[パワー・オブ・ノヴァ]本田未央を引いた話

※ネタバレと主観を多分に含みます


正直、あの子が来るのはもう少し先、具体的には9月月初のアニバーサリーガチャで来ると思っていた。だからガチャの告知を見たときひどく驚いてしまった。

驚いたのは時期のせいだけじゃない。特訓前は髪を風になびかせて、風に乗ろうとしている紙飛行機とその進む先に何かを期待するような、純粋なまなざしを投げかけていた。そして特訓後には、イラストだけではよくわからなかったけれども、広い広い宇宙が見える場所で、はためく旗と強い光を背に星空のスカートをまとって力強くこちらを見つめていた。

本田未央というアイドルについて、どんな印象を持っているだろうか。別に私はここで「普段は元気な優しい笑顔を見せる彼女の、実は凛々しくて力強い一面が見られた」なんていうことをわざわざ言いたいわけではないが、しかし特訓後の強気な目は確かにこれまでなかなか見せてこなかったと思う。そんな彼女の目に、私はたぶん引き寄せられてしまったんだと思う。

ガチャを回した。結局彼女が来ることはなく、スカウトでお迎えすることになった。初めての天井だった。

思えば先月の「Great Journey」イベントでは、あの子の新しい「冒険」を描いていた。特訓後は彼女の「あるかもしれない未来」の姿だった。その「彼女」は会場にいる人びとみんなの視線を集める自信があるような振る舞いをしていた。その会場では私が一番、私に見惚れさせる……そんなふうなことを言っていた。

あの子がそんな風なことをいうのはとても珍しいことだった。普段の彼女は「友情番長」、自分一人というよりも仲間と一緒にいる方が楽しいと言っているし、仲間に助けられながらステージに立ち、自信を取り戻し、ほかの子の悩みには首を突っ込み、助け、そして自分自身や友達が仲間と一緒に最高の今を楽しむことを至上の喜びとするような哲学があるようだった。だから、「優しく横に並び立つアイドル」ではない、「力強くみんなの前に立って引っ張るアイドル」としての彼女は、未来の可能性としては存在していても、「今」の姿として現れるのはもっとずっと先なんだと思っていた。

でも、そんな姿を彼女が現すことを、そんな言葉を彼女がいつか言ってくれるんじゃないかと私はずっと期待していた。

未央が去年の5月、シンデレラガールになってからしばらくは、「一番星」になったあの子がどんな活躍をするのかをずっと楽しみにしていたし、それを見るのも楽しかった。7月のSレア[シンデレラガール]実装のときにあの子が事務所の仲間たちから大きな祝福を受けて流したうれし涙には私もついもらい泣きをしてしまった。それくらい、彼女が仲間たちに愛されていることを感じられてすごく嬉しかった。

去年の9月、[スパークルスター]では「劇場」で「ファンに感謝を伝えたい」未央がかなりぶっ飛んだ案を出す姿には笑ってしまったが、それでもあの子が自分のやりたいこととその目的を、具体的に言ってくれたのは嬉しかった。なにより、みんなの応援を受けて彼女自身が「太陽よりも輝く」といってくれた。

あの子の台詞を眺めていると、「輝く」という言葉の意味が少しずつ変わっていっている。最初は仲間たちと一緒に、だったり「夢」のようなどこか遠い場所にあった「輝き」は、[オンリーマイスター]を境にして「自分自身の輝き」を追い求めるような使われ方に変わっていった。「私は独りでも輝いてるって、みんなに思ってほしい。」そう彼女は言っていた。そしてついに彼女は「自分は輝いている」といってくれるようになった。

11月下旬からデレステで開催された「Sun!High!Gold!」のイベントコミュの中では、世間や彼女自身が思う、高尚な「トップアイドル」像とは離れた、不完全で弱い自分という現実と理想のギャップの間で葛藤しながら、こずえちゃんの「たいようはねー、くらくなっても、かくれてもー……また、さんさんするよー。だから、みんな、みおがすきなんだよー。」という言葉に救われて、少し情けなくて弱い自分を抱えて、そんな私なりの笑顔でみんなと輝きたいとまた前を向くことができた。

そして去年の「8th anniversary アイドルプロデュース」で、彼女はもちろん主役として登場した。そんな彼女は「みんなが主役」だといっていた。グリーティングイベントのなかでほかのアイドルの手伝いに回ったり、ほかの子たちと掛け合いを楽しんでいたりしたその姿は輝いていたし、とても「本田未央」らしい姿だった。

今年1月にデレステで開催された「夢をのぞいたら」のイベントでは、あまり焦点が当たることは多くなかったけれども、たくさんの仲間たちと一緒に歌っている歌詞にはどこかあの子の姿が見えるような気がした。

去年から今年にかけて、あの子はたくさんの活躍を見せてくれた。今ここに挙げたもの以外にも、例えば「探訪記」などのお仕事もあった。それらは「みんなの声援をうけて、みんなと一緒に楽しみ、笑い、みんなで輝こうとする」シンデレラガールたる本田未央の姿を色濃く映していた。

でも私は「そうじゃない」あの子の姿はどこで見られるんだろうと思っていた。いろんなことを求め過ぎだというのはわかっているんだけど、オンリーマイスターのときに言った「独りでも輝いている」ことは、もちろん私はそう確信しているけどあの子がそれを自覚していることをまだ確かめられなかった。「ステップ!」のMVではラスサビ前に一瞬だけ彼女の姿しかみえなくなる箇所がある。それを見たときすごく嬉しかったのをよく覚えている。あの瞬間、あの世界には「あの子しかいなかった」から。

でも、その瞬間は案外早く訪れたみたいだった。[パワー・オブ・ノヴァ]本田未央は、何が待っているかわからない未来に向かって、力強くステージに立っていた。仲間がいるから何でもできる、じゃなくて「私がいるから大丈夫」という自信に満ち溢れた姿を現してくれた。今度は私がみんなを連れていくんだといってくれた。なにより、自分を魅せつけて、心まで惹き込むんだと言ってくれた。衣装もだけど、その堂々とした姿に魅了された。

初めてのステージの前に怖気づいて会場にすら入れなかったあの子が、大きなステージの前に「どっか行っちゃおうか」といったようなあの子が、仲間の助けがなかったら自身がなかったあの子が、トップアイドルなんていうすごい存在になれるのか自分を疑ってすらいたあの子が、「みんなの注目を独り占めだっ」と言ってくれた。

自分の弱い姿を隠したがっていたあの子が、その自分も一緒に強くなっていきたいとそれを認めたことが、その自分をごまかさないと決意したことが、小心者だからこそ明るい笑顔を見せるのが「私らしさ」だとまっすぐに信じていることが嬉しかった。弱さと向き合って乗り越えていくことが大切なあの子の光なんだと確信した。

弱気で普通な自分の「光」も、強くて輝く自分の「光」も、仲間たちの「光」も、全部自分の光だって認めて、それを引力で全部束ねて、真ん中で光るのが太陽である彼女自身だと遂にあの子は言った。いらない出来事なんてなかったんだ。

彼女が白と青の衣装をまとうとき、それは覚悟を伴ったときだ。でも、今回のそれは前回とは違った覚悟だった。[オンリーマイスター]は「あなたの力で引っ張ってほしい」といっていた。そして[パワー・オブ・ノヴァ]では「惹きつけたくなる」と言っていた。あの子はずっと成長していて、どんどん大きくなっているのだと思う。

私は、あの子を追ってきてよかったと思う。あの子の今までを踏まえて、最高の「今」を見られて、そしてまだ見ぬ未来に思いを馳せることができるから。風ごいのようなふざけた話からも、いつもの元気な姿からも、そして力強く魅了するような姿からも、少しずつ成長したあの子の軌跡を垣間見ることができる。そんな私はたぶん幸せ者だなあと思った。

そして最後に、ライブ終了後の台詞を聞けることが一番の役得だなあと思うので、もしまだ引いていないひとで興味があれば、ぜひ引いて確認してほしい。そして、量が多くて大変だけど未央のメモリアルコミュや以前のエピソード、イベントコミュ、メインコミュ5話、モバマスの思い出エピソードなども確認してほしいな、と思う。もちろん今回の衣装もコミュも単体で素晴らしいものだけど、あの子はたぶん、文脈で輝くアイドルだと思うので。

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