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2022年5月に読んだ本

今月読んだ本の、まとめ!

① フィリップ・K・ディック「変数人間」

最近ハマっているディックの短編傑作選、の3冊目!

収録作では一風変わったポストアポカリプスもの、「パーキー・パットの日々」がお気に入り。滅びた文明の栄華を知る大人たちが昔を懐かしんで人形遊びに興じる一方、次世代の子供達はたくましく狩りとかして遊んでいる世界。これはイーガンと村田沙耶香が好きな私にとても刺さる作品でした... というかディックのポストアポカリプスものがどれも面白い。

② フィリップ・K・ディック「変種第二号」

ディック傑作短編選の4冊目。

今回の収録作では「歴戦の勇士」の印象が強烈。公園で若者を捕まえて、かつての武勇譚を話したがる退役軍人の老人。しかしよく話を聞いてみると、そのような戦争は「まだ」起きていないことが分かって...!?

という衝撃的な書き出しで始まるメインのストーリーもさることながら、作品の背景となる世界観の描写がすごい。

他にも、静かな諦観を示して終わるのが印象的な「たそがれの朝食」、2通りの真相が語られるリドル・ストーリー的な「奉仕するもの」、サスペンス要素の強い表題作「変種第二号」と様々な短編が収録されています。

③ アルベルト・アインシュタイン「アインシュタイン回顧録」

最近新訳が出版されたアインシュタインの回顧録。

「回顧録」という形ではあるけれど、家族の話も戦争の話もせず、ずーーっと物理の話をしてるのが最高。

相対論・量子論の誕生以前の物理学の概観から始まり、理論を構築した科学者の立場から相対論を振り返ったり、相対論と量子論を統合する新しい理論を模索したりと、とても興味深い内容でした。

④ 佐々木浩宣「ヘンテコ関数雑記帳」

大学で解析学(ε-δ論法とか)を勉強したとき、「単純なことを主張するのに、ずいぶん面倒なことをしてるのでは...?」と思っていたのだけれど、そういう面倒な手順を踏まないとまともに扱えないヤバい関数があるのだ!と分かる本。

議論の結論だけを示すのではなく、「こうなりそうな気がする」「こうなったら嬉しい」というような、数学者の頭の中を覗き見できるような記述になっているのが面白いところ。 数学だけではなく物理への言及もあり、ランベルトのW関数は空気抵抗のある放物運動を記述する中で出てくる... というような話題も。

⑤ 辻川信二「入門 現代の宇宙論」

宇宙論を紹介する本では、「科学者がこのように考えている」という結論だけが提示されることが多いように思うのだけれど、本書では
・従来のモデルにはこんな問題があった
・それを解決するためにこのような理論が提案された
・その理論はこのような実験で検証された
と筋道立てて理論が紹介されていきます。

一方で、一般相対性理論のテンソル計算をガッツリするタイプの本ではなく、意外なほどたくさんのことが古典力学と熱力学で説明されているのが驚きでした。(一般相対性理論で計算しても同じ結論が得られる、的な補足は付く)


以上、今月の読書でした!


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