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色気について


 こんばんわ、今晩は、色気について話したいと思います。

 色気って傷だと思います。その人の負った傷。なんで傷が色気かっていうと、傷って、その人だけのものだと思うからです。

 世の中にはたくさんの傷があって、それは失恋なり、鬱病なり、PTSDなり、色々な名称を与えられてこの世に存在しています。

 でも、大枠として括ったらそういうものになるだけで、一つ一つ見ていったら全部異なるもの。その人だけが経験した、その人固有の傷がある。有象無象の傷を乗り越えるための方法はインターネットに溢れているけど、その人だけの傷を癒してくれる方法はインターネットなんてものの中にはない。だから、その人は自分の人生の中を生きて、自分でたくさん考えて、自分でその傷を無くすために無理矢理解決策を練るしかない。

 でも、傷を負っていっぱいいっぱいな、無力な解決策じゃ、大体解決しません。今の自分をなんとなく死なない形にしただけ。その問題をひっさげて、見窄らしく生きていられるようにしただけ。誰だってそう、目前の問題を簡単に解決できるなら、こんなにも多くの人が病んでなんていません。

 だから、「もう大丈夫。」なんて強言を言うその人の中には、どうしても消化しきれない痛々しい新鮮な傷がまだ残っていると思うのです。

 それでも、その人は本当の意味で誰も分かってくれない傷を抱え、その清濁を合わせ飲んで、そして社会という外側の世界には、あたかも何も抱えていないような顔をして生きる。

 私は、その人が自らを守るために包んだ、諦めのようなベールの内側を見たい。誰にでも当てはまって共感されるような小説や映画の中では見ることのできない、その人の人生の中だけにある、誰も助けてくれなかったリアルの地獄の世界で生きた人の人生で負った生傷、誰も助けてくれなかった生傷、そしてそれがあっても生きることを選択したその人の清濁。それが、私にとっての色気なのです。

 私が生きることはなかったけど、同じベクトルの地獄の中で生きた人の地獄。それがあっても今生きている人の清濁。私はそれがどうしても知りたい。なんとしても知りたいその魅力が、色気だと思うのです。

 小説や映画のような素晴らしいけど、そのような創作物の中では得られない、現実の世界で生きるその人だけの特有の魅力。あなただけの価値。

 私が貪りたくなるようなその価値を、どうか、捨てないで、自分の中で持ち続けて欲しいのです。

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