藤田亜紀(singer)

旅先で見かけるおじさんが好きだ。

トルコで平日昼間から道端に机を出してボードゲームをしてたおじさん。
インドで玄関先に座り、ぼーっと通行人を眺めてたおじさん。
真夏のタイ、暑さにやられトゥクトゥクの運転席でだらっとのびてたおじさん。

心がせせこましくなったり、生きてる不安に直面したりするとき、たまーにおじさんたちを思い出す。
おじさんたちは今日も、彼らなりの今日を過ごしているだろうか。
こことは全然違う世界に、全然違う言葉を喋って、全然違う価値観で、今日を生きてる人たちがいる。
またいつか、会いに行きたい。
おじさんは、世界は、きっとどこにも行かない。
そう思えると、小さな世界に生きる自分の目の前のことにも、少し向き合ってみようという勇気が湧く。
そんな風に思えるのが、旅の良さだと思う。

このアルバムも、誰かのそんな場所になり得たらいいな、と思います。
いや、藤田くんがおじさんとか、そういうことではなく。

亜紀ちゃんのコーラスワークに今回も彩りをもらえた。
僕には緻密なハーモニーを構築する能力があまりないので、とっても頼りにしている。
ノア・バームバック映画、ライムスター宇多丸さんのラジオ、
KANさんや宇多田ヒカルさんの音楽、茨木のり子さんの詩、多くの"好き"を持つ彼女の小粋なヒューマニズムとユーモアは
ずっと年を取らない心の世界で旅をし続けるんだろう。
僕はもう中年ですが、これからもどうぞよろしくお願いします。
Ryuji

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