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銀玉列伝第3話/パチンコ屋従業員の視点から見るパチンコ

今日はパチンコ屋従業員の視点から見たパチンコについて書いてみる。
25年くらい前の事なので今と異なる箇所も多いと思う。

20代前半の時に住み込みでパチンコ屋で働いていた。
今でこそ大卒を募集するような業界になったが、当時は不良債権の吹き溜まりだった。
履歴書なんてただの形式で、偽名で働いている人もいた。
アルバイトでも時給1500円、社員になると月給30万前後。
社員であればお金が足りない場合、給料の半分までなら前借する事も出来た。
それでいて寮に入れば家賃・光熱費・食費全てが無料なので、給料に1円も手を付けずに生活する事も可能だ。
福利厚生は無かったが、不良債権でも働く気がある人にとってはもってこいの職場だった。
私も借金返済のために3年ほど働かせてもらった。

働いていたパチンコ屋は在日コリアン一族が経営しており、ホールの組織図は下記のようになっていた。
・社長:創業者(在日コリアン)
・副社長:息子(在日コリアン)
・常務:社長の甥(在日コリアン)
・専務:社長の甥(在日コリアン)
・係長:ここから下は日本人
・マネージャー
・主任
・ホールスタッフ

現在のパチンコ屋と当時のパチンコ屋で大きく違うのが従業員と客との関係だろう。
例えば今は従業員が当たり前のように客の出玉をジェットまで運んでくれるが、当時は客自らが運ぶのが当たり前だった。
仲の良い女性客や、1箱も持ち上げられそうにない年配者の場合は「特別に」運ぶこともあった程度だ。
従業員の仕事はあくまでも台のトラブル対応やスロットのメダル補充、ドル箱の管理や不正監視など、ホール内の円滑運営がメインだった。
ホール側の不手際があればお辞儀はするが、客への個別サービスというのは重要視されていない時代。

そんな中でホールスタッフからマネージャーまでを経験したが、面白かったのはホールスタッフ。
マネージャーになると裏事情を知ることが出来るが、両替機やパッキーカードの現金回収補充時以外は役員との麻雀に付き合わされていて億劫だった。
当時はCR機が登場して間もない頃で、現金機とCR機が混在していた。
現金機に設置されているサンドは今のように札は使えず100円硬貨と500円硬貨のみ。
CR機にはパッキーカードのサンドが設置されていた。
そのためホール内4か所に両替機とパッキーカードの販売機があった。

不謹慎な話だがホールスタッフ時代には給料以外にもかなりの収入が出てくる。
まずパッキーカードのお釣り取り忘れ。
CR機を打つためにはパッキーカードを購入しなければいけない。
パッキーカードの販売機は前記したようにホール内4か所に設置されており、カード残高が無くなると席を離れ買いに行く。
早く席に戻りたいがために、客の中にはカードだけを取ってお釣りを忘れる人も多かった。
万札を入れて2000円のカード購入で8000円のお釣り。
この8000円取り忘れが圧倒的に多かった。

次に現金機のサンドの釣銭返却口に残った100円硬貨と500円硬貨。
権利台や1発台などは多めの軍資金が必要だが、当時の現金サンドではまだ札が使えない。
そのため客は500円硬貨を山のように積み上げて遊戯していた。
上皿に玉が無くなると500円硬貨を投入して玉を追加するのだが、硬貨の認識不良で返却口に戻る事も多かった。
長時間プレイしている場合や熱くなっている場合、硬貨が戻されていることに気が付かず、そのまま続行する客も非常に多い。
客の離席後や閉店後の掃除時にサンドの返却口を見て回ると、驚くほど多くの硬貨が残っている。
羽根物のサンドでは100円硬貨がメインだが、権利台・1発台では500円硬貨しかない。
日によってバラツキはあるが、月に5万程度は硬貨を回収していた。
なので当日担当する島に現金機がある日はやる気が出た。

主任になるとホールでの島担当は無くなるが、スタッフ管理や苦情対応が業務に加わってくる。
台の構造も詳しく教わるので、スタッフが対処できないトラブルにも呼ばれる。
立場上、釣銭を見つけても受付に届けるしかないが、やりがいのある立場だった。

マネージャーになるとホールでのサービス業務は無くなる。
スタッフのシフト管理や両替機の現金管理、受付の景品(特殊景品含む)の最終的な在庫管理チェック、換金所とのやり取りがメインだ。
そして私の居たパチンコ屋では役員3人との麻雀相手も業務になる。
社長がホールに顔を出すのは新台入替の時と年末年始だけ。
その他は滅多にホールには顔を出さない。
創業者だけあって厳しいが、経営理念をしっかりと持っており私は尊敬していた。
副社長以下3人はご想像の通り。
本来この3人は事務所でカメラの監視などをしていないといけないが、普段は寮の空き部屋で朝から晩まで麻雀漬けだ。
新台入替の時等に社長が来た時だけ人が変わったように動き出す。
あ、あと副社長3人以下と893家業の人とで不正行為を行っていた時も動き回っていた、嬉しそうにね。
不正に使われていた台は春一番。
知っている人は知っている。
唯一専務だけが閉店後に台の釘調整を行う。
この専務に釘の見方、調整法を教わった。

普通の生活をしていると接する事の無い人種との交流や、パチンコ屋という裏がありそうな業種での体験は面白かった。
借金を返し終わり、部屋を借りる資金を貯めてから職を替えた。

で、店で働いていた立場から打ち手として想像する裏の部分を伝える事があるとすれば、裏は特に無いという事。
出玉を事務所側から調整(遠隔操作)しているなど、普通のホールでは絶対にない。
もし遠隔操作で出玉を意図的に調整できるのであれば、釘調整など全く不要になる。
釘調整をしている専務と話をした時の会話。
「釘を変える台はどうやって決めるんですか?」
「基本的に最近出てない台を広げて、出ている台を絞るってだけだな」
「でもな、面白い事に広げたからって、入賞率が上がるだけで出るってわけじゃないんだよ。」
「こっちで調整したくても思い通りにいかないから難しい。こっちで調整できりゃずっと麻雀出来るのにな(笑)」
「だからパチンコは回る台を打つしかない。ようは当たりを引く引かないは打ち手の引きだ」

なおカタログを見せてもらった事があるが、遠隔操作できる機械は存在する。
私が見せてもらったカタログで1島の導入費が2000万。
店舗全てに設置する場合の費用は億を超える。
ただこれを導入する店は経営末期との事。
当たり前だがこんな機械を導入して見つかれば一発で営業停止処分を食らう。
最後の最後に大きく回収して店を畳むときに導入する店があると聞いた。
チェーン店などで導入される事はまずない。

パチンコは遠隔操作されている。
こういう思い込みをしているうちは収支をプラスに持って行くことは不可能だろう。
負けた言い訳を店のせいにしているようでは店の養分でしかない。
小学生レベルの算数と自分で決めたルールを守る自制心があれば、大きく勝つ事は出来ずとも半年程度のスパンで見れば負ける事はない遊びである。
プラスして釘を判断できるスキルを身につければ勝率は大きく跳ね上がる。
ただ何度も言うが時間の無駄である。

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