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局所麻酔薬の話Ⅱ〜アミド型〜

前回は局所麻酔薬の起源について触れました。
起源は麻薬のコカにあり、その抽出物であるコカインに麻酔作用がありました。
コカインをもとに多くの局所麻酔薬が合成されていきました。

コカインをもとにアミノ安息香酸エチル、プロカイン、オキシブプロカイン、テトラカインなどの薬が合成されました。
これらは構造にエステルという部分を含むため、一括にエステル型局所麻酔薬と言われます。


エステルの構造

エステル型局所麻酔薬は安定した麻酔作用をもちますが、欠点がありました。
それは持続性が短く、作用が短いということです。
作用が短いことはある意味で長所です。
しかし臨床で使用するためにはある程度の持続性が必要です。

そこで誕生したのがジブカインです。
ジブカインはエステル型の局所麻酔薬とは異なり、アミドを構造にもちます。
なのでアミド型局所麻酔薬に分類されます。

ジブカインの構造
アミドの構造

ジブカインにはアミドの構造があります。
アミドはエステルよりも安定なため、ジブカインはエステル型局所麻酔薬よりも持続性があります。

ジブカインは南アンデスに自生しているアカネ科樹木であるキナに起源があります。
キナの樹皮からとれた物質をもとに合成されました。
それがキニーネという物質です。

キニーネはキナからとれるすぐれた物質です。
麻酔作用はもちろんのこと、解熱作用や抗マラリア作用もあります。
このため古来からキナの樹皮をすりつぶして、薬として活用されてきました。

解熱作用は発熱時に使用されました。
また抗マラリア作用をもつため、キニーネはマラリア原虫の治療にも使用されました。
このときは唯一のマラリア治療薬として重宝されてきました。

このように複数の作用があるため、現地のインディアンからキナは「生命の木」と呼ばれていたそうです。
たしかに昔は解熱剤はおろか抗生剤などのような薬はありませんでした。
現地人が生命の木と呼ぶのもうなずけます。

ジブカインは現在主流のアミド型局所麻酔薬の先駆けとなりました。
安定なアミド型局所麻酔薬は臨床でも使用しやすいのです。
ジブカインをもとに今後はアミド型局所麻酔薬の開発が進められていきました。


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