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Covid-19の起源に関連して、よく繰り返される基本的な誤りについて-6 E16~E18

以下は、2021年8月に発表された、Some basic errors commonly repeated in relation to Covid-19 origins の日本語訳です。この記事では、E1からE30まである誤りのうち、E16~E18を掲載します。最初から読む場合はこちらをご覧ください。

筆者: ジル・ドゥマヌフ

E16「武漢でウイルスが検出されたのは、武漢がまさにコロナウイルスの研究を行っている中国の主要都市であるおかげで、実際に最高の検出能力を持っているからである」

論理的な誤り:

このかなり驚くべき議論は、複数の点で間違っている。

● COVID-19の検出は、武漢のコウモリコロナウイルス専門家ではなく、第一線の病院の医師が全国的に教えられている技術と手順で行った。

● 実際、SARS-1以降、中国では、最前線での検出と報告に依存した強力な全国的アウトブレイク検出ネットワークが導入されており、2019年3月には中国疫病預防控制中心の所長が、ウイルスはいつでも出現する可能性があるが、将来的には2002~03年のSARSのような規模のエピデミックを引き起こすことはないだろう、と宣言しているほどである [注8]。

● 事実として今日の問題は、タイムリーな発見ではなく隠蔽である。その意味では、コウモリコロナウイルスの研究を行っている様々な研究所がある武漢は、深センや上海に比べて、地元での感染症のアウトブレイクを進んで報告する可能性は低いかもしれない。

E17「研究関連の仮説は、大規模な隠蔽を必要とする。この仮説は、素早く安易な答えを求める (しばしば政治的あるいは外国人を嫌う動機に突き動かされた) 人々による典型的な陰謀論である」

事実誤認:

a. 隠蔽は過去にもあったし、中国では政府が真実に脅威を感じたときの標準的な作戦モードである。

例えば、2002年から2003年にかけてのコロナウイルスのアウトブレイクでは、何ヶ月にもわたって大規模な隠蔽工作が行われ、続いて2004年2月には当時中国でトップの研究所で発生した2つの研究室獲得感染の隠蔽工作が試みられた (4月に同じ研究所で発生したSARSアウトブレイクの後にジャーナリストによって明らかにされた)。2013年の鳥インフルエンザのアウトブレイクでも別の隠蔽工作が行われた。COVID-19の隠蔽は例外ではなく、常習的であろう。

しかし、研究室内でのアウトブレイクの最高度の隠蔽工作は、1979年にスベルドロフスクで発生した炭疽菌による100人余りの死者の原因が軍の生物兵器製造工場での流出であることを長年にわたって否定してきた旧ソ連かもしれない。公式見解に対する米国の疑念を払拭するために、著名な科学者をワシントンに派遣し、偽の科学的プレゼンテーションを行わせたこともあった。

b. 開かれた心と決意を持って、あらゆる妥当な仮説に追随することに、政治的なものも外国人嫌いもない。それは単純に科学である。

E18「武漢ウイルス研究所や他の研究室では誰も感染していないので、研究関連の事故仮説は非常に考えにくい」

事実誤認:

a. 中国-WHOの報告書で言及されている検査は、BSL-2またはBSL-3でコウモリコロナウイルス (BatCoV) の研究をしていたことが証明されているいくつかの主要な機関を網羅していない。

b. 言及された機関の1つで行われた検査は無関係である。江漢区疾病預防控制中心で行われたその検査は、2019年後半に一部の研究室スタッフが感染したかどうかを立証できていない。なぜなら、これらの検査は2020年6月に行われたもので、最初の症状が出てから数週間以内にしか陽性感染を検出できないPCR検査だったからだ。いずれにせよ、江漢区疾病預防控制中心自体はコウモリコロナウイルスの研究では知られていないため、無関係である可能性が高い。

c. これらの検査は、関係者すべてを網羅していなかった。パンデミックの火種となった可能性のある2019年の研究関連感染を適切に検出するためには、(1) すべてのフィールドサンプリングスタッフ、(2) その機関でコロナウイルスを扱うすべてのスタッフ、学生、臨時職員、(3) これらすべての機関に近接して (特に風下に) 住んでいる人々のサンプルを検査することが正しいアプローチだったはずである。

d. いずれにしても、武漢ウイルス研究所やその他の懸念される研究室で適切な検査を行えば、陽性の症例が返されたはずである。2020年前半に武漢でCOVID-19が流行していたことを考えると、ほぼ絶対的な確信を持って、2020年3月に武漢ウイルス研究所の590人のスタッフと学生の一部は陽性 (igG+) と判定されていただろう。

したがって、武漢ウイルス研究所やその他の懸念される研究室の誰もSARS-CoV-2に感染していないという声明は、(i) 検査すべき武漢ウイルス研究所の人々全体の中の信頼できないごく一部に基づいているために誤解を招くか、(ii) 単に真実ではないかのどちらかでしかない。[注17]

[注17] これらの検査の詳細な評価とその限界については、以下を参照。
https://www.researchgate.net/publication/351711216_An_analysis_of_the_results_of_routine_employee_testing_for_SARS-like_infections_within_the_WIV_and_other_Wuhan_labs_raises_serious_issues_about_their_validity

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