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#40 私がこの仕事を選んだ理由/泖

往復書簡 #40 のやりとり
月曜日:及川恵子〈背中を押されて今がある〉
水曜日:泖〈真剣なお遊び〉
金曜日:くろさわかな

真剣なお遊び

この仕事、と言ってしまうと、自分の中ではまだちょっと引っかりを感じるのが正直なところです。

わたしは美術方面で活動をしています。展示に作品を出品したり、ときには題字やアートワークの依頼を受けて制作をしたり、気づいたときに日記のようにイラストや文字を描く日々です。

ただ、それだけじゃ生計は立てられません。だから日中は週5でライターのアルバイトをしています。わたしは美術活動じゃなくて、アルバイトで生計を立てているのです。

たぶん世の中的には ”アルバイト" のほうが仕事として認められやすくて、「美術方面で活動しています」みたいなことを言うと、「どんなことをしてるんですか?」という質問の前に「それ一本で食べてるんですか?」なんて野暮なことを聞かれるのが多いんです。

食べられませんよ。

わたしだって、”それ一本” で食べたいですよ。
食べてる人もいるけど。
いまのところ、わたしは食べられていません。
アルバイトは必須です。

なんで稼げないのにこんなことやってるかって言ったら、これをやらなかったらわたしは死ぬからです。自殺はしません、痛いし苦しいだろうから。作品として何かを放出しなければ、自分を殺しながら生きていくことになるんです。自分が自分でいるために必要なことなのです。少なくともわたしの場合は。

わたしは20代前半くらいまで、どこか自分を殺しながら生きてきました。自分が本当に話したいことを当時の友だちと共有できずに、自分なりの芯は通しながらも周りの空気を読んで暮らしていたんです。そして家では自分の好きなことにコツコツと没頭する生活を送っていました。
だからか、たぶんストレスを必要以上に溜めてしまったんですけど、このストレスをどう発散していいのか分からず反抗期が中高6年間くらい続いたんです。両親は大変だったろうな、と思います。

でも、大学生になって、いつしか(ここは紆余曲折ありますが割愛します)作品で ”本音” の発散を覚えました。作品を制作すると、不思議と心が穏やかになるんです。いろいろ伝えたいことがたくさんあって、でも言葉がそんなに上手くないから作品制作に頼るのかもしれません。

わたしは小さい頃から書道をやっていたのですが、自分の好きなように文字を書いたり、墨絵や水墨画を描いて遊ぶようになったら、それを見た人に「いい字/絵をかくね」だとか「これで食べられるよ」なんて言われるようになりまして。

そんな言葉を間に受けたわたしは、「このまま就職するの想像できない!」とか言って、結局は大学で6年間も過ごすことになりました(ここも紆余曲折ありますが割愛します。同じ大学で6年間を過ごしたわけじゃないことは言っておきます)。本当に両親は大変だったと思います。

でも大人になるにつれて、かけがえのない仲間たちが集まってくれました。わたしという人間を面白がってくれるだけでなく、ファンになってくれています。こんな人生が待っていたなんて、本当に世の中捨てたもんじゃないですね。

話を元に戻して。
社会で日々感じる想いや違和感を "本音" として「作品制作」に落とし込むわたしが、なぜ仕事と言い切れないのかというと、真剣に遊んでいるからです。だからこそやめられないのかも。

仕事は、どうしてもお金稼ぎを考えないといけない。わたしはそれがあんまり得意じゃないんです。自分の好きなことで真剣に遊んでいるし、お金を稼ぐ以外の大事な理由があるから余計にお金に換算できなくなっちゃう。

アーティストとして活動を始めたばかりの頃、ボランティアで制作の依頼を受けて散々な対応をされて失敗した過去がある分、気をつけて仕事の依頼を受けるようにしているのですが、つい最近も失敗して結果的にどうしようもなく心が落ち込んでしまうことがありました。

こうなるのも、やっぱり、ちゃんと自分の作品やスキルへの対価の基準をしっかりと考えずに、「知り合いだから」「いつもよくしてもらってるから」という曖昧な信頼感で多くを確かめずに請け負ってしまうのが一番悪いんだな、と思っています。

「プロとしてやっていくのなら、ちゃんとお金稼ぎを考えなきゃいけない」なんて基本中の基本にまだ悩んでいます。

けれど、わたしをリスペクトして応援してくれている人がたくさんいます。その人たちの顔を思い浮かべたら、とてもじゃないけど、やっぱり自分の価値を落として仕事を受けるのはもうやめたい。
「この人だったら無料でやってくれる」みたいな考えを持たせないように、自分で自分をしっかりプロデュースしていかねば。

もちろん仕事内容や相手方の想いによっては、無料や低価格で引き受けることもあるだろうけど、そのときはきちんと先方と話し合って決めたいです。

わたしがちゃんと「仕事」と言える日が来るように、”真剣なお遊び” と "お金" についてとことん向き合おうと思います。
今年もまた成長の一年となりそうです。


追伸。
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そのうち詳しい情報を発表するので、ご興味のある方はぜひぜひ無理せずご来場ください ↓
instagram:@ryay0120
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