育成クランの過去・現在そして突破口

トップクランと育成クラン

育成クランは過去も現在もあまた存在してきた、そして今後も存在する。その系譜について語ることが今回の目的ではない。

端的に言えば、育成クランというものはWOTの集団戦を支えてきた土台のようなものである。トップクラン、たとえば私のいたMYTH、それ以外ではCROWNなどの所属メンバの多くは、育成クラン(実は海外にもWOT-Uなどという育成クランがある)を経由して集団戦に親しみ、そしてトップクランに入り順応し、主力プレイヤーとなる、という戦車兵としてのキャリアプランを基本的には描く。

こうしてみると、GMを彩るのはトップクランの大きな領地である、そしてCWEにおいて鮮烈な成績を残すのもトップクランであるが、その足腰を支えているのは育成クランであるということは間違いない。もし、トップクランが育成クランに対して敬意を忘れるのであれば、それは大きな過ちであると私は思う。

育成の3類型とその現在

概ね育成クラン(1つ特殊な形態があるが)には、3類型があると私は考える。

家内制手工業的な育成クラン

字面だけではわかりにくいが、この手のクランはトップクランでの指揮経験などがある著名なプレーヤーが開設する比較的小規模な指揮官との距離感の近い育成クランのことを意味する。例えば、FORTE、PTA-S、HA03などが該当するだろう。

この手のクランは、教える側の質がかなり高いところにポイントがある、たとえばFORTEはCROWNでの主戦指揮官の経験のあるアジア有数の指揮官の指揮・指導を受けながら研鑽できるし、HA03はとても信頼できるTB経験豊富な重戦車乗りの指導を受けることができる。のちに述べる育成クランでは考えられない距離で、なおかつ自身で立ち上げたクランであることも多いためモチベーティブな指導者であることが多い。そのような指導者の考え方に近づけるという意味ではとても貴重なクランである。

一方、小規模であることが災いし、集団戦の経験値・練習を人数不足で行えなかったり、そもそもが指導者一人のモチベーションの上下に左右されがちであるし、その多くが上位クランでの運営の経験がないため(そもそもあって、実力があるなら上位クランはそんな人材を手放さない)マネジメント能力に弱い傾向がある(ついでに言うと指導能力も)。いうなれば、規模・能力の問題から必然的に発生する運営面での脆弱性からは逃れられない。

私が思うに、このクランは、何にも染まってない経験が少ない(1万戦以下)のプレーヤーにとってはとても魅力的なステップアップをさせてもらえる修行用のクランである。(1万戦以上で伸び悩んでいる人は、何かしら凝り固まった常識が上達を妨害しているケースが経験則多く、そういう方はいろいろな価値観を見れる規模のある程度あるクランにいたほうが開眼しやすいと思う)

(あれれ具体例で挙げたあのクランについては何も言及してないぞ)

・マスプロダクティブな育成クラン

この手のクランは、具体例でいえば11B、BLIGE、MJBなどがあげられるだろう。一定数の規模を確保しながらも、CW、進撃戦を戦いながら育成することを主眼とし、集団戦の技能の向上(フォーカス・声だし・試合の典型的な流れ)を特に鍛えていくことに注力する傾向が強い。

長所としては、人数が一定数以上確保できているので、とにかく経験が積みやすい・場数が積みやすいという点にある。これは集団戦の経験の少ない人にとってはありがたいことである。フォーカス・声だしは練習をしなければ身につくものではない。また、人数が多いゆえに、Bat乗りやHT乗り自走乗りなど多様な価値観を持つ上位のプレーヤーに出会うことができる。1万千を超えて成績が停滞しているプレーヤーが集団戦の技能を向上させるときに大切なのは、ブレイクスルーポイントを見つけることだと思う。多種多様な価値観に接するということは、そのポイントが見つかる蓋然性を高めることにつながる。したがって、一定数以上の戦闘数をこなしたが、技能の停滞を感じている人にお勧めできるクランであるといえる。

しかし、この手のクランは俗にいう中堅クランであり、上位クランに所属できるような能力の高くやる気のあるプレーヤーを確保することは比較的困難である(ST-tankとかいう例外の化け物についてはここでは語らない)。仮に能力の高いプレーヤーを確保できたとしても、現役から退いていたり、どうしても上位クランと違い平均、それ以下のプレーヤーが多くなり、能力の高いプレーヤーにかかる負担が大きくなってしまう。また、それを解決する運営のアプローチも限られており、運営面での負担が大きい。負けが込みすぎるとクランの雰囲気が瓦解する恐れがあるため、勝ちながら育てるという理念のもと、ある程度の戦闘単位の合理化が強く求められる。しかし、アジア鯖は全体的にそういった戦闘単位の構造上重要な前線指揮官の適性を持ったプレーヤーは少なく、理想的な戦闘組織作りは困難を極める。えてして、クランを引っ張ってくれる上位陣の引き留めに失敗し崩壊する育成クランは数知れない。

DUCEなど、エポックメーキングな育成クランの成功はこの形態であるが、エポックメーキングであるということはそれだけ挑戦し失敗したクランが多かったかということを逆に示している。意欲ある、または有能なあまたの運営担当者が挑戦し、失敗してきた領域である。

・飛び級型育成

クランと名をつけてないのは、こうした育成をするのは、できるのは上位クランであるからである。

わかりやすいのは、CROWNのBLITZ勢の育成である。BLITZにおいて成績を残し、有望な経験の少ないプレーヤーを上位クランのハイレベルリザーブ環境、ハイレベルプレーヤーに混ぜて、急速育成するものである。別名パワーレベリングである。たとえるなら、精神と時の部屋にヤムチャを放り込みサイヤ人たちとけいこさせることによりピッコロクラスにしようという考え方である(たまにサイヤ人になったりする)。

デメリットは特にないが、あまり多くの人を育てることはできないということである。マスプロな育成クランでは通常、上位と育成プレーヤーは3対7ぐらいの割合だが、この育成は多くて9対1くらいの割合で行われる。

正直この枠にはいれたら、ラッキーである。まず間違いなく、WOTは上手くなる。はいれたらはいろう、コネ採用である。


以上3類型を説明してきたが、今日問題なのはどの育成方式も限界を呈してきているという点である。

まず、家内制工業的な育成クランは、そもそも「新規プレーヤー」が少なく、効果的な対象を採用できない点に問題がある。

次に、マスプロ的な育成クランは、近頃レート基準・採用基準を下げないと人数が確保できないという深刻な問題点を露呈させており、逆に入り口をそのままにしておくと人が少なく回らないという問題点を露呈させる。そしてレート基準をなくしたところで、上位と育成対象のレベル差は開くばかりであり、より上位プレーヤーにかかる負担が大きくなる。

最後に、飛び級型育成だが、BLITZ移民などのピークは過ぎた感があるし、どこに焦点を当てたらいいかよくわからない状況となっている。

現状の課題を解決するのに、過去の成功体験をただ応用させただけではもはや立ちいかなくなっていることは、外野から見ていてよくわかる。ちょっと前までやる気だったクランが、しぼんでいくのをうわさと世間話で聞かされることが多い。

日本人クランの病巣 中堅乱立

こういった問題に対しての根本的解決は、古典的手法では「クランの合併」という手法をとるほかないと思われている。確かに、ATLUS、CROWN、RAISE、DUCEあまたの名門かつ時代を席巻したクランは、大なり小なりクラン合併を基礎として成立したクランである。

こうした合併には当時の運営陣の類稀なる努力と熱意が裏打ちにあったことは否めない。そして、この記事は一時期話題となったが、この記事の著者も元DUCEの優秀な運営であり、その成功体験から解決策をそこに求めている。とても納得できる話だ、少なくとも頭の中ではだが

だが、今日そのような熱意はこの界隈にはなく、そしてそれを取りまとめられるだけの度量を持ったリーダーと実務担当者は絶滅危惧種となっている。

そして、私自身MYTHの連合を運営するにあたり感じたのは、クランという枠組みを維持しながら協調するに際しても生ずる、日本人クランのよく言えばアイデンティティ、悪く言えば我の強さである。クランが存続する中でも感じた、そういう特徴が合併などという方やがなくなるというシビアな状況で障害とならない理由がない。

つまるところ、もはや合併は解決策になれない。プレーヤー人口が減っているにもかかわらず、残念ながらこの現実は動きそうにもないのである。

合流が起きるとき

ただし、クランは時として合流する。それは当然一時的なものではあるが、具体的にはCWEなどのイベント、マンパワーがクラン単位で求められる時に生ずる。

このことは一つのヒントを与えてくれる。CW、進撃戦をするクランの一つの目標はイベントにおける車両の獲得である。そのためには、数は用意しておきたい要素の一つになる。すなわち多くのクランはやはり、「CWE」という目標の前ではアイデンティティをある程度捨て去り合流することは不可能ではないのである。

では、エグジットとしてイベントでの合流をとらえたとき、何か育成に対してくみ出せるフレームワークはないのであろうか。そう私は考えるし、そこにヒントがある。

合流を前提とした組織的な交換留学という解決策

私が思う解決策は、「交換留学」である。つまり、人数不足に悩む上位クランは、2番手3番手指揮官とその指揮官が信用するプレーヤーを2人ほど育成クランに出向させる(籍を残しておくか否かは問わない)かわりに、5人程度くすぶっているがある程度やる気のあるプレーヤーを育成クランから上位クランに移籍させるというものだ。

この方法のメリットは、上位クランが進撃戦の15人化もあり第二第三指揮官が経験を積みにくくなっていくこと、5人加入することによってまた1部隊を確実に作れるかも怪しい状況をある程度解決できるし、育成クランはロールモデルとなれる先生が3人きてくれてタクティクスや集団戦の定石・基本を身に着けること、出向した5人が派遣先でほぼ成長して帰ってきてクランを支えてくれることが期待できる点にある。

勘のいい方は、「飛び級型育成」を応用させていることに気づくだろう。

また、この人材交流はあくまで、CWEにおける合流を前提としたものであるとなおよいだろう。

人材交流をすることで、イベント時の合流のソフトランディング化が期待されるし、できることであれば運営機能を共有させておくといいだろう(共通ディスコードの設定や定時会議などを設定)。もっとも、人材交流するメンバーは、お互いの運営の協議で決めるべきだし、なおかつタクティクスの共有、上位クランからの配信リプレイ(wotのリブレイより効果的である)などを教材代わりに提供することも効果的だ。より協力関係が進んでいくのであれば、意欲あるメンバーによる講習会などを開くことも面白い。

確実に言えるのは、平時のこうした協調は、イベントにおいてポテンシャルを高め、十分に実力を発揮することに寄与するであろう。また私が常日頃から、育成に対してはマネージメントレベルでのアプローチを重視すべきだと考えているが、それにも十分合致する。つまり、組織的に育成にアプローチできるのが最大限の強みであろう。

デメリットとしては、コストがかかることであるが、経験則合併に比べればコストも心理的障壁も低くなるであろうから特に問題とはならない、それを上回る便益があると私は考える。

今現在のクランの問題は、合流という高いハードルと単独でやるという困難さの中間を選択することによって緩和すると私は考える。あとは、これを実行できる運営担当者がどれだけ残っているかという問題ではあるが。私は、かすかではあるが希望を持っている運営担当者に踏み出す勇気を持ってほしいと考えている。また詳細のアダプションをどうするか、気になったという方がいれば、隠居老害の不肖の身ではあるが、ささやかながら力になれたいと考えているので一声をかけてほしい。

以上

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