみると、コンビニ弁当のゴミ、ミネラルウォーターのペットボトル、濡れたまま放置されて腐りかけているノースフェイスのゴアテックスのジャケット、いつ履いたかもわからないような靴下の群れ、なんかがホコリと一緒に散らかっていた。しばらくこいつらと寝食を共にしてきたが、いい加減嫌気が差してきたので出て行ってもらうことにした。
エアコンを止めて窓を開けてたばこの匂いを追い出す。その辺に潰れていたコンビニ袋にゴミを拾って詰め込み、別府市指定のゴミ袋に入れる。布団をひっぱりあげてホコリをはたく。
ずいぶん綺麗になった。掃除機をかける。セリアで買ってきたパチモンのクイックルワイパーで床を磨く。
部屋はきれいになった。問題は家主の方である。3日くらい風呂に入っていないので、髭は伸び放題、体はベトベトしている。
ちょうど近所の温泉が開く時間になったので、下着を着替えて洗濯機に放り込み、スイッチを押してから外に出かけた。
歩いても行ける距離だが、自転車に乗りたかったので駐輪場に向かった。
ライトを触ってみたら死んでいた。どうやら不良品を引いたらしい。めんどくさい。
自転車は最近新調した。フジのフェザー。ピストバイクである。バラバラで届いたが、中学生の頃自転車いじりに熱中していたおかげで、しごく簡単に組み立てることができた。
固定ギア(後輪とクランクの回転が一緒になっている)の自転車に乗るのは初めてで、まだスキッドどころかスタンディングもできないが、楽しく乗っている。
温泉に着いた。運よく誰もいなかった。頭を洗って髭を剃り、熱い源泉に浸かった。しばらくして満足し、家に帰った。
コーラのプルタブを開けた。100ミリリットルくらいを流し込み、たばこに火をつけた。なんだか本が読みたい。何を読もうか。
途中まで読んだ村上春樹の「ノルウェイの森」が本棚にあったので読むことにした。村上春樹の長編は初めて読んだが、精神病とセックスの話ばっかりしているなァと思った。彼は、性についてどんなスタンスを持って書いたのか。考える気はないので、誰か簡単に考察を教えてほしい。
途中で腹が減ったのでバイクで吉野家に行った。僕のバイクは雨が降るとキーが回らなくなる。何回もひねって、何十回に一回くらいの確率で回る。コツはまだ掴めていない。多分キーシリンダーに雨水が入るのがいけないんだと思う。
なんとかエンジンをかけることに成功し、吉野家に向かった。
牛丼並盛りを注文した。席に着いた時、熱いお茶ではなく水が出てきて、ああもう冬は終わったんだなァと思った。八戸にいた頃、受験期、特に勉強をするわけではなかったが、夜更かししてよく雪の中吉野家に行った。着席と同時に提供される熱すぎるお茶は、僕のイメージする八戸の冬には欠かせないものだった。
冬の国をもがきながら抜け出して、南国に降りたち、これから人生の夏が始まるんだ!青春だ!なんて思っていた矢先、なぜか鬱が悪化し、引きこもりになっている。僕は何をやっているんだろう。なんて、牛丼が届くまで水を啜りながら考えていた。
回らないキーシリンダーに悪戦苦闘しながらまたエンジンをかけ、家に帰った。本の残りを読んだ。
ここまで書いて、まだ14時くらいだろうと思って時計をみたら、もう16時半だった。扇風機に吹かれながら、iPadのキーボードを叩く。もう書きたいこともないのでこの辺で区切りをつけよう。僕はまた眠る。

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