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2020年10月に読んだ本

先月読んだ本の、まとめ!

① 岡嶋裕史「5G 大容量・低遅延・多接続のしくみ」

書店で見つけて、「最近よく聞く単語だけれど、これはなんだろう?」と気になって購入。

いきなり5Gの説明をするのではなく、1〜4Gがそれぞれどういうもので、その上で5Gがどういうものなのかが説明される。

分かりやすく説明してくれる上、現状で分かっていないことは「分からない」としっかり書かれていて信頼できる。

基本的に技術や事実の説明だけれど、最後の章では「これからの社会がどうなるのか」という著者の想像が展開される。「すばらしき監視社会へ」と題された節もあり、このあたりのアイデアは柞刈湯葉「人間たちの話」収録の『たのしい超監視社会』が思い起こされる。

② 村田沙耶香「ハコブネ」

村田沙耶香作品は好きなんだけれど、続けて読むとメンタルへの負荷が高いのでじわじわと読み進めている。

ということで本作もだいぶ身構えて読んだのだけれど、「ハコブネ」は村田沙耶香作品の中では比較的おとなしめ。

ただ、メンタルを抉るような描写や驚愕のSF的設定はないものの、3人の登場人物がそれぞれ異なる価値観を持っていて、衝突やすれ違いが描かれる点は色々な村田作品のエッセンスが詰まっているようで豪華。

そういう意味では、最初に読む村田沙耶香作品としておすすめ... なのかもしれない。(でもSFファンには「消滅世界」が私的なイチオシ作品)

③ ミヒャエル・エンデ「モモ」

エンデの「はてしない物語」が好きで、ずっと気になっていた作品。ただ、「はてしない物語」よりもメッセージ性が露骨なので好みが分かれるかもしれない。

基本的には「豊かな時間を灰色の男たちに奪われ、人々の生活から余裕がなくなってしまった。それを取り戻すために奮闘する」というストーリー。

時代が変化していく当時の人たちからすると、「灰色の男たち」は恐ろしい存在だったのかもしれないけれど、今日の豊かな生活が工業化と商業主義による「時間の節約」で支えられているのも一面では事実ではある。

一方、主人公の味方のキャラクターが「純金張りの館で蒐集物に囲まれてココアを飲む」人物なのだけれど、こういった「優雅さ」は今日では手放しで称賛できるものではない気がする。この「優雅な生活」もこれはこれで他人の時間奪ってそう、というか(カカオ豆と金...)。

偉大な作品ではあるのだろうけれど、時代の変化によって読まれ方が変わってきそうな作品。

④ トーマス・オーウェン「青い蛇」

同じ作者の「黒い玉」が好きで気になっていた本。最近復刊されたらしいので早速購入。

10~20ページくらいの分量の怪奇小説が編まれた短編集で、移動時間等にさくさく読み進めることができる。

話に(きれいすぎるほど)きれいにオチの付くものもあれば、曖昧なまま終わるものも。各作品の冒頭数行の書き出しがとても上手くて、物語に一気に引き込まれる。

収録作では「鏡」がお気に入り。これは収録作の中ではかなり「分かりやすい」ホラーだけれど、王道ゆえにぐいぐい引き込まれる。

⑤ エドガー・アラン・ポー「黒猫・アッシャー家の崩壊」

トーマス・オーウェンの「青い蛇」を読んで、怪奇小説の短編が読みたい欲が高まってきたので書店を物色。そう言えばエドガー・アラン・ポーは昔読んだ記憶があるけど、読み返してみようかなと購入した本。

「黒猫」のようにたった一つの音で背筋が冷える作品もあれば、不気味な雰囲気をためにためて、ラストで一気に畳み掛ける「アッシャー家の崩壊」のような作品もある。

淡々と身体的な恐怖を綴る「落とし穴と振り子」のような作品もあれば、幻想的な雰囲気の「赤き死の仮面」(「赤死病の仮面」の邦題が有名?)もある。

それぞれ作品のクオリティが高い上にバラエティが豊富なのはさすが大御所...! と唸らされる。新潮文庫のこのシリーズは「ゴシック編」「ミステリ編」「SF&ファンタジー編」と続くらしいので、続巻も気になる。


以上、先月の読書でした!


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