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理系へミクロ経済学のススメ

経済学というと皆さんは文系の学問というイメージが強いのではないでしょうか.しかし,外国では理系の学問として扱われています.それはなぜでしょうか?
答えは簡単で,数学を多用するからです.経済学の理論は今まで数学的に研究されてきたのです.

私自身も理系ですが現在経済学を勉強しています.もちろん,大学の講義ではガッツリ数学を利用して学んでいます.しかし,経済学は文系の方々が学ぶ機会の方が圧倒的に多いので,Youtubeに数多くある講義動画や参考書などは数学的な説明に欠けています

故にどうしても暗記が必要な面白くない学問と捉えられてしまいがちですが,実際には実用的な素晴らしい学問です.

と言っても,市販されている難しそうな参考書をやるのは気が引けると思います.しかし,理系の方は暗記に頼らず数学的な側面から経済学にアプローチできるため,よく分かる!と言った肩書きの可愛い参考書を選ぶのはナンセンスです.
ここでは大学で学んだ経済学の知識をもとに数学的な視点を交えて経済学についてちょっと書いてみました.


需要・供給とは?

需要とは,個人や企業という主体が,財やサービスを購入しようとする行為のことを指します.堅い言い方ですが,「商品を購入したい気持ち」と捉えていただければ結構です.
また,ここで財とサービスという言葉が出てきましたが,財は有形の商品,サービスは無形の商品を指しています.以降ミクロ経済学では商品と呼ばずに財,サービスと呼んでいきます.

供給とは,需要の逆で,財やサービスを提供しようとする行為のことを指します.「商品を売りたい気持ち」と捉えていただければ結構です.

需要・供給というと,中学生の時に下のような形で見たことある人が多いのではないでしょうか.価格と数量の関係を表した図になっています.ミクロ経済学の入門としては,この曲線がどうしてこの形になるのかについて理解するのが目標です.


需要・供給曲線



経済というのは常に需要と供給によって成り立っています.需要が高く供給が少なければ価格は上がり,需要が低く供給が多ければ価格は下がる,というよくあるやつです.簡単に言えばそれだけなのですが,ミクロ経済学ではさらに深掘りをしていきます.

ミクロ経済学では個人の需要・供給について数学的に捉え,経済の仕組みについて研究していく学問となっています.ミクロ(micro)というのは日本語で「極めて小さいこと」を意味するのですが,確かに社会全体に比べたら個人はミクロですね.


ミクロ経済学入門1:消費

消費の理論の前提

まず需要と供給について,需要とはどのようにして成り立っているか考えていきましょう.消費というのは「財・サービスを購入して使うこと」なので,需要とほとんど一緒と考えて結構です.たくさん消費される=需要が高い,となります.

まず,消費する側のことを消費者と呼ぶこととします.ミクロ経済学を学ぶ上で,現時点ではこの世に財が二つしかないものとしましょう.財が三つ以上ある場合を考えると計算が煩雑になり,一つだと考察の余地が全くないからです.

さて,ここからは例で考えていきます.
焼き鳥1本100円,ビールひと缶200円が売られていたとします.あなたの所持金は1000円です.全てお金を使い切りたい時,さて,どのように買いますか.
皆さんは,迷った末に買い方が決まると思います.焼き鳥6本とビール2缶,と言ったように.これを選好の完備性と言います.
すなわち,「焼き鳥とビールはビールは3:1の割合で欲しい」とか,「ビールと焼き鳥は同じ価値である」とか,「ビールのほうが焼き鳥より大事」と言ったように
消費者は財に順序(優劣)を付ける,または同等であると考えることができる」という事実のことを完備性というのです.これは,消費者の考え方について数学的に捉えるための設定だと思ってください.

同様に,
財は多ければ多いほどよい,という消費者の性質を「選好の単調性」,
財の組み合わせ1よりも財の組み合わせ2が好きで,財の組み合わせ2より財の組み合わせ3が好きなら,財の組み合わせ1より財の組み合わせ3が好き,という性質を「選好の推移律」と言います.
ここでいう財の組み合わせとは,例で言ったところの焼き鳥6本とビール2缶の組み合わせであり,よく(6,2)のように書かれます.
結局は,単調性は「持って帰っていいならたくさんあるほうが嬉しい」
推移律は「AよりBが好き,BよりCが好きなら,AよりCが好き」という当たり前のことを言っているだけなのです.

これらの設定を聞いて「?」となる人が多いかと思います.しかし,安心してください.この後あんまり使いません.なんとなーく理解していればOKです.もし大学でテストがあるという方は,出るかもしれませんが.

これらの設定を置くことで消費者の考え方を数学的に捉えることができるようになりました.さて,次は先ほどから言っている「選好」について考えていきます.


選好・効用とは

選好とは,消費者の好みのことです.難しく言っているだけです.
しかし,好みというのは数学的にどう考えたら良いか分かりづらいので,「効用」という数値の概念を導入します.ここで,効用関数$${ u(x) }$$というものを考えます.
(1)$${u(A) = u(B)}$$ならば,AとBは同じくらい好ましい(無差別である,と表現する)
(2)$${u(A) > u(B)}$$ならば,AはBより好ましい
以上の2つの条件を満たすものを効用関数,と定義します.
これで人の好みを関数で表すことができるようになりました.

分かりにくいと思うので,ここで一つ例をあげてみましょう.$${u(x,y)=x+2y}$$という効用関数を考えます.(xは焼き鳥の個数,yはビールの個数とする)このとき,効用関数の値が好ましさを表しているので,例えば$${(x,y)=(2,2)}$$よりも$${(x,y)=(1,3)}$$の方が好ましいと分かります.この効用関数で選好を表すことができる人は,焼き鳥の2倍ビールを好んでいると分かるわけです.
このように,人々の好みを数学的に表現するのに効用関数は大いに役立ちます.


無差別曲線とは

効用の値が人の好みに関係あるのであれば,やはりグラフに表すのがみやすくて良いのではないでしょうか.しかし,先ほどの例からも分かる通り,財が2つの場合(以後2財モデルと呼ぶ)は3次元のグラフになってしまいます.(第一財と第二財の個数によって効用の値が決まる,という形)


効用関数の形状

以上のことから,実際に効用を考える上でこのままでは非常に不便なので,ある効用の値を取る財の組み合わせだけをプロットした2次元のグラフを考えることにします.

効用が等しくなるような財の組み合わせ$${(x,y)}$$をプロットすることでできる曲線を無差別曲線と言います.


無差別曲線

無差別曲線にはいくつかの性質があります.数個例を挙げると,必ず右下がりの曲線になるだとか,右上の無差別曲線ほど効用が高い,とかですね.
これらの性質は全て先述の単調性やら完備性やらで示すことができます.だから先ほどのよくわからない設定が必要だったんですね.
これで人々の好みをグラフにプロットすることができるようになりました.あとは,人々の予算を考慮すれば,ある効用関数を持つ人に対してどんな買い方が最適なのか分かるようになります.


予算線とは

予算線とは,名前の通り予算を表している線のことです.ある二つの財X,Yがあり,それらの値段を$${P_x,P_y}$$として,現在持っている所得を$${I}$$と書くことにすれば,予算線は以下の式で記述することができます.
                                                 $${xP_x+yP_y=I}$$
これは,財Xをx個,財Yをy個買った時にちょうど所得を使い切ったことを表していますね.単調性より,たくさんある方が効用が高いので,所得ピッタリまでお金を使って財を買っていると考えるわけです.
このままだと分かりづらいと思うので,$${y=}$$の形に書き換えると以下のようになります.
$${y = - (P_x / P_y)x + I / P_y}$$
この式で描かれる直線が予算線,というわけです.
これと無差別曲線の接点が,最もよい財の組み合わせということになります.

無差別曲線はある効用の値を取るような財の組み合わせの集まりであり,効用が高いほど右上にあるので,予算線と無差別曲線が接する地点が最も効用が高く,最適な点であることは図からもなんとなくわかると思います.

これによって,消費者が最も選びたい財の組み合わせを見つけることができました.これが,需要曲線の内訳,ということですね.
与えられた価格に対して,最も高揚が高くなるように買う財の組み合わせを選ぶ,という行為によって需要曲線の形は決められていたわけです.

これ以降の生産の理論は気が向いたら書きます.

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