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石上総長の申し入れに対する浅田寮頭の回答書

「宗報」10月号に
「新しい領解文」にかかる対応について(お願い)への回答について
との表題で「宗報」6月号において、5月10日付で当時の石上総長が浅田勧学寮頭に対して行った「有志の会への指導」をするようにとの申し入れに対する浅田寮頭からの回答書を全文掲載しています。

石上総長→浅田勧学(5/10)

統合企画室第10号 2023(令和5)年5月10日
勧学寮頭 浅田恵真 様
総長 石上智康

新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)にかかる対応について(お願い)

 新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)に関し、宗門内の一部の方がSNS等において、その内容に異議を唱えられておりますことは、大変残念なことであります。
 宗門の最高法規「宗法」第11条には、総局がご門主様にご消息を発布いただく手続をする前に、必ず勧学寮の同意を得なければならないと規定されています。勧学寮は、宗門の教義(宗意安心)に関する最高機関であります。
 徳永一道前勧学寮頭より、勧学寮発第97号・2022(令和4)年12月19日付、小職宛「同意について」の公文書が消息文案別添のうえ回移されましたので、これに基づき、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)についての消息を、ご門主様に発布いただきました。その内容は、当然ながら公文書に添付された消息文案そのままであります。
 ご消息の発布については、「宗報」第9条に基づき、発布手続きをした総局がその責任を負います。しかし、あらかじめ勧学寮の同意がなければ、ご消息の発布手続きをすることはできません。ご消息は、勧学寮の同意があったからこそ発布されたのです。
 「宗法」第70条には、「宗門の宗務機関は、その職務に属する事項を行うについて、互いに他の宗務機関に不当に干渉してはならない」と規定されていますので、総局は、勧学寮が同意されたご消息の内容に立入ることはできません。従いまして、一部の方が主張されるご消息の取下げや撤回等について、「宗法」上、総局は判断できる立場にありません。
 総局といたしましては、ご消息の内容について、宗門の教義(宗意安心)に関する最高機関である勧学寮が同意されているにもかかわらず、学階勧学・司教を有する方をはじめ宗門内の一部の方が、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)に異議を唱え、速やかな取り下げや撤回等の主張をされていることに困惑しているところです。
 ご高承のとおり、ご門主様は、親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要におけるご親教においても毎座、「このたびの新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)が従来の『領解文』の精神を受け継ぎ、智慧と慈悲という如来のお徳を慕いつつ、仏智に教え導かれて生きる念仏者の確かな指針となりますことを願っております」とご教示になられております。
 そのお心を深く受けとめ、1日も早く宗門の秩序が回復されるよう、勧学寮頭が中心となられて、「勧学・司教有志の会」に名を連ねられる方々へ宜しくご指導いただきたく、謹んでお願い申しあげる次第であります。本件は、総局の立場と能力を超えた領域でありますので、勧学寮の職責に照らしご尽力賜りたく、重ねてお願い申しあげます。

以上

宗報6月号

浅田寮頭→池田総長(6/21)

勧学寮発第20号 2023(令和5)年6月21日
総長 池田行信樣
勧学寮頭淺田恵真
新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)にかかる対応について(回答)
先般、統合企画室発第10号にて依頼のありました、新しい「領解文」(浄土真宗のみ教え)にかかる対応について下記の通り回答いたします



勧学・司教有志の会が「新しい領解文(浄土真宗のみ教え)」に関して様々に声明文を発しておりますことは勧学寮も充分に把握しておりまして、一日も早く宗門の秩序を回復するように念じております。この件に関しては前総長依頼文の通りであります。
ただ、依頼文の最尾にあります「勧学寮頭が中心となられて勧学・司教有志の会に名を連ねられている方々へ宜しくご指導いただきたく、謹んでお願い申しあげる次第であります。」とあり、しかも「勧学寮の職責に照らしてご尽力賜りたく、重ねてお願い申し上げます」とのことですが、これに関して2つの面から検討しました。

 その1 勧学寮頭の職責の面から
 宗法(第4節第58条第3項)によりますと「寮頭は勧学寮を統理する」とあり、第59条第2項には「6点の事項をつかさどる」と明記されていますが、 この6点の中には「勧学・司教を指導する」項目はありません。また同条第3項に「勧学寮は宗制に定める教義に相違する義を主張した者に対し、教諭する」とありますので、これを検討しましたが、有志の会が主張する内容は 「教義に違する」とは言えません。従いまして彼らを指導する職責は寮頭にないと判断します。
 勧学の任命は御門主ですが、司教の授与権は総局にあります(学階規定第4条)。今回の有志の会の大半が司教を有する人たちですから、職責からするならば、むしろ、総局にあると思考します。

 その2 有志の会への私的な指導の試みの面から
 職責が無いとなれば「個人的に指導できないか」との問題が残りますので、彼らの代表2名(勧学)と寮頭とが私的に会って様子を伺ってみました。 最初には前総長から頂いた公的文書を見せながら、職責では話す事が出来ないと思われるので私的に相談したい、とした上での話し合いでした。しかしながら彼らの意思は強固で、声明文の主張を変更する思いは微塵も感じられませんでした。ですから彼らを私的に説得することは無理と判断します。
 それどころか、彼らは寮頭が見せた前総長の公的文書をすぐさま中外日報に送った様子で、話し合った翌日に中外の記者から「寮頭と代表者とが相談した事」への問い合わせが寮頭に入りました。寮頭は私的な事だからと断りながら気楽に「むつかしい」との感想を述べたところ、翌日付けで「総長が淺田寮頭に指導を依頼」との見出しで、トップ記事として掲載されました。これを見てたとえ私的であったとしても、今の段階で彼らへの対話は困難と判断した次第です。
以上、依頼を受けて二つの面から検討し、対話を試みましたがいづれも相容れることが出来ませんでした。

以上

宗報10月号

回答書の日付を見ますと6月21日となっており、何故今なのか?と総局の対応に疑問を持つものですが、浅田寮頭回答書を読んで驚いた事が2つ。

ひとつ目は、「その1」の中で

宗法第58条第3項に、勧学寮は宗制に定める教義に相違する義を主張した者に対し、教諭する。とありますので、これを検討しましたが『有志の会が主張する内容は「教義に違する」とは言えません。従いまして彼らを指導する職責は寮頭にはないと判断します

図らずも「勧学寮頭として有志の会の声明文は教義に違することはない」と有志の会の主張を擁護するような見解のもと、石上総長の申し入れを受け入れる事は出来ないとしています。

二つ目は、「その2」の中で

職責が無いとなれば個人的に指導できないかと私的に有志の会の勧学2人と会って、石上総長の申し入れ公文書を見せながら話し合いをしたが、有志の会の意思は強固で声明文の主張を変更する意思はないと感じさせられ私的に説得することは無理と判断した。

と、ここで終わっておけばいいものを浅田寮頭は続けて

彼らは寮頭が見せた前総長の公的文書をすぐさま中外日報に送った様子で、話し合った翌日に中外の記者から「寮頭と代表者とが相談した事」への問い合わせが寮頭に入りました。

と、あたかも有志の会の勧学さんが宗教紙に文書を渡したのではないかという憶測だけで記述をされています。これだけを読めば「有志の会の勧学お2人は、聞く耳持たず、私的話し合いをメディアにリークする輩」の印象を宗門内の皆に持たれてしまいそうです。

私はこの回答書が宗報に掲載されるという情報を聞き、すぐ有志の会の勧学さんに事実確認を致しましたところ「そういった事実(文書を流した)はない」と即答を受けました。またメディア関係者からもそのような事実(勧学さんから文書を渡された等)はなかったとの声を聞いています。

そうだとするとこの回答書の「その2」の箇所は浅田寮頭の「事実無根の憶測による判断でなされた対応不可能との回答」であると言わざるを得ません。浅田寮頭がこのような回答をなされた背景については検証する必要があるとは思っています。

この回答文書を池田総長が受け取って既に4ヶ月。その間、池田総長はこの事の事実確認をした上で公開したのか?あるいは確認もせず宗報に掲載したのか?この事も検証する必要もあると思います。

8月盆前に武田前執行長が全宗会議員に送られた「武田文書」を事実無根なるものと批判し、法的手段も辞さないことも視野に入れたかのような表現を含めた「総局見解2」を出した池田総局。武田文書はあくまでも宗会議員が送付対象です。

しかし今回の浅田文書は「宗報」という宗門の官報によって、全宗門内に事実無根の事柄が書かれているにも関わらず、事実確認もせず掲載したことであるならば、有志の会2人の勧学さんの名誉を著しく毀損していることとなり、その意味合いは全く違います。

「宗報」の発行責任者は池田総長です。その責任は追及されるべきものでしょう。

松月 博宣
浄土真宗本願寺派僧侶
龍谷大学文学部仏教学科卒業。本願寺派布教使。
福岡県海徳寺前住職。
https://www.kaitokuji.info/

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