『理想的なコロナ後』

※これはフィクションです。

コロナウィルスの感染拡大は世界中に大変な事態をもたらしました。たくさんの人に感染し、たくさんの人が亡くなりました。たくさんのお店や会社が閉店、倒産。たくさんの人が仕事を失いました。

そして、やっとコロナが収まった頃、人々はお金について真剣に考えるようになっていました。

この経済社会はおかしい。実体のないお金というものを今までのようなルールで流通させていては、今回のような非常事態が起きた時、大変なことになる。

そして、ついに政府もそれに気づき、お金は、誰でもいつでも必要な金額を、預金通帳に自由に書き込めるようにしました。

それまでお金の心配ばかりしていた人々はとても喜びました。通帳に大きな数字を書き込んで、大邸宅や高級車を買ったり、海外旅行に行く人もいました。仕事はせずに、毎日遊んだり、一日中寝ている人もいました。

でも多くの人は、ほぼ今まで通りの必要な金額を通帳に書き込むだけで、相変わらず働いていました。だから日常生活には、誰も何の不自由もありませんでした。

しばらくすると、遊ぶのに飽きてきた人も仕事を始めるようになりました。必要以上の大きな家に住んでいた人も、誰もうらやましがってくれないので小さい家に引っ越したり、みんなそこそこのものしか持たなくなりました。

世の中が落ち着くまでに、そう長い時間はかかりませんでした。そして、お金の心配のなくなった人たちは、とても安心して暮らせるようになりました。

それどころか、貯金しておく必要もなくなったので、富裕層がなくなりました。貧富の差がなくなり、世界中が平和になりました。

人々はだんだん、これならもうお金というものは、あっても意味がないのではないかと考えるようになりました。そしてある日、ついに政府が発表しました。

「今日から貨幣制度は廃止します」

※これがフィクションでなくなることを祈ります。

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