ホッフェンハイムとバイエルンの中断がなぜおこったのか。

アンチ・ホップ運動

2020年2月29日にホッヘンハイム対バイエルン戦で
バイエルンサポーターがバナーやチャントで、ディートマーホップ氏を侮辱する行為があり78分に中断。
再開はしたものの両チームがボールを回し試合終了を待つだけだった。
ほとんどの観客が中断後ディートナーホップを称え歌い拍手で迎えた。
という出来事があり、一気に認知が広がった。
さて、このアンチホップ運動だが、ホッヘンハイムが1部へ昇格した時からアウェイサポーターはディートマーホップを侮辱する行為が続いている。
2019年にドルトムントサポーターが度重なる侮辱行為があり3年間のホッヘンハイムのホームスタジアム出入り禁止と500万ユーロの罰金を受けている。
どうして、このようにアンチ・ホップ運動が行われるのか。
この機会にアンチ・ホップ運動を読みほどいてみようと思う。

ディートマーホップ氏とは何者か

まずは、ディートマーホップ氏から説明しよう。
ディートマーホップは1940年4月26日にハイデルベルクで生まれた。
若いころはホッヘンハイムのユースに所属。
その後IBMに就職し1972年退職。退職後はSAP社を創設。
SAP社とは、ソフトフェア会社でMS,Oracle,IBMの次に世界第4位の売り上げを誇る会社である。
その会社の創設者なので、当然大富豪であり、個人資産は63億ユーロとも言われている。

ホッヘンハイムとの関係について

さて、そんな彼がホッヘンハイムに資金提供するのは自然の流れだった。
上記でも書いた通りユースに所属していためである。
1990年から資金援助を開始。
彼が資金提供始めた時にはドイツの8部リーグに所属していた。
が、2001年には3部まで昇格。2007年には2部へ昇格、そして2008年に1部昇格することになる。
わずか20年足らずで8部からトップリーグまで上り詰めた。

50+1ルールについて

批判の話をする前にブンデスリーグ特有の「50+1ルール」の説明が必要になる。
「50+1ルール」はざっくり言うと、
「クラブの決議権(大抵の場合株式)を過半数持つのは禁止」
「1個人または1企業は決議権を最大49%までしか持てない」
というルールである。
ようするに、ロマン・アブラモビッチやグレイザー一家、ベルルスコーニのようなワンマンオーナーを禁じるルールである。
これは、ドイツのクラブのほとんどが市民クラブあり
「クラブのための決定を行うのは、経済や個人の利益とはまったく関係なく、ファンサポーターたちである。」という考え方を基本理念にしているためである。

ただし、「50+1ルール」にも例外がある。
それはレバークーゼン法と言われるものである。
「50+1ルール」適用された1999年以前から2つのクラブが企業チームであり、株式を100%持っていた。それらを救済する法である。
2つのクラブとはレバークーゼンとヴォルフスブルクの2チーム。
レバークーゼンはチーム名にもあるようにバイヤー社の企業クラブであり
ヴォルフスブルクはフォルクスワーゲンの企業チームである。
これらのチームは親会社が株式を100%持っても良いことになっている。
このレバークーゼン法はハノーファーのオーナー、マルティン・キントによって適用拡充される。
20年以上クラブを支援していれば、この例外が適用されるようになった。
また、マルティン・キントはビジネス推進派で「投資の魅力の半減が国
際的な競争力の低下につながる」という理由で「50+1ルール」廃止を求めたが、理解を得られず却下されている。(反対が95%もいたとか)

アンチ・ホップについて

「50+1ルール」の説明も一通り終わったところで話を戻そう。
いよいよ本題。アンチ・ホップについてである。
アンチ・ホップ側の主な主張は
ディートマーホップがこの「50+1ルール」に反している。
ということである。
実際にディートマーホップはグレーな方法でホッヘンハイムの株式を過半数以上確保していた。
(過去形なのは2015年に20年経過していたためレバークーゼン法適用となっている)
このグレーな方法というのは、
ディートマーホップが経営しているゴルフ俱楽部(St. Leon-Rot)がホッヘンハイムの株式を取得。
ディートマーホップ自身の株式を合わせて50%以上の株式を保持。
こうすることで、「50+1ルール」に違反することなく決議権をディートマーホップが実質的に持つことになる。

この手法に批判が集まっているため、アンチ・ホップ運動に繋がる。
また、話はズレるがRBライプツィヒも同じようにグレーな方法で「50+1ルール」に違反することなく過半数以上の株式取得しているためアンチ・RBが多い。
ライプツィヒの場合は、7人のレッドブル役員が一人15%取得していてる
らしい…(今回ここは対象外なのであまり調べていない)

アンチ・ホップの急先鋒

この問題根が深いのはアンチ・ホップの急先鋒はドルトムントCEO、ヨアヒム・ヴァツケだからである。
彼はホッヘンハイムに対して
「ブンデスリーグは2種類のクラブが存在する。1つは伝統と感情に基づいた「本物のフットボールクラブ」もうひとつは商業専用で設計された「プラスチックな人工的なフットボール」である」
と批判している。
マインツのマネージャークリスチャン・ハイデル氏も
「このようなクラブがブンデスリーグの1つのクラブとなるのは残念だ」
と述べている。
なので、このアンチ・ホップはブンデスリーグのメジャーな考え方なのだ。
もちろん、今回の騒動のようにディートマーホップ氏の人格否定や侮辱はしていないが…
基本的な考え方はブンデスリーガに所属しているクラブの人間も持っているのである。

人種差別的行為を繰り返す理由

サポーターがディートマーホップ氏へ人種差別的行為を繰り返す理由は
簡単だ。
DFL(ブンデスリーグ運営団体)はディートマーホップ氏の不適切なクラブ運営を見逃し続けてきている。
この不適切な運営はブンデスリーグを破壊しかねないと考えており
DFL側にアピールしたい。しかし、いくらアピールしてもDFL側は動かないから過激になる。とドルトムントのサポーター団体は言っていた。
また、彼らは自分たちの行為は好ましくない者と思っている。
それでも、DFL側が動かない限りアピールを続けなくてはいけない。
そして、そのアピールは年々過激になっていく。ということである。

しかし、どんなに動いてもDFLは動かない。という意見もある。
なぜならこの「50+1ルール」をDFLは廃止したがっているのである。
これは、ここ数年CLで勝てない状態が続き国際的な競争力を失いつつある危機感とこの「50+1ルール」がEU/ドイツのカルテル法に抵触しているためである。
なので、今ある「50+1ルール」のグレーなところを塞ぐことはまずしないと思われる。

最後に

ということで、ざっくりとだが、今回のバイエルンの事件からアンチ・ホップについて掘り下げてみた。
いかがでしょうか。
「50+1ルール」というドイツ独特のルールが限界に来ていて、
崩壊寸前の現象がアンチ・ホップなんだと僕は考えている。
ただし、ここまで酷くピッチ内にまで影響してしまうと話がややこしい。
もちろん、今の侮辱は行き過ぎているしなんとかしないといけない。
ただ、纏めながらも解決策を見いだせない状況である。

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