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局所麻酔薬の話Ⅰ〜起源〜

さまざまな薬局に出向いては新たな疑問の発見。
その都度調べては忘れての繰り返し。
忘れることで人は知識の整理をしているようです。
いらない情報と必要な情報の選別ですね。

しかしすべて忘れてしまっては元も子もないです。
知識を自分なりに整理して、脳にインプットしておく。
そして必要なときにいつでも引き出せるようにしておくことが理想です。

さて本日は消化器内科。
胃腸系の薬が多く処方されます。
お馴染みの薬からあまり見かけない薬など。

ストロカイン®(成分名:オキセサゼイン)はあまり処方を見たことはないです。
年に1回見るか見ないか。
でも消化器内科に来るとしょっちゅう処方されるようです。

成分名はオキセサゼイン。
個人的になかなかかっこいい名前だと思います。
そしてなんでこんな名前になったのか疑問に。
ちょっと調べてみると麻酔薬の壮大な歴史にふれることになったので、まとめてみます。

局所麻酔薬の歴史はコカインから

南アンデスのジャングルにはコカ(学名:Erythroxylum coca)が自生しています。
古来から身近にとれたようです。
日本では考えられませんね。コカの葉から採れるのがコカイン。麻薬ですから。
ちなみに先住民のアイマラ族の言葉によると、コカは「旅行者の食料」という意味です。
その意味からして日常レベルで嗜好品として出回っていたようです。

コカインは麻薬の一つなので日本では法律で規制されています。
理由は中枢興奮作用があるためです。
これは脳内の神経伝達物質であるドパミンとアドレナリン神経の活性化する作用があるためです。
今回はコカインの麻薬作用については触れません。

じつは局所麻酔薬の歴史はこのコカインに起源があります。
コカからコカインが抽出されて、それを舐めてみた学者が舌の感覚がなくなったことから麻酔薬の開発がスタートしました。
現代から見ると当時の学者たちは本当に恐れ知らずですね。

コカイン
コカイン塩酸塩「タケダ」原末 添付文書より抜粋

コカインが抽出され、その薬理作用を明らかにされると麻酔薬の研究が加速しました。
どうやらコカインに含まれる安息香酸部分の構造が麻酔としての効果を発揮しているようです。

安息香酸

麻酔薬はコカインに起源をもつため、名前の語尾には-caineが付くようになりました。
コカイン(cocaine)からきているのがわかりますね。
〜ineには「〜由来の」「〜に関連する」「〜から作られた」という意味があります。

コカインをもとに合成された局所麻酔薬はアミノ安息香酸エチル、プロカイン、テトラカイン、オキシブプロカインがあります。
例としてプロカインの構造をあげておきます。

プロカイン
プロカイン塩酸塩注0.5%「トーワ」添付文書より抜粋

局所麻酔薬は神経にあるNaチャネルを遮断することで効果を発揮します。
Naチャネルが遮断されると人は感覚が麻痺してしまい、何も感じなくなります。
この作用を臨床で応用することでさまざまな処置ができるようになったのです。


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