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カナダ留学のための高校選び〜Fraser Instituteの高校ランキングを検証する〜

留学を検討するに際して、日本の高校選びと違って、どこの高校に行ったらよいのかの目安がなくてお困りのことと思います。

ネット検索で最初に飛び込んでくるのはFraser Instituteが公開している高校ランキング。卒業率や州の卒業試験成績など7項目で高校を評価しています。しかしながら、留学フェアに来ている学区担当者には不評のようで、Fraser Instituteの高校ランキングは学校の実態を反映していないと口を揃えて言われます。どちらの言っていることが本当なのか知りたくありませんか?

そこで、実際に、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州が発表している州試験成績の統計データのうち、Literacy Assessment 12の結果を使って分析してみました(図1)。

図1.Fraser Rankingの点数とLiteracy Assessment 12の点数の関係

高校留学を受け入れている34の学区の中で、Fraser Instituteによる2019年度のランキングの点数が分かっていて、かつ、Literacy Assessment 12の2022/2023年度の点数(各高校の合計点SCOREを受験者数NUMBER_WRITERSで除して求めている)が公表されている公立高校160校(ライトブルー)と私立高校25校(オレンジ)をプロットしています。私立高校の多くはLiteracy Assessmentの結果あるいは受験者数の人数を公表していないためサンプル数が少ないものの、Fraser Rankingの点数が高い高校はAssessmentの点数が高いという傾向が認められます。つまり、Fraser Instituteの高校ランキングは学校のレベル(試験成績)を正しく反映しているように見えます。

つづいて、バンクーバー近郊学区の公立高校について、2021/2022年度と2022/2023年度のLiteracy Assessment 12の点数の平均とFraser Rankingの点数で昇順に並べてみました(表2-1と2-2、West Vancouver学区のRockridge Secondaryはデータがないため含まれていない)。

表2-1.1〜50位
表2-2.51位以降

ここで、Fraser Rankingの点数で並べたときの順位とLiteracy Assessmentの点数で並べたときの順位が一致するのであれば、それら順位の数字を横軸と縦軸にプロットしたとき、左下から右上の点線上(Unityライン)に来るはず。例えば、Fraser RankingトップのDr. Charles Best SecondaryはLiteracy Assessmentでは10位となります。横軸は1で縦軸は10のところにプロットがくるといった具合に全98校の結果を図2に示します。なお、Fraser Rankingの点数が同じ場合はLiteracy Assessmentの点数の上下で順位を便宜的にかえています。

結果は、仮説に反して、プロットは全体的に散らばっており両者に相関関係は見られませんでした。つまり、学区担当者のFraser Instituteの高校ランキングは学校の実態を反映していないという感想は正しいと言えます。

図2.Fraser Rankingの点数順にソートしたときの順位とLiteracy Assessmentの点数順にソートしたときの順位の関係。両者が一致するのであればUnityライン上にプロットが来るはずである。

以上のことから、BC州全体で見るとFraser Instituteの高校ランキングは州試験成績の結果と相関があるものの(図1)、高校単位で見るとその相関は大きく低下し、ほとんど関係性がなくなってしまうことがわかりました(図2)。ただし、Fraserのランキングは2019年度のもので、その当時の試験成績を用いて同様の分析すれば両者に相関関係が認められる結果になった可能性は否定できません。また、Fraser Instituteが用いた他の6項目も考慮に入れていないことも本分析のリミテーションです。


子どもを留学させるにあたり、学区や高校をどこにするかはとても重要な問題です。しかしながら留学エージェントや学区担当者から得られる情報は利益相反を含んでいることも事実です。Fraserの高校ランキングの結果は多くの不動産エージェントがその簡便さから活用していて、富裕層が多いエリアは大学進学率が高いことから(別記事参照)、物件の価格が高いエリアに顧客を誘導したいという思惑もあるかもしれません。

いずれにしても、まずは様々なデータを用いて行きたい高校の目星をつけてから、それら学校見学をさせてもらい、実際に雰囲気を確認し、学区担当者の生の声も参考にしながら最終的に判断することが重要と思っています。

以上、みなさまの参考になったら幸いです。

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