薬局の現場における人について

個人開局(いわゆる家業)として薬局を運営している場合を除くと、多くの薬局が抱える目先の課題は「人」と「収益」になるかと思います。

収益についてはある程度の規模にとりあえずなってしまった会社ほど調剤報酬のハードルを越えられずに、越えられそうで越えられない壁の前であがいている(あるいは諦めている)状況かと思います。

一方で収益を圧迫する最大要因は「人件費」(売り上げに対する人件費)。
一方で指標となる労働分配率は高いのか低いのか。

売上高人件費率とは、会社の売上に対する人件費の割合のことを指します。人件費には、社員の単純な給与、賞与の他に、福利厚生費、法定福利費、退職金、役員であれば役員報酬と役員賞与などが含まれます。
売上高人件費率が大きければ、会社の人件費の負担割合が大きいことを示しており、逆に売上高人件費率が小さければ、会社の人件費の負担割合が小さいことを示します。
売上高人件費率(%)=人件費÷売上×100

労働分配率とは、会社の利益(付加価値)に対する、人件費の割合のことを指します。
売上高人件費率と同様、一概に労働分配率が小さいことが良いことで、労働分配率が大きいことが悪いということではありません。
労働分配率(%)=人件費÷付加価値×100
※付加価値=売上総利益=売り上げ額×利益率
労働分配率(%)=人件費÷粗利益×100
労働分配率の値は通常40~60%程度だと言われています。この割合が高過ぎる企業は労働効率が悪いということです。
労働分配率の付加価値とは売上総利益のことを指します。そのため、付加価値の算出方法は「売り上げ×利益率」です。

TKC経営指標
https://www.tkc.jp/tkcnf/bast/sample/
を参考に業界としての人件費率と労働分配率を比較してみると現場でよく聞く「人が足りない」という声と経営指標があまり一致しないこと。
業種業態として調剤薬局は「小売」であり、その中で見比べると「中途半端」な業態であること。
小売とすればもう少し人件費率を下げ効率化できるはず。
医療としてで考えると医師や歯科医師はそれで経営を成立できるものが認められているのと比べると非常に中途半端です。

業種  人件費率  労働分配率
調剤薬局:22.2%:65.7%
医療用品卸売業:14.0%:57.2%
コンビニエンスストア:10.5%:40.3%
医薬品小売業(調剤薬局を除く):25.6%:62.9%
歯科診療所:53.9%:63.9%
無床診療所:50.9%:63.7%
獣医業:45.7%:60.4%
情報処理サービス業:61.9%:70.9%
経営コンサルタント業:46.9%:57.2%
訪問介護事業:70.4%:72.7%

人を増やせば、経営的に人件費率が高くなり経営が成り立たない。
ようは稼ぐ力が弱い。
(それぞれの企業で労働分配率を高めにしているところなど、企業件数が多いからこそ一概に言い切れない部分ですが)

シンプルに考えれば

「効率化」

「現場での稼ぐ力を伸ばすこと・見つけること」

が必要なのでしょう。

現場を見ている限り、今ある仕事で忙しいから人がいる。
人を入れたら能力が伴わないから結局は変えられない。
業務を見直し、改善するという事が生まれにくいのかなと感じます。
今ある仕事を分担しながらやるだけでは継続しない業界であることは明白なのに、現場はなかなかその現実に気づかない。

「足りない」ではなく何を効率化し、何を生み出していくか。
ここを真剣に考えない限り、壁を乗り越えられずに終わりを迎えてしまうように思います。

現場を巻き込みながら。

今いる人材を大切にし、人材の力を発揮できる環境を作り出すこと。生み出すこと。

余裕がない事があたりまえに通ってしまいかねないこの業界だからこそ、今真剣に「人」のことを考えるべきだと思います。

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薬局生まれの薬局薬剤師。新幹線通勤をしながら23年勤務した会社を卒業して地元東海地方で活動していく道を模索しています。