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【詩】標識くん

生真面目な道路標識くん
君の役目だよ
と進入禁止と20キロ制限を
任されたその日から
律儀に
直立不動
まっすぐ立ち続けてる

車と人と自転車と
ちょっと高いところから
ご案内
毎日散歩にやってくる犬とは
ワンと声をかけ合う仲だ

たまにやって来る猫にはご用心
見て見ぬふりで
ひょいとルールを素通りしていく
そんなときは
標識くん
凹みそうにもなるけれど
やっぱり直立不動
まっすぐ立っている

でも心のどこかで
そんな猫に憧れてみたり
ぼくもあんなふうに丸くなってみたい
ってね
ずっと直立不動の彼の
小さくて大きな夢

ある日の夕暮れ
暮れゆく空に飛行機が轍を残していた
白い飛行機雲が
すーっと
すーーっと
伸びていく

今日も朝からまっすぐだった標識くん
ふと空を見上げていた
そうして
ぐーっと
ぐーーっと
見上げているうちに
あの気ままな猫のように
くたり
と曲がっていた

ぼくにもできた
標識くん
飛び上がるほど喜んだけど
照れて
夕陽の影に隠れてしまった

そんなところが
やっぱり
まっすぐ
標識くん

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