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2020年9月に読んだ本

先月読んだ本の、まとめ!

① ウィリアム・ギブスン「クローム襲撃」

サイバーパンクの第一人者ウィリアム・ギブスンの短編集! 1980年代の作品だけれど、今でも全く古びていない。

「記憶屋ジョニィ」はそのままSF映画になりそうなかっこよさだし「ふさわしい連中」は怪奇小説の短編として秀逸。「ドッグファイト」は悪漢が改心する『いい話』に向かわずに、エゴのままに落ちるところまで落ちていく強烈な話。SF的な思索という点では「辺境」も外せなくて… と収録作がどれも面白い!

というか「記憶屋ジョニィ」は実際にこれを原案に映画が作られているらしい...? 気になる。

② 津原泰水「バレエ・メカニック」

7本足の巨大な蜘蛛が東京を闊歩する破天荒な第一部に始まり、探偵小説風味の第二部、SF的な第三部と雰囲気を大きく変えながら物語が進行していく。

第一部の時点で「これこの先どうするの?」というとんでもない事になっているのだけれど、各部の要素が絡みながら一つの物語として収束していく。SFファンの評価が高いのも納得の傑作(怪作?)でした。

③ ナターリヤ・ソコローワ「旅に出る時ほほえみを」

ある科学者が、地底探査のための「怪獣」を創出。国民はこれを偉大な科学の勝利として称えるが、首相はこれに兵器としての可能性を見出し、独裁制へと舵を切り始める...

独裁制批判・風刺のような内容になっているけれど、独裁者を打倒する冒険活劇でもなく、リアル志向なディストピア小説でもなく、哀愁漂う「現代のおとぎ話」になっている。

「おとぎ話」として軽いノリで場面が飛ばされることもあれば、妙に生々しくリアルなシーンもある。物語の中盤、主人公(作中ではただ《人間》と呼称される)がある決意を表明するシーンの緊迫感は相当なもの。

あとラストシーンがすごく好きなんだけど、これはネタバレになっちゃうので自重。自ら「おとぎ話」を名乗りながら、現実を単純化した単なる「おとぎ話」に収まらない力強い物語でした。

④ テレツィア・モーラ「よそ者たちの愛」

ある出来事をきっかけに、それまでの人生で背負った重荷でメンタルがポッキリと折れてしまう... そんな話が多めの短編集。最終的に立ち直れる人もいればそうでない人もいる。

とはいえ語り口としては悲壮な雰囲気ではない。国内の作家さんだとファンタジー路線じゃないときの村上春樹作品に近い感じがする。

収録作では、採用試験の「模範解答」に異議を唱えて就職に失敗する「チーターの問題」がお気に入り。


以上、先月の読書でした!

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