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お得に達成感を得た

仕事をやめた。2年勤めた職場だった。とある業界のとある分野で最大シェアを占めるようになってから、業務量が増加し人がどんどんやめて、残された人にますます圧力がかかって殺伐としてきた。個人的に辛いこともあったし、今が逃げ時と思って先月、やめた。年末年始をゆっくり過ごしたいと思い、未だ次の仕事は探していない。これまでは平日の夜にヒイヒイいいながらやっていた家事を、日中にのんびりできるようになった。手の込んだ料理を作ったり、後回しになっていた細かい箇所の掃除もした。とはいえ家事というのは、やろうと思えば無限にあるが、見切りをつければつけられるものだ。毎日とにかく時間がある。

仕事をやめる前は、やめたら今までやりたいと思ってできななかったあらゆることをやろうと思っていた。積読を消化し、観たいと思っていた映画を全部観て、クリアしないままになっていたゲームをやりこみ、漫画を1巻から読み直し、前から興味のあったことを勉強して、気になっていたカフェをはしごする…無職の期間にあんなに思いを馳せていたのに…

怠ける人間というのは、仕事があろうとなかろうと、時間があろうとなかろうと怠けるのだということにようやく気が付いた。私は天性の怠け者で、こんなに時間があるのに毎日毎日SNSを眺めて無為な時間を過ごしている。数日前、これでは駄目だと自分を奮い立たせて自転車で20分先の図書館に行ったのだが、自習席の隣のおじさんが口をチャッ…チャッ…と鳴らすのが気に障ってまったく集中できなかった。なんとか粘って本を読んだが、一度トイレに立つとなけなしの集中力さえ二度と取り戻すことができなくなり、諦めて帰ってきてしまった。滞在時間は2時間、読んだページは100ページだった。読んだ本というのがまたいやに改行の少ない本で、1ページ読むのに時間がかかり、読んだページ数で手っ取り早く達成感を味わいたい私はやきもきした。本自体は面白いのだが、何の成果も得られない日々に焦っていると、インスタントな達成感を求めがちになる。帰りの時間には急に気温が下がり、寒さに弱いうえに体力も落ちているためか、帰宅後は思いのほかぐったりしてしまった。とても100ページの分の対価とは思えない。

とはいえ、本を開くことすら億劫だった状態からは進歩したといえよう。「やる気はやらなければ起きない」というのは本当で、動き始めれば自ずと物事は進んでいくものだ。というわけで今日は、「2か月に1回はやるべきだ、やろう」と思って半年が経った洗濯槽の洗浄をやった。洗剤だけは買ってあったのが幸いだ。洗剤をぶちこめば全自動でやってくれるのだから当たり前なのだが、やってみれば本当にあっけない。お得に達成感を得た。
さらに、まとめて手洗いモードで洗おうと思って溜めに溜めたおしゃれ着(その間、まったく着ることができなかった)も洗った。ふだん濃縮洗剤というのを使っていると、濃縮でないエマールの目盛りの数値に毎度新鮮に驚く。45リットルの水に、こんなにも洗剤を入れていいのか。ブラジャーやシルクの枕カバーも、以前は手洗いしていたが、使う頻度が高くあまりに煩わしいので最近は洗濯機で洗っている。「ブラジャー 洗い方」と調べると当然推奨されている手洗いの方法が出てくるが、「ブラジャー 洗濯機 洗い方」と調べれば洗濯機で洗っている同志が見つかり安心できる。脱水1分でブラジャーだけ取り出し、ほかの服を追加で3分脱水して、干す。また達成感を得る。

今日は夫が飲み会で、夕飯を作らなくていいので楽だ。職場の飲み会で夫は飲酒をせず二次会にもいかないので、あと2時間ほどで帰ってくるだろうか。自宅と駅の間のコメダ珈琲で本を読みながら連絡を待ち、夫を駅まで迎えに行くことにする。

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