ベリーショートトリップ〜たまにどこかに行っている〜

34   不為な家事


年末、どことなく浮かれたような雰囲気が漂ってくる。私は、仕事がら年末年始の休みはなく、普段と変わりない。毎年これといって仕事納めも始めもなく、淡々と年をまたぐ。

シフトの調整のため、飛び飛びで休みはあり、掃除などをして過ごしている。
今日も冬晴れのいい天気だ。朝、窓を開け放ち、冷たく澄んだ空気を部屋に入れる。
こたつを上げ、箒で部屋を掃く。
溜まったホコリが日の光に反射しながら舞い上がり飛んでいく。
私は家事全般が好きで、できれるなら主夫になりたいと思っている。
掃除、洗濯、料理、どれもやっていて楽しい。
部屋中を掃きながら思い立った。
今更ながら、(youtube やってみようかな)。
だいぶ前から考えていたことではある。
家の事。例えば、家事や雑作のちょっとした事を映像で撮ってみたら面白そうだなと。

これは別に自分で面白いというだけで、世の中的には大して面白い事ではないかもしれない。
このnoteもそうであるが、周りの評価や受けを気にしては何もできない。
見てくれる人が増えるのはもちろん嬉しい。が、それよりも自分が面白いと思うかどうかが大事だと思う。人に不快感を与えなければ自己満足でいいじゃないか。
ただ、こうした表出は自分だけでやると意識がどんどん内面に向かい、だんだん面白くなくなる。あくまで見ている人がいる体で外側に発信するのがいい。

というわけで、早速カメラを回してみることにした。

自分の中で何が面白いのかというと、日常動作を撮って映像にしてみると、自分の視点じゃないところからその様子が観れるということである。「あたりまえやないかい」、というツッコミをスルーして話を進める。

人は無意識にいろんなことをやっている。介護の仕事の中で、意思疎通の難しい高齢者を相手にする場合、微妙な動作や仕草を読み取ることをする。これはできる人とできない人がいて、わからない人にはいくら説明をしても「ちょと何を言っているのかわかんない」ようだ。つまり何となくという領域になるため、この原理をはっきりとした原因と結果に結びつけることはできない。
しかし、感覚がいい人になると無意識に相手の次の動きを読み取り、自分も無意識に立ち位置を変えている。これは音感みたいなもので、できない人にはなかなか難しい。

ところで、youtubeにあげるかどうかどうかは別として、この無意識の動きというのは映像に映り込み、見るとなかなか面白いのである。

家事や日曜大工など、家の事をyoutubeに上げている人は多い。大抵はきちんと編集されていて、内容は理解できるが、どうも見ていてぎこちない。内容にもよるが画角やものの配置などを整えてまるでCMのように綺麗に編集されてしまうと私なんかは少し引いてしまう。あまり編集されてないどうでもいいような動画の方が見入ってしまう。

というのも、私は内容よりもシーンの隅に不為に現れる微妙な動きや、背景に映り込んでいる何か分からないなものに注意が向くからである。人がリアリティーを感じる時、得てしてそこには作為から逃れた出来事との遭遇がある。逆に言えば、昨今はリアリティーさえ作り込まれてしまっていて、現実の方が現実感が乏しいという状況が生まれている。嘘から出た誠の世界。現実と非現実が逆転しているとも言える。

しかし、やはり、人間は本当のことを知っていて、知らないふりをしている方が楽だからただそうしているのかもしれない。

というわけで、今朝は試しに家の中での作務の様子を動画で記録してみた。

カメラはミラーレスしかなく、三脚もない。椅子の上に箱を置いたりしながら適当に設置しての撮影。

家の中を掃く様子。ストーブに当たり、湯を沸かし、コーヒーを淹れる様子。ストーブにトーストを乗せて焼く様子など、30秒ほどのシーンを何本か撮ってみた。

例えば、反射式の石油ストーブは震災の時ドンキで5000円で買ったもので不格好だ。よく動画で見かけるおしゃれなアラジンなどではない。しかし不自由なく使え、長く使っているとこれはこれで味が出ている。フレームは少しひん曲がり、火を調節するつまみも破損しているが普段は気にはならない。

ストーブに乗っている鉄瓶は実家の物置から持ってきたもので多分ホームセンターあたりで買ったものだろう。錆びかけているが、手入れをすれば十分使える。
ペットボトルに残っていたミルクティーを、これもどっかからもらってきた白いミルクパンに入れ沸かす。このミルクパンもだいぶ年季が入り、傷だらけですぐにコゲつく。こないだ重曹で磨いてだいぶ綺麗になったすぐに茶色に焦げ付いてしまった。
100均で買った金網もいつ買ったのか覚えていないほど長く使っている。余った半分のトーストにチーズをを乗っけて焼く。ひっくり返すとき、乗せていたチーズをストーブの上に落として慌てて取り上げる。ペーパーパックのコーヒーをマグカップにセットしお湯を入れる。パックの縁の紙がカップに引っ掛かかりきれずに落ちそうになる。淹れ終わったコーヒーパックの置き場に困り、タラタラと雫を滴らせながら包んでいたビニールの上に置く。
しばしまどろむ。ラジオからはトップガンのテーマ曲デンジャーゾーンが流れくる。

言葉で書くとこのような事。つまりは、このストーブの前のひと時でも、撮って見ると不為に色んなんものが現れて見え面白いという事。そして、映像としては何の編集も説明もしないほうが面白さが増すという私見である。

と言う間に、昼になった。鉄瓶のお湯でどん兵衛でも食うかな。

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