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製造技術者に訪れる真の働き方の改革

こんにちは!中小製造業応援団のたつみ(@tatsumi_vicyp)です。

最近よく聞く「ジョブ型雇用」や様々な環境の変化により、製造関連の技術者を取り巻く環境が変わります。製造技術者は自発的に学習することが重要になり、企業は日本版ジョブ型雇用を考える必要が出てきています。

考える材料として読んでいただければ幸いです。

製造技術者を取り巻く環境の変化

まず、どんな雇用環境の変化があるか見てみます。

<製造技術者を取り巻く主な環境の変化>
①人口減により生産性向上が強く求められる
②1つの専門分野だけでは不足となるケースがもっと増える
③働き方改革とオンライン化が進む
④オープンイノベーションで他流試合が増える
⑤日本版ジョブ型雇用が進み、仕事と報酬が自分の腕と連動する

①人口減により生産性向上が必須

下の記事の中に詳細は書いていますが、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)は1995年をピークにとっくに減少しており、2060年には現役世代1人で1人の高齢者を支える社会になります。単純比較で生産性を1.3倍に上げる必要があり、低付加価値業務の自動化と高付加価値業務の強化が進みます。

技術者の業務は基本的に高付加価値ですが、さらに高付加価値化が求められる時代になります。

②1つの専門分野だけでは不足となるケースがもっと増える

付加価値を高める方向性は、「一つの技術を深掘りする」と「広く技術を知る」の2つがありますが、どんどん両方が求められる状況になります。車を作るのに元々は機械を知ればよく、今は電気のことを知らないとダメで、これからは通信などを知らないとダメといったように、どんどん技術の幅が広がっています。今まで以上に技術技能を高めるには、先人のノウハウを吸収すること、効率良く働くことが重要ですね。

③コロナ禍で一気に進んだ働き方改革とオンライン化

急速に進みましたね。週4日勤務や、設計データへのリモートアクセスの常態化など、家で仕事して時間もコントロールできる環境になりました。そんな中、副業可能な会社も増えており、自分の腕を試す機会が増えてきています。今はフリーランスの製造技術者向けの案件マッチングサイトもいくつかありますし、働き方の多様化はこれからも進みます。ITと違い、ハードウェアベンチャーとして起業することは資金的に難しいので、小さな会社がポコポコ生まれるよりもフリーランスや副業が増える形になります。この流れには定年後の技術者も拍車をかけるでしょう。

オープンイノベーションで他流試合が増える

オープンイノベーションは大企業も本腰を上げて取り組み始め、中小企業でも同規模で連携して開発するところが増えています。社外の人と一緒に開発して製造する機会がこれからどんどん増えていきます。

⑤日本版ジョブ型雇用が進み、仕事と報酬が自分の腕と連動する

③にも関連しますが、ジョブ型雇用が一番大きなカギです。日立や富士通など様々な大手がジョブ型雇用への転換を決めています。

これによって、職務と報酬が連動するようになります。今まで以上に、できることと給与が一致するようになり、年齢で高給をもらうことが減ります。また、会社の育成方法が変わり、自分で勉強して実践して腕を磨くことが重要になります。

ジョブ型雇用って?

上の「⑤日本版ジョブ型雇用が進み、仕事と報酬が自分の腕と連動する」が一つのカギだと考えます。そこで少しジョブ型雇用について説明します。

ジョブ型雇用については色んなサイトで紹介されていますので概略の説明にとどめますが、他サイトでは間違った解釈もあるのでご注意ください。

元々日本はメンバーシップ型雇用、欧米はジョブ型雇用と言われています。大まかにはジョブ型は職務内容や範囲が明確で、その成果で報酬が決まります。メンバーシップ型は配属先の判断で業務が決まり、報酬は役職や会社への貢献度(年数含む)などで決まります。

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基本的に欧米のジョブ型では、スキルアップは自主的に行われるもので、ジョブローテーションのような考え方はありません。色々身についている人は、自発的に勉強したり、職務定義をムリに超えて積極的に仕事を請け負ったり、社内外の違った職務に手を上げて(給料が下がっても)新しいことをして身につけています。

ちなみに欧米は「労働時間が短く休暇も長い」と言われていますが、仕事ができる人は自主的に身につけるためにメッチャ働きます。早く帰る人は、職務をこなすだけの人や、外食は高いので家に帰って食べる人です。メッチャ働く人は家に帰ってから仕事したり勉強します。格差が大きいのですが、いい点ばかり報道されているので、よく誤解している人がいます。

戦略に基づいた組織があり、その中の人の職務と配置が明確に定義されているのがジョブ型です。全員の職務定義書(職務を具体的に定義したもの)があり、採用も明確な職務が定義され、それを遂行できるかで判断されます。人格や会社に合っているとかではないのです。

これをそのままマネするのは容易ではありません。企業文化がかなり変わります。それ以上に、そもそもマネしていいのか、と疑問に思います。なので日本型のジョブ型雇用が必要と考えます。

いずれにせよ、世界の潮流やコロナ禍への対応でジョブ型寄りになるのは間違いないです。

ジョブ型寄りで先行しているIT技術者との対比

IT技術者は日本でも2,000年頃には転職が当たり前、研修に100万円かける、情報共有などのコミュニティサイトができる、といった自発的な学習環境ができ始めました。今でもフリーランスの気軽さは圧倒的です。自発的な学習環境という意味では製造技術者はIT技術者の20年遅れですね。

ITと比べて製造の技術者が遅れている理由は以下の通りです。

<ITより製造技術者の自発的な学習環境が遅れている理由>
・基本的にモノが必要なので気軽に試せない
・業界全体のIT化が遅れている
・企業が技術情報を外に出したがらない
・IT技術者は大幅に増えているが、製造技術者は横ばい
・技術が複雑になり細分化されすぎた

IT技術者は新しい産業なので自由で、ITツールを使って情報収集やコミュニケーションを行い、気軽にツールなどを試しています。しかも市場も技術社数も伸びているので教育プログラムも増えます。

さて、こんな状況で欧米型のジョブ型雇用はどこまで成り立つのでしょうか。

製造技術者の環境変化とこれからやるべきこと

程度の差はあれ、ジョブ型の方向性に向かって、より自分の腕が重要になるのは間違いないです。大企業では特に、年次が上がるとさらに、職務遂行能力で査定されます。「生産性を高めて成果を出す」「自発的に学習する」ことを行わなければ、ずっと同じことをやり続けて給料も上がらず、常に解雇のリスクを抱えることになりかねません。

少しでも給料を上げたり成長して責任範囲を広げたいのであれば、会社から何かやってもらうのではなく、自分で動くことが重要です。自分の強みを明確にして徹底して高めることを考えましょう。自分の付加価値を高め、業務効率を上げて

日本版ジョブ型雇用と中小企業の対策

会社を永続させることを是とする日本において、欧米型のジョブ型雇用はムリです。企業文化ではなくこれは日本の文化の問題です。

日本らしい日本版ジョブ型雇用は、グローバルで折り合いを付けながら日本に競争力を持った状態で合わせるために、①人に合わせた柔軟性を持つ、②新人は今まで通り、という方向性が必要です。その上で以下の特徴を備えるようにすべきと考えます。

<日本版ジョブ型雇用の特徴>
・役職や職務と報酬体系は整備されている
・画一的な職務ではなく、人に合わせて役割を決め、職務を変更できるようにする
・20代は現行のメンバーシップ型雇用
・30代から役割が明確になり、職務と報酬も決まる(30代である程度自分の専門を磨くことが求められる)

それに対して、中小企業はどういう対策で備えればいいのでしょう?

結論を言うと、中小企業は雇用の形態はこのままで良く、成長できる環境を用意して給料を上げることだけ考えればいいと思っています。

ジョブ型になると基本的に職務が限定的になり、大企業はその方向に舵を切るでしょう。中小企業の面白いところは、自分の責任範囲が広く、自分の成果が会社の成果として現れやすいところです。職務を限定しすぎず積極的に動く環境を与え、結果を出したら報酬でも報いることができればいいと思います。自分が成長し、会社が成長し、給料も上がる環境は魅力的ですよね。

そのために、中小企業はベンチャーであり成長を本気で目指す企業になるべきだと考えます。

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