「そんなことよりさ」とあいつは言った。
寝不足で疲れがとれてなくて不機嫌な朝、歯を磨いてるとあいつが脳裡に顔を出す。
あいつは忙しそうに手を動かしながら、ちょっとニヤニヤして
「おまえそんなん気にしてんのか?へへへ」
と笑う。
僕は今日の仕事とか予定とか家のこととかあれこれ考えて硬くなっていた自分に気がつく。
あいつはいつも「そんなことよりさー」とつづけて、ワクワクする話を持ってくるんだ。
しんどいこと、やりたくない仕事、めんどくさいしがらみがあっても、そんなの早くチャチャッとやっつけて楽しいことやろうよってのが彼の基本的なスタンス。だからあいつは好きなこともイヤなことも同じ顔してやってた。
深掘りして答えを出して悩むのが好きな僕は、そんなあいつにずいぶん救われたもんだ。
あいつの顔はいつもワクワクしてた。あいつはきっとイマココしか見てなかったんだろう。あいつ今どこで何してんだろう?
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