005 Canguacha, Guatemala/ 2009 ーHappines only real when sharedー
005 Canguacha, Guatemala/ 2009
ーHappines only real when sharedー
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love.fútbol Japanのミーティングでは、最初に今の気持ちや心境を共有するチェックインをしている。先週のミーティングで、高校生インターンのゆきから「やることないから、床みがきばかりしてる」と聞き、みんなで笑ってしまった。めちゃくちゃ床がきれいになってるらしい。アルゼンチンで家に閉じ込められている一馬は「もうヤバい、ヤバい」とか得意だったはずの言語化能力が低下し、話題からはサッカーの話が消え、これを機に目覚めた料理の話が多くなった。ついにはインスタで料理の写真をかっこよく見せることを始めてしまった。大丈夫か。これで誰からのリアクションもなくなれば、一馬は孤立してしまう(ので、この場でちょっといじっておく)。あらためて言うこともないけれど、「環境」はすごく、すごく大事なんだなと思い知らされる。
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『Into the Wild』という私の人生ベスト3に入る映画があるのだけれど、主人公がこんな言葉を遺している。「Happines only real when shared(幸せは誰かと分かち合えて現実になる)」。今でもいい言葉だなぁと思う。一馬には誰かのためにご飯をつくるといいぞって言ってやろうと思う。「Happines only real when shared」は、幸せだけじゃなく、意識や行動にも共通していると思う。
今じゃインターネットのおかげであらゆる瞬間や情報やを共有しやすくなってそれなりに精神的豊かさを感じられることもある。でも、こうして自宅に篭もり、分かち合いがインターネットメインになる生活が長く続くと、日常生活を友達や同僚と過ごすような、同じ時間を同じ空間で誰かのために共有できる環境から得られるものが恋しくなる。家の中でもやりたいことはあるし、やるべきことはあるけれど、なんとなくしんどさが増してきた。その理由は個人の意識の問題だと一蹴されると辛いのだけど、人は外部環境に影響を受ける生き物なのだから、やはり問題は、そういう意識をつくる「環境」のづくりづらさにあるように思う。
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2011年、南アフリカで活動していた時、この地域コミュニティの課題は何かボスにヒアリングをしたことがあった。HIV/AIDSや薬物、雇用が挙げられる中で、私が驚いたのは「Apathy(無気力)」だった。無気力って一見個人の課題に見えるようで、実はすごくまわりの環境が影響している。その人がもともと無気力なわけじゃなく、何か目指していたことや、やってみたいことがあったけど、何かしらの理由で実現しなかったという経験がそうさせる。社会インフラやサービス、助け合う人間関係が十分に整っていなかったこの町では、多くの挫折理由は、外部環境に起因せざるえない。無気力の厄介なことは、それが個人にとどまらず、無気力な空気感みたいなものをつくってコミュニティに蔓延していくことにある。無気力の空気感は、意欲的な意識と行動を育てる「環境」のつくりづらさを助長する。実のところ、love.fútbolが活動する現場では大人たちがよく「私たちは世界から忘れられた存在だ」と口にしたりと、同じような空気感を感じることが多い。
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そうした地域の、そうした状況を打破するために「成功体験の共有」が役立つことを私はlove.fútbolで学んだ。love.fútbolがつくるグラウンドは課題を解決する目的でもあり、手段でもある。サッカーグラウンドをつくることは、子どもたちの遊ぶ場所がない問題を解決する目的である。その目的と合わせて、私たちは、地域の継続的な発展のために社会と人の繋がりをつくることを大切にしている。それを地域住民にも伝えていくけれど、「繋がり」って耳当たりのいい言葉だからなんとなく大事なことは分かっても、その成果がわかりにくい。そこで、完成したサッカーグラウンドが成功体験を共有する手段になる。完成したサッカーグラウンドを見て、そこに集まる村中の人たちの熱量を感じて、地域の人たちは「みんなが力を合わせると何が起きるのか?」を体感する。たくさんの人がこの経験をすることで、町の空気感がたしかに変わる。地域の人たちみんなが協力してつくったサッカーグラウンドはまさに「Happines only real when shared」のシンボルになんだよね。
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love.fútbol Japan
代表 加藤遼也
◎love.fútbol Japanではサポーターを必要としています。
サポーターが100人になると、1つのプロジェクトでゴール、フェンス、照明を設置できるようになります。
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