抗ヒスタミン薬で口が乾いた話
今日は毎週火曜日に行っている皮膚科前の薬局へ。
皮膚疾患といえば外用薬、すなわち軟膏が処方されるイメージです。
しかし内服薬も処方されます。
皮膚疾患の場合は痒みを抑える目的で抗ヒスタミン薬が処方されます。
痒みで皮膚を掻いてしまうと、皮膚が傷つくのでそれを抑える目的で処方されるのです。
現代はさまざまな抗ヒスタミン薬が開発され、治療の選択肢が広がっています。
痒みを抑えるのはもちろん、抗ヒスタミン薬はじんましんに処方されることもあります。
じんましんは原因は不明なことがほとんどですが、第一選択は内服薬による治療です。
特に抗ヒスタミン薬の出番はかなり多いです。
じんましんの症状がひどい場合、抗ヒスタミン薬を2種類服用することがあります。
たいていは1種類で済むのですが、なかなか収まらない頑固なじんましんには抗ヒスタミン薬同士を重ねます。
あるいは抗ヒスタミン薬とシメチジンという胃薬を併用することもあります。
抗ヒスタミン薬はH1受容体、シメチジンはH2受容体を遮断します。
H1受容体とH2受容体はヒスタミンが作用する受容体ですが、異なります。
例えるならばH1受容体とH2受容体は親戚のような感じですね。
初期に合成された抗ヒスタミン薬はアレルギー疾患治療薬として活気的でした。
抗ヒスタミン薬が合成される前は、痒みはもちろん鼻水やくしゃみなどの症状を抑える薬はなかったのです。
現代では花粉症にも用いられる抗ヒスタミン薬ですが、なかった時代のことを考えるとぞっとしますね。(私は花粉症ではありませんが……)
さて、初期の抗ヒスタミン薬はアレルギー疾患や皮膚疾患に対して優れた効果を示しました。
しかし難点がありました。
それは副作用が多いということです。
たとえば口渇、眠気、倦怠感、便秘、尿閉などです。
とくに口渇や眠気はでやすかったそうです。
眠気が出てしまうと仕事に支障がでてしまいます。
これは避けたいところです。
そこで改良を重ねた薬が第2世代抗ヒスタミン薬なのです。
初期に合成された抗ヒスタミン薬を第1世代抗ヒスタミン薬。
その後、第1世代抗ヒスタミン薬を改良して合成されたのが第2世代抗ヒスタミン薬になります。
第2世代抗ヒスタミン薬は優れた効果を保ちつつも副作用が軽減された画期的な薬です。
現代の主流は第2世代抗ヒスタミン薬です。
ですが完全に副作用を無くすことはできません。
第2世代抗ヒスタミン薬といえども眠気や口渇などの症状がでることはあります。
この辺は個人差があるため、処方された薬を服用してみないと症状がでるかは不明です。
じつは今日、第2世代抗ヒスタミン薬の1つであるフェキソフェナジンを服用している患者さんに、口渇がでると相談されました。
フェキソフェナジンを止めると痒みが出てしまう。
飲んでいると口渇が出てしまい、口の中が乾燥してしまうとのことでした。
こんな時、私は患者さんに日常生活に支障はあるか確認します。
支障がなければこのまま治療を継続。
あるならばDrに相談してフェキソフェナジンを変更してもらいます。
患者さんはとくに支障はないとのことだったので、今日は処方通りに薬を渡しました。
ところで口渇はなぜ起こるかと言われると答えたくなるのが私の性分です。
口渇の秘密は抗ヒスタミン薬の構造にあります。
いきなりイミダフェナシンという薬がでてきました。
これは過活動膀胱や頻尿などの治療に使われる薬です。
抗コリン薬と言われます。
体の中にはアセチルコリンという物質がありますが、その物質の作用を抑えることで頻尿などを抑えます。
アセチルコリンは他にも唾液分泌の役割があります。
アセチルコリンが作用することで人は唾液を分泌するのです。
なのでイミダフェナシンを服用すると、アセチルコリンの作用が抑えられしまい唾液が出にくくなります。
すなわち口渇が起こるのです。
さてイミダフェナシンとフェキソフェナジンは構造がよく似ています。
じつは抗ヒスタミン薬と抗コリン薬は共通の構造があるのです。
同じような構造があるということは、同じような作用があっても不思議ではありません。
イミダフェナシンは口渇という副作用があります。
イミダフェナシンとフェキソフェナジンは似た構造をもちます。
したがってフェキソフェナジンも同様に口渇の副作用が起こり得るのです。
こんな感じで薬同士で同じ作用を共有することはあります。
今回は副作用という好ましくない作用を共有してしまいました。
ですが薬の構造を眺めてみるだけで、副作用を予測できることは有用なのかもしれません。
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