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マスク製造で話題の企業のライン立ち上げを考察してみた

こんにちは!中小製造業応援団のたつみです。

3月に中国のBYDが巨大マスク工場を建設しました。日本でも少し前からシャープやアイリスオーヤマがマスクの製造販売を開始したり、今までマスクを作っていなかった会社が作り始めています。

「マスクぐらい作れるでしょ」と思っている人もいますが、ポイントは「転換のスピード」で、これはものづくり力に直結するものです。そこで、アイリスオーヤマとシャープの生産開始までを考えてみました。

新しい製品を作るのって大変!

昔は、製品設計・ライン設計するにも紙で図面を引いていました。もちろん今は違いますが、それでもまだCADを使っていない会社もあります。設備も、専用の設備を買ってマニュアル見ながら数ヶ月はテストして使い始める。加えて調達も、調べまくって電話しまくってサンプルを見に行って、商談は全部オフライン。これだと新規にマスク製造ラインを作るのに普通に1年かかったりしたでしょう。

マスクよりも複雑なものであれば、金型を作るのも下手にやると製作や調整に時間がかかります。設計品質、量産品質を担保するにも時間がかかり、新規ラインなんて2年がかりの作業とか普通にありました。

さらにさらに、日本はスペースギリギリの工場が多いので、そもそもの場所の確保からレイアウト設計が大変だったりします。

マスクを作るといっても、新規量産ラインを数ヶ月で立ち上げることは簡単ではないんです。

アイリスオーヤマは決定から生産開始まで3ヶ月半

アイリスオーヤマは先日、10億円を投資して新たにマスクを生産する宮城県角田市の工場を報道陣に公開しました。6月生産開始、7月には月産1.5億枚となる予定で、国内最大規模のマスク工場になるそうです。コロナ禍の前は国産マスクは全部で5千万枚でしたので十分大規模ですね。2020年10月にはフランス工場で月6千万枚も開始されます。

生産の前提となる情報は以下です。

・原材料は国内調達
・設備は中国メーカーから購入
・中国2工場で自社生産しており、生産技術は持っていた
・場所は角田工場内
・その他の主要設備はクリーンルーム

大まかな意思決定と生産開始のタイミングは、報道によると以下のようになります。

・2020年2月:ライン新設と中国からの設備購入を決定
・???:購入交渉で、納期前倒し。費用は前払い。
・5月20日:設備をラインに搬入
・6月上旬:生産開始
・7月:月産1.5億枚へ

3ヶ月で交渉と契約、輸入搬送。同時にマスクの設計とクリーンルームの設置など工程設計と必要設備などの設置、人の確保などをやったのでしょう。事前交渉などある程度は進めていたのでしょう。

中国の工場ですでに製造しているので、恐らく似た設備で、マスクの設計はほぼ同じなのでしょう。設備をラインに導入して2週間で量産開始は、設備の試運転や調整など最低限のことぐらいで立ち上げるのでしょうね。

意思決定から約3.5ヶ月弱でライン立ち上げは十分に早いと思います。

シャープはなんと、1ヶ月で生産開始

シャーブは、2020年3月24日から、液晶ディスプレーを生産している三重工場で、クリーンルームを活用してマスクの生産を開始。3月31日から政府向けに出荷を開始し、4月21日から個人向けマスクの販売を開始しました。4月の販売開始では、応募が殺到してサイトがダウンして大騒ぎでしたね。

意思決定から生産安定までのタイミングを報道から見ました。

・2020年2月28日:マスクの生産を決定
・3月24日:生産開始(政府向け出荷)
・4月21日:個人向け販売開始

え?早くないですか?1ヶ月弱で生産開始、2ヶ月で安定生産になっています。日50万枚の生産を目標にしており、想定ですが販売数量を見ると4月末頃には目標枚数達成したと思われます。月に約1,500万枚とアイリスオーヤマに比べると少ないですが、十分多い枚数でこのスピードです。

生産の前提となる情報を見てみます。

・クリーンルームと空きスペースはもともとあった(液晶減産のため)
・親会社の鴻海が中国で生産実績を持ち、シャープの生産立ち上げを支援
・原材料の調達先は非公表(ここから考えると国内調達ではなさそう)

場所はあったんですね。設備も鴻海経由で買えそう。それにしても1ヶ月は早いと思います。三重工場では今までと全く毛色の違うものを初生産するのは、ものすごく大変だったのだと思います。素晴らしい!!!

加えて鴻海の力を思い知らされている感じがします。意思決定のスピードや設備・ノウハウの移管のスピードが段違い!これはすごいです。

まとめ

これから伸びる業界、厳しい業界が明確になり、しかも国内市場は縮小します。となると、伸びる業界向けにアレンジすることが重要になってきます。この一つの例としてマスクを見てみましたが、ご紹介した会社は、恐らくかなりのノウハウがドキュメント化されていたりモジュール化されていたりICT化されているのだと思います。

また、現場の方々の努力も当然あると思います。自動化と人の育成で変化に耐えられるものづくりを目指しましょう!

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