新自由主義の後遺症と禁断症状に苦しむ日本と広島

GDP世界第4位転落。ついに来るべき時が来たというべきでしょう。
この25年から30年の新自由主義の後遺症というべきです。
日本は、思えば、1994年頃の超円高への対応を誤ったと言わざるを得なません。また、少子化への不安を緊縮財政で打開しようとしたことの誤りでもあります。
人件費カットで、これを乗り切る方向に舵を切ってしまいました。1999年に実施された労働者派遣法全面解禁などはその好例です。

■少子化への不安に便乗、緊縮財政と非正規拡大
また、少子化への不安にも便乗し、橋本内閣(1996-1998)や小泉内閣(2001-2006)では緊縮財政が取られました。公務員削減の動きも加速しました。
一方で、人々の悩みや不安が多様化する中で高度な専門性を要求する行政ニーズは拡大しました。そのギャップを非正規公務員の増大で埋めようとした。専門性の高い人を低賃金不安定雇用で使い捨てる仕組みとなりました。
非正規公務員問題のもう一つの背景は男尊女卑であり、女性の仕事だから安い賃金で良いだろうという考え方が、上記の緊縮財政と結合して、非正規公務員の拡大につながりました。

■介護労働者の低賃金
2000年には介護の社会化の名のもとに介護保険制度が導入されました。当初は、労働者の使命感に便乗して低賃金で済ませてきました。筆者自身も県庁の介護保険担当として、そのことを事業者指導で拝見。こんなことで日本は大丈夫なのか?と不安に思いました。20年たったいま、その不安は的中してしまいました。他業種では物価高騰に連動して5%の賃上げなどが叫ばれる中、岸田政権の打ち出す賃上げ幅は2.5%であり、ただでさえひどい介護からの労働者の流出が起きています。これもまた緊縮財政の弊害と、もともとは女性が多かった仕事への政治家や行政による評価の低さという問題があります。

■「お金でなんでも買える」「安ければよい」という勘違い
他方で、1990年代頃から、お金でなんでも買えるという勘違いを日本人の多くはしてしまいました。この結果、食料安全保障などをおろそかにしてしまった感もあります。このことが、現在の食料価格高騰につながっています。また、「安ければ良い」という論調が、行政による低価格での発注につながり、2023年の日本に激震をもたらしたホーユー破産による「広島発給食停止騒動」の背景になっています。
また、三波春夫の言葉を曲解した「お客様は神様論」が横行し、消費者としては高慢な態度で臨む人が増え、この面でも労働者の苦労が増えた面があります。

■野放図な規制緩和で事故の一方、路線の廃止
さらに、運輸部門では野放図な規制緩和で、体制が不十分な企業が参入。行政による企業のチェックは不十分だったために、2012年の関越道ツアーバス事故、2022年の知床観光船事故など大きな事故が相次ぎました。
タクシーなどは規制緩和で台数を一時増やしたものの、労働者の賃金の低下により長期的には運転手が辞めて運転手不足に悩まされることになりました。
また、公務員削減の中で管制官の人数は増えぬ一方で、安倍政権以降は、円安をてこにしたインバウンド拡大で航空需要が増大。対応しきれなくなる中で2024年1月2日の羽田空港事故が発生してしまいました。
一方で、規制緩和により、JRの撤退は自由化されたため、路線の廃止が広島県内でも相次ぎました。
そして運転手不足によるバス路線の廃止・休止問題も全国的にも深刻です。

■災害対応や事業チェックにも困難
地震、水害、コロナ。2011年の東日本大震災以降特に大災害が相次ぎました。その状況を正規公務員が削減された状態の役所の態勢で乗り切るのは無理があります。能登半島大震災では、他県から応援に行った職員も机に突っ伏して寝るという有様です。専門的な人材が不足しているのです。
コロナ災害の際には、民間企業への丸投げが相次ぎました。その過程で、報道されているように、いわゆる中抜きの問題も多発しており、酷い場合には刑事事件として立件されています。
その背景には公務員を減らしすぎたことがあります。本来役所がすべきことができなくなっている、そして、チェックもできないために、悪徳企業の餌食になるということが起きています。
また、平時でも例えばトンネル工事をきちんとチェックできるような人材が役所にいないために、トンネル工事をまるごとやり直しにしなければならないという事件も発生しました。
2年かけて完成したのに…トンネルは「空洞だらけ」ほぼ全工事やり直しへ「30センチ必要なのに…厚さ3センチ」敏腕だった現場所長がなぜ数値偽装?(MBSニュース) - Yahoo!ニュース
広島県でも、高速道路二葉山トンネルのトラブルが相次いでいます。
昔は、役所には専門性の高い人材もおられたのですが、今はおられません。最近になって一定程度採用はしているとはいっても、専門性の高い人材に育つには時間がかかります。

■コストカット型経済脱却と言いながらライドシェア推進という矛盾

岸田総理はコストカット型経済脱却を打ち出しています。
賃金アップをてこに、経済を底上げする。そのこと自体は間違いではありません。
しかし、一方でライドシェア解禁を2024年度から実施する予定です。
これは、賃金引き下げ方向に働く施策です。
タクシー労働者や他の公共交通機関労働者の給料アップによる人手不足の順次解消を待った方が良いのではないでしょうか?
日本版ライドシェアではそれでもタクシー会社との雇用契約をきちんと結び、「名ばかり自営業者」であることに便乗した買い叩きは出来ないようにしている点は評価できます。ただし、河野太郎さんらは、さらに過激なライドシェア推進派であり、警戒が必要です。

■子育て支援推進に便乗した新自由主義「禁断症状」
また、子育て支援vs高齢者福祉とか、子育て支援vsインフラ整備など、子育て支援とそれ以外をトレードオフに捉え、有権者を煽る政治家も国地方問わず少なくありません。同様のコメントをテレビなどで行い、世論を煽る学者なども目立ちます。
しかし、例えば、ヤングケアラー問題の解決には、それこそ高齢者介護サービスの維持・充実は必須です。
また、道路や鉄道をガンガン拡大する時代ではないにせよ、維持、メンテナンスはきちんとしていかないと、結局育った子どもたちの将来が不安です。
また、子育て支援のためと称して社会保険料をいきなり増税したり、公務員給料をカットしたりすれば、それこそ、デフレ圧力になってしまいます。
子育て支援充実に便乗した新手の新自由主義への警戒も必要です。
別の味方をすれば日本において、新自由主義への禁断症状は強いということではないでしょうか?

■広島県においても根強い新自由主義の後遺症と禁断症状

広島においても、ホーユー問題で、入札制度の改革などが行われました。新自由主義の問題点は認識されつつあります。
しかし、全国同様、新自由主義の「禁断症状」も根強くあります。
2023年3月31日での広島県の湯崎英彦知事による農業ジーンバンク廃止は記憶に新しいところです。
また、湯崎県政は平川教育長のお友達を優遇するお金や、叡智学園、叡啓大学をつくるお金はあるのに、非正規教員を正規化することについては「予算がない」と開き直っています。
さらに、県病院を廃止し1300-1400億円をかけて駅北に新巨大病院を作るという途方もない事業を湯崎県政は強引に進めています。他方で県立安芸津病院の耐震化は先送りしています。巨大企業にはお金は流すが、地域の地道な医療にはお金を使わない。
広島県政の腐敗・新自由主義ぶりはまだまだ根強いものがあります。

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