【覚え書き】触覚の世界

 最近興味を持った触覚についての覚え書き。書籍や論文を読んで少し賢くなった気がするので言葉にして整理してみる。自分の知識を整理するために書いているものである。

1.皮膚感覚について

「冷たい」や「痛い」などの感覚を皮膚感覚という。皮膚感覚は表在感覚と深部感覚に分けられる。表在感覚は温覚、痛覚、触覚、圧覚の4種類である。視覚情報は眼から、味覚情報は舌から得るように皮膚感覚にも情報を得る感覚受容器が存在する。

〈表在感覚〉
温覚 : 温かい、冷たいなどの温度を感じる感覚。感覚受容器はルフィーニ小体(暖かさを感じる)とクラウゼ小体(冷たさを感じる)の2つ。

痛覚 : 痛みを感じる感覚。感覚受容器は自由神経終末。

触覚 : つるつる、ざらざらのような肌触りなどを感じる感覚。感覚受容器はマイスナー小体とメルケル盤。

圧覚 : 皮膚にかかる圧力を感じる感覚。感覚受容器はパチニ小体。

深部感覚は関節の位置や筋肉の伸縮具合など、体の内部の状態を感じるものである。

 深部感覚は、骨膜・筋・腱・関節・靭帯に対する接触刺激またはその運動から起こる感覚であり、手足の相対的な位置(位置覚)や運動の方向(運動覚)がわかる運動感覚、音叉を骨に近い皮膚上に当てると感じる振動覚、骨膜・筋・腱などに強い圧迫や持続的な刺激が加わって生じる痛みの感覚(深部痛覚)に分類できる。
文献2より引用

 感覚には刺激を受けてから認識するまで刺激の情報を伝える道筋がある。これを感覚路といい、皮膚感覚では脊髄から脳へ刺激の情報が伝わる。温痛覚の情報は外側脊髄視床路を通り、触覚の情報は前脊髄視床路(粗い触覚が伝わる)と後索(繊細な触覚が伝わる)を通る。深部感覚では意識できるものは後索、意識できないものは前脊髄小脳路と後脊髄小脳路を通り、脳によって情報が処理される。

2.触覚線維

 タンスの角に小指をぶつけた時は鋭い痛みが走ってからじわじわとした痛みがしばらく続くと思う。この痛み(刺激)が伝わる速さや痛みの強さをつかさどるのが触覚線維である。
触覚線維にはA線維とC線維があり、ミエリン鞘というタンパク質の鞘に覆われているかで区別できる。A線維はミエリン鞘に覆われているがC線維は覆われていない。ミエリン鞘のおかげで信号の伝達速度が速くなる。
 A線維にはAα線維、Aβ線維、Aδ線維の3種類がある。
Aα線維は自分の体の各部が空間のどこにあるのかという心像を形成する。これを「固有受容覚」という。信号を時速約400キロメートルと非常に高速で伝える。
 Aβ線維は細かい刺激を識別するための線維である。皮膚の受容器からの信号を時速約240キロメートルと高速で伝える。
 Aδ線維は鋭い刺すような痛みなど、一部の温覚と痛覚を担う。やや細くミエリン鞘も薄いため信号の伝達速度が中速である。
 C線維はミエリン覆われていないため信号の伝達速度が低速である。速さは時速約3.2キロメートルである。Aβ線維が高速ではっきりとした刺激を伝えるのに対して、C線維は時間をかけて信号からの情報を統合して雰囲気を判別する。優しい刺激に対して最も発火する。
 皮膚を撫でる速さと線維の発火率にはある関係が見られる。Aβ線維は撫でる速さが早いほど発火率が高くなる一次関数的な関係がある。C線維は撫でる速さが速すぎても遅すぎても発火率は低く、撫でる速さが毎秒約3〜10センチメートルの時に最も発火する二次関数的な関係がある。

3.参考文献

  1. デイヴィット・J・リンデン、岩坂彰 訳、”触れることの科学”、2019.3.20、河出文庫

  2. 大沼俊博,渡邊裕文,“深部感覚障害を有する患者への理学療法評価と理学療法の考え方”、2006年、関西理学療法第6巻p.39〜42

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?