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IATF16949と現場改善はちゃんと繋がります

こんにちは!たつみ@中小製造業応援団です。
前職コンサルタント会社の時代から現在まで、自動車業界の会社を大小8社支援してきました。
多くの企業ではIATF16949対応と改善活動は「近いけど別物」といった関係で扱われていました。それって、かなりもったいないですよね。

今回は改善活動を活性化し、IATF16949と繋げる取組を簡単に解説します。

IATF16949とは

基本的にこの記事を読む方は自動車業界の方が多いと思いますので、軽い解説までにとどめてご説明します。

IATFとIATF16949

まずIATFとは何かと言いますと、「International Automotive Task Force」 の略で日本語では「国際自動車産業特別委員会」のことです。ここがIATF16949の規格と認証制度を制定・管理しています。一般的にIATF16949と言うと規格のことを指します。
IATFの構成メンバーは欧米の自動車メーカーと自動車産業団体です。また、自動車メーカーが制定する規格であり、自動車の品質は部品に依存する割合が高いため、部品メーカーに求められる規格となっています。
要はIATF16949とは、欧米自動車メーカーへ納入する部品メーカー向けの品質規格なんです。

IATF16949の規格の構成

元々がISO9001をベースに自動車業界向けにアップデートしてきたものなので、以下のような構成になっています。

IATF16949の構成

IATF16949を導入する意味

ここまでである程度想像ができると思いますが、IATF16949を日本の部品メーカーが導入する意味は以下となります。

  1. 欧米自動車メーカーと取引する

  2. 第三者機関に審査してもらい、自社の品質リスクを客観的に確認する

  3. 自社の品質と生産性を向上させる

この中でも圧倒的に1が大きな意味を持ちます。なので、改善活動と乖離してしまうのです。

よくある部品メーカーのIATF16949の実態

私自身が見た実態、自動車業界の人たち、自動車業界へのコンサル経験のある仲間と話していて「あるある」と頷いたものを3つご紹介します。

実態①:監査の時期だけがんばる

これがナンバーワンあるあるでした。監査前に品質保証部門が号令をかけ、走り回り、認証維持のための指示を各部署に行います。
普段やっていないことをそのシーズンだけやるので、監査員にインタビューされるとボロが出て、監査後も品質保証部門が走り回って対応します。
こんなんでも認証を維持できていいのか、と疑問に思いますが、実態はそんなもんです。

実態②:現場の人がIATF16949をあまり知らない

ちゃんと改善活動などやっていても、IATF16949で必要なことを理解していないことが多いです。SPC(統計的工程管理)やMSA(測定システム解析)あたりは、品質改善の活動はある程度やっていても、普段からちゃんとできていない製造現場は多いです。
ちなみに設計FMEAだけはなぜかちゃんとわかってやっている企業が多いですね。最初は特に大変で、IATF16949を恨めしいと思いますが、ちゃんとやると有用性がわかってくるからなんだと思います。

実態③:メジャーな指摘をしない監査員を信じる

要はIATF16949の認証を取ればいいので、甘い監査員にお願いすればいいのです。結局「クレームなど品質で怒られていないからいいや」「IATF16949を取っても取らなくても自動車メーカーに品質で怒られる」「これは品証の活動で現場はあまり関係ない」という認識の人が多く、認証を取ることが目的になってしまっているからこうなってしまいます・・・。

IATF16949と現場改善をうまく運用するには

「IATF16949で定義されていることをちゃんとやればいい」と言ってしまえばそうなんですが、それができないから困ってしまいます。どういうポイントを押さえればいいか、シンプルに考えてみました。

ポイント①:改善のステップと使用ツールを改善活動の標準にする

現場の改善を、現場の裁量に任せすぎず、ある程度ステップとツールを標準化して改善の成功確率を上げます。それと同時に、IATF16949で規定されているツールを各ステップで使用し、改善後も使い続けるようにすれば、改善活動の管理と品質管理ツールは自動的にIATF16949に準拠することになります。
具体的には、8D(フォードの問題解決ステップ)やDMAIC(シックスシグマの改善ステップ)を使い、タートル図やFMEA、管理図などのツールを各ステップで基本的に使うようにフォーマットまで整え、改善活動で使用するようにします。

ポイント②:改善とIATF16949両方を理解している内部監査員を育てるプランを作る

せっかくポイント①で書いた改善をしても、それをIATF16949に組織として適用するには、「規格の遵守→内部監査→指摘の改善」のサイクルを回す必要があります。こう書くと小難しいですが「改善実施→改善内容や結果のレビュー→レビューを踏まえた改善の実施」というイメージでいいと思います。
認証維持のためにやることはやっていると思うので、それを自然な形に修正するには「IATF16949に即した活動を自然に行う」ようにします。それを第三者の視点で促す人が内部監査員です。

ポイント③:Have fun !!!

楽しむなんて難しいのは承知の上で書いていますが、改善して環境が変わって成果が出て評価も上がる、という成功体験を積んでいい気持ちになってもらい、活動のフォロワーを作ることが重要です。厳しく教え込んで残業時間に改善する、指示して意味のわからない規格対応させる、といったことではなく、気持ちよく改善して規格も遵守できるように、実行者・推進者・経営者が心がけることが大切だと思います。

まとめ

わかっている方には当たり前のようなことを書きました。しかし、実態は苦労している企業が非常に多いと感じています。上に書いたようなことを実践できると無駄な規格対応業務が減り、改善が進み、いい職場になることに繋がります。

最後に宣伝で恐縮ですが、自動車業界に特化した問題解決のサービスも弊社では行っています。相談だけでも気軽に声をかけていただき、日本のメーカーのレベルアップに向けた情報交換でもできれば幸いです。


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