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2020年4月に読んだ本

先月読んだ本のまとめです。

① 柞刈湯葉「人間たちの話」

「横浜駅SF」の著者の初の短編集。普段のTwitterでの著者の語り口から、ギャグ調な作品が多いのかな、と思っていましたが、ほんのりシリアスな雰囲気の作品が多め。

寒冷化によって文明が衰退したあとの世界の旅を描くポストアポカリプスもの「冬の時代」、パロディネタでありながら作品世界の真実にぞっとさせられる「楽しい超監視社会」、異星生命体との意外な(しかし起こりそうな)ファーストコンタクトを描く「人間たちの話」、...と作品のバラエティも豊富。

個人的には「記念日」がお気に入り。ある日突然自室に巨大な岩が出現した主人公の生活を描く短編。正直SFではない... というか、もう少し掘り下げれば特定のジャンルの小説に分類できそう、というポイントを華麗にスルーして「よくわからない何か」であり続けるよくわからない何か。

② 小川哲「嘘と正典」

伏線の配置と回収が巧妙で、まるでパズルが完成したときのような満足感が楽しい短編集。

表題作「嘘と正典」はメインのストーリーもさることながら、そのストーリーを成立させる視点が興味深い。

ニュートンがいなくても誰かが万有引力の法則を発見しただろう。しかしディケンズがいなければ『オリバー・ツイスト』は書かれなかったに違いない。では、共産主義は...?

その他の収録作では、競馬好きだった父が遺した馬の謎を追う歴史ミステリ風の「ひとすじの光」がお気に入り。


以上、4月の読書でした。

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