父親の話。

あまり自分の家族のことって話すことなくて、まぁそうですよね、そうそうあるわけじゃなし。
まぁこれも、気持ちの整理って奴ですかね。

正直、そんなに親父と仲が良かったわけではなかった、兎に角仕事(塗装業)一筋で犬が好きな人、今思えば市営住宅にエスキモー犬とか、シベリアンハスキーとか飼ってたって、なかなか稀有な家だったんじゃなかろうか、近隣住人の皆さん、いつも子供達に帰りましょーってアナウンス的に流れる「愛の鐘」が流れた時の遠吠えがうるさくて本当にごめんなさい、他の家の犬もそれに釣られて他の犬も遠吠えして、毎日数多の犬が合唱してました。

俺がパソコンでインターネットを使っていると「ちょっと検索して欲しいものがある」なんて言われて、調べてみたら親父が塗った家を見せてくれたり、俺には何も言わなかったけど、長年続けた仕事に誇りを持っていたんだと思う。
素直に自慢してくれてよかったのに、こういうところはほんと恥ずかしがり屋。

遊んでもらった記憶が殆どあったわけではなく、時折ご飯に連れて行ってもらったりしてたってのが印象深い。
子供心に犬ぞりを走らせる父親は本当にカッコよかったし、プロレス観戦も親父の趣味だったところから影響して、今では自分の趣味の一つ。
あと、滅多に見せなかったけど歌が上手かった、たまーに歌謡曲が流れるテレビ番組に釣られて歌ったりしてたけど、ホント上手かった、そこの血を受け継いだお陰か、バンドで歌うことになろうとは、なんたる機会か。

やはり同性というのがあるのか、だんだんと父親に似てくる部分というのが明確になってきて、嫌だなーって思う反面、これも血筋かーなんて思ったりもして、そんなことを考えてた。

我が家はお世辞にも仲のいい家庭ではなかったので、それはもうバイオレンスなことが水面下で起こってました、なるべく息子、娘の耳に入れないようにしてたみたいだけど、母から9歳離れた姉へ、そして俺へとしっかりと情報は流れてきてましたよ、詳しくは割愛しますけど、まぁ大体その手のヤバそうな話の王道を三つは経験してるかな、ご想像にお任せはしますが、離婚届を3回破るなんてイベントはなかなかのものではないかなと。
そんな波乱を巻き起こした我が家の父が。

77年の生涯に幕を閉じた。

虫の知らせ的なものは何もなく、朝から妻とネットカフェでダーツを嗜み、昼飯を食べ、夜勤に備えて仮眠を取っていた時だ。

言葉には出さなかったが、言うなれば「危篤」という二文字を病院側から突きつけられる。
ここで公共交通機関で地下鉄→JRのルートを通ろうとしていたが、妻がタクシーを選択、この二択が後々の運命を左右したわけで。
タクシーを選択した車中で、この日の仕事のキャンセルの連絡に右往左往しつつ、緊急事態にも関わらず定型文みたいな質問をしてくる上司に声を荒げたりと、我ながららしくないなと思いつつ、数十分で到着。

父はもう話せる状態ではなかった。
瞳孔も開いて、かろうじて聴覚だけはあるから話は聞けるという、本当に死ぬ一歩手前で踏み止まってる、そんな感じに見えた。
せめて俺や妻だけではなく、姉にも看取ってもらいたいとは内心思っていたが、姉は千歳、こちらは札幌、状況を聞く限り間に合う可能性は絶望的、そうは思いつつ親父には「もう少し頑張ろうか」って言葉をかけていたが、もうこの言葉自体が掛けていてしんどかった。

だって、頑張ってるんだもの。
もう見ててわかる、無くなった右足や、壊死していっている身体を横目にしつつ、意識があるだけ儲け物だったと感じてたし、何より握った手の冷たさが全てを物語っていたから。

改めて、死ぬ間際に立ち合えた、間に合ったのが本当に良かった、多分地下鉄→JRルートでは確実に間に合ってなかった、本当に妻に感謝しかない。
安らかに逝く父を見て、出てきた言葉は「お疲れ様でした」だったなぁ。

母も10年前に亡くしているが、その時は姉が看取り、俺は間に合わなかったという今回とは逆のパターン。
死に目に会えないってのは不思議なもので、実家に帰るたびに良く母が2階から降りてくるんじゃなかろうかって、亡くなってから数年経っても思えてしまうくらい、異様な感覚だった。
そう思うと、死に目に会える会えないの選択一つは、とてつもない重要な要素を自分の心に秘めていると、今回実感させられてしまったわけです。

この後、なんと千歳から発車する終電に間に合わなくて、ぬわーとなっている時にまさかの札幌から送迎に来てくれるというとんでもない心の広い友人の助けを頂いたりして、人の温かさに心震えたりもしましたが、この辺の話をすると本人から「はて?」ととぼけたことを言われそうなので割愛の方向で。
でも、本当に感謝してます、落ち着いて俺の財布が潤沢になったらご飯行きましょう。

さてさて、そんなわけでここからはまるで作業のように葬儀屋さんにお願いしていくわけで、これから火葬と実家の片付け及び引き払い等々イベントが目白押しなわけです。
実家の片付けがたらふく残っているので、はてさてどーなるものかというわけですが、ここら辺はまた別のお話でするかどうかは分かりません(笑)

長文失礼しました。
こうやって文章という言葉にして書き認めるのも、悪くないかな。
長い長い気持ちの整理の一つでございました。

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