量子コンピュータ入門書籍:初心者におすすめの5冊
量子コンピュータ関連で自分が読んで良かった本をご紹介します。
対象は主に量子力学、線形代数の基礎を学んだ大学2年生くらいを想定しています。(①は例外で)
また、量子コンピュータのプログラミングではなく、理論的な理解のための入門書をピックアップしています。
①驚異の量子コンピュータ
大阪大学の藤井先生の著書です。
「量子コンピュータって何」状態から、まず最初に読む本としておすすめです。
藤井先生は量子コンピュータのアルゴリズムの研究など、「ハードウェア以外のほぼ全て」を対象に理論研究をされている先生です。
この本は、難しい数式はなく、高校生や一般向けの本としても薦められています。
今ならkindle unlimitedで読むことができます。
2018年出版なので近年の動向はやや古い内容ですが、これまでの量子コンピュータ開発の歴史や原理はもちろん、古典コンピュータ開発の歴史にも触れられています。
先生の体験を基に量子コンピュータブームが臨場感をもって伝わってくる雰囲気が感じられます。
②今度こそわかる 量子コンピューター
神戸大学の西野先生の著書です。
出てくるのは簡単な数式や計算だけで、量子計算のエッセンスを詰め込んだような本です。
線形代数と量子力学の基礎を理解していれば、早い人なら1日もあれば読み終わると思います。
この本は、おすすめ書籍として挙げられることが少ないですが、個人的に隠れた名作と思っています!
(先生の語り口が独特なので、好き嫌いが別れるところかもしれません。)
コンパクトにまとまっているにも関わらず、誤り訂正や量子暗号通信、量子テレポーテーションの話までトピックが幅広いのも良い点です!
これを読めば初心者からワンランク上の「ちょっと知ってる人」になれるでしょう。
③量子アニーリングの基礎
東北大学の大関先生と東京工業大学の西森先生の著書です。
アニーリングと言えば間違いなくこれです。
(これ以外に数式入りでアニーリングを説明している教科書は、最近出版されたこれしか知りません)
アニーリングの基礎や最適化計算にどう適用されるのかが数式できちんとわかります。
最後の方は、ゲート型との等価性、モンテカルロシミュレーションや機械学習への応用と、発展的な内容も含んでいます。
kindleで読めないのが残念です。
④個別量子系の物理ーイオントラップと量子情報処理ー
大阪大学の占部先生の著書です。
(すでにご退任されているかもしれません)
①〜③とは少し毛並みが違って、量子コンピュータを実現する物理系にフォーカスしたハードウェア寄りの内容です。
量子コンピュータでは、孤立した2準位系を量子計算の基本素子である量子ビットに使っていますが、その2準位系の基礎がわかる本です。
2準位系はほぼ全ての量子コンピュータの方式で共通なので、この本で一通り理解すると応用がきくかなと思います。
また、タイトルのとおり、イオントラップでの量子制御・演算の手法が紹介されています。
少し難易度は高いですが、ハードウェアまわりの物理の基礎が知りたい人向けにおすすめです。
こちらもkindle版がないのが残念です。
⑤量子コンピューティング: 基本アルゴリズムから量子機械学習まで
最後はJST/CRDSの嶋田フェローの本です。
量子コンピュータのアルゴリズム関係はこの本でかなり多くのトピックが学べます。
メジャーどころのアルゴリズムは網羅されています。
自分は時間が無かったので、流し読みしつつ、式変形の雰囲気だけ味わいましたが、たまに辞書的に活用することもありました。
ちゃんと数式を追いながらじっくり理解できると、かなり実力がつく本だと思います。
②の次のステップとして、さらに理論を深く学びたい人向けです。
以上、量子コンピュータ入門書を5つご紹介しました。
物理学徒はとりあえず量子コンピュータの勉強してみよう!
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