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微かに学術的な記憶たち

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読んだ文献や学んだ事柄などについて簡単に書いた文章をまとめたものです。文章の内容に誤りや意見があればコメントください。
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記事一覧

食品廃棄物の排出権取引の理論について

地球温暖化問題は、世界各国で気候変動につながる重要な問題として認識されており、地球温暖化を抑制するための様々な取組みがなされている。地球温暖化の主たる原因は、化石燃料の燃焼によって放出された二酸化炭素を中心として大気中の温室効果ガスが増大していることであり、大気中の温室効果ガスを削減することは、地球温暖化対策として効果的であると考えられる。本記事では、大気中の温室効果ガス増大につながる要因として、食品廃棄物の量に注目し、食品廃棄物の排出量削減による温室効果ガス削減を目指す理論

温暖化の影響を受けるプランクトン

Nature, Volume 444 に掲載された『Plankton in a warmer world』という文献を読みました。 興味をもったことを簡単にまとめました。 導入Behrenfeld et al. (2016) は、およそ10年間分の衛星観測データを用いて、海洋表層温度の上昇によってバイオマスと基礎生産の減少が引き起こされたと分析した。 植物プランクトン 海洋表層で光合成を行う。 光や栄養塩などの利用可能性に依存して成長速度が決まる。 海洋循環と湧昇

全球凍結惑星の内部海

The Astrophysical Journal, Volume 680, Number 1 に掲載された『Snowball Planets as a Possible Type of Water-Rich Terrestrial Planet in Extrasolar Planetary Systems』という文献を読みました。 Abstract水を豊富に含んだ地球型惑星には、氷がない状態や部分的に氷に覆われた状態、全球的に氷に覆われた状態といった複数の気候モードがあ

環境の経済価値評価 #004(レポート作成)

経済学部科目の課題に取り組むためにはじめたシリーズだが、課題の提出締切が近づいてきたので、そろそろ、このシリーズも終わりである。野生動物保全に興味があったので、それに関連したテーマを採用することとした。 前回までの内容を踏まえてアンケート調査票を作成し、実際にアンケート調査を行った。 アンケート調査を行おうと思っていた日に雨が降ったり、体長不良になったりと運が悪かったので、残念ながらごく少数の回答しか得られなかった。課題内容としては、「(自分以外の)1名以上」から回答を得

環境の経済価値評価 #003(アンケート調査の実施)

日々の学習の休憩がてら、ChatGPTに質問をしてみた。 色々と回答してくれた。ついでに、仮想評価法(CVM)についても聞いてみた。 ということだったが、それらしき文献が見つかったものもある。 さて、本題に入る。前回は、アンケート調査票を作成するにあたって具体的に気をつけるべきことを確認した。 今回は、アンケート調査を実施するうえで気をつけるべきことを確認する。ただし、今回の課題に取り組むうえでは、今のところ、現地での調査を想定しているので、以下では、現地での調査の部

環境の経済価値評価 #002(アンケート調査票の作成)

前回は、アンケート調査を実施するにあたって、全体的な見通しを立てることが重要だという問題意識をもって、全体の流れやアンケート調査票作成前までの流れについて考えた。 今回は、実際にアンケート調査票を作成するにあたって必要なことや注意すべきことについて考える。前回に引き続き、以下の文献を読み進めた。 上記の『自然保護と利用のアンケート調査 公園管理・野生動物・観光のための社会調査ハンドブック』を読んでいき、その中で個人的に重要だと思った部分だけ記録している。そのため、詳しい内

環境の経済価値評価 #001(アンケート調査の準備)

経済学部の講義で、環境に関する独自のアンケート調査を作成し、結果をレポートにまとめよ、という旨の課題が課された。適当に取り組んでもよかったのだが、卒業論文を書かないし、学部生としての最後のレポートになる可能性があるので、それなりにしっかりと取り組むことにした。ただ、これまで一度もアンケート調査というものを行ったことがない。そこで、まずは、アンケート調査を行ううえで知っておくべきことや注意すべきこと、そもそもアンケート調査をどのようにして行うべきかについて知ろうと思い、以下の文

ガス惑星の構造と形成

日本惑星科学会が刊行する惑星科学専門誌『遊・星・人』の第31巻1号に掲載された『特集「新・惑星形成論」 木星・土星の最新の内部構造と形成シナリオ』という文献を読みました。以下に、その概要を簡単に書いてみようと思います。 文献: https://www.jstage.jst.go.jp/article/yuseijin/31/1/31_42/_article/-char/ja ――――― 1. 木星および土星木星と土星は、太陽系の惑星全体の質量の90%以上を占めており、水素

クレーター形成過程の物理学

東京大学出版会から1980年に発刊された『クレーターの科学』という文献の第3章「クレーター形成過程の物理学」を読みました。以下に、その概要を簡単に書いてみようと思います。 ――――― アメリカ航空宇宙局(NASA)のD.E. Gaultは、クレーター形成過程において、圧縮段階と掘削段階、変形段階の3つの段階に分けて考えることを提案した。 1. 圧縮段階隕石などの弾丸が地面などの標的に衝突すると、衝撃波が発生して弾丸の運動エネルギーが衝撃波のエネルギーに変換される。衝撃波

人類進化と料理について学習したこと

人類進化と料理について、学習したことを簡単にまとめてみました。 ――――― 料理の利点脳が機能するためには、他の器官と比べて多くのエネルギーを必要とする。つまり、脳容量が増加するためには、十分なエネルギー摂取を必要とし、脳容量と食性には密接な関係がある。現在、人類の脳容量の増加は、肉食が大きく影響していると考えられている。肉類は、植物類と比べて栄養豊富であり、特に、脳の発達に寄与するビタミンB群のナイアシンなどの重要な栄養を多く含んでいる。 しかし、霊長類は、生肉を常温で

アフリカの呪術

全学共通科目「文化人類学I」の講義で、アフリカにおける「呪術」の紹介がありました。呪術というものが実際に現地ではどのように認識されているのか、ということに少し興味をもったので、インターネット上で見つかった文献を読むことにしました。具体的には、アジア・アフリカ地域研究研究科の博士課程の学生だった井上真悠子さんが2008年に書いた「呪術師のところに行こう ―東アフリカ・ザンジバルの暮らしの中で―」を読みました。以下に、その概要と感想を簡単に書いてみようと思います。 文献: htt

大気圏と水圏について学習したこと

大気圏と水圏について、学習したことを簡単にまとめてみました。最後に、大気圏と水圏の相互作用によって発生する現象についてまとめました。 ――――― 1. 大気圏大気圏の物質的相互作用 地球型惑星の大気を比較した場合の地球大気の主な特徴は、酸素が約20%も存在することと二酸化炭素が約350ppmしか存在しないことである。このような大気組成は、大気圏以外の各サブシステムとの物質的相互作用によって生じている。大気に酸素が供給されなければ、大気中の酸素は、有機物や鉄といった海水中

心にとっての時間

科学論II(2020年度)の講義ノートです。それ以上ではないかもしれませんですが、それ以下である可能性は十分あります。 ――――― 1. 心と時間[1] 線運動錯視 線のような図形があたかも線を引かれたような運動をともなっているかのように見える錯視。「先行刺激の提示によってその付近の視覚処理が速められる」ことに基づいて発生すると考えられている。つまり、先に得た刺激付近の情報処理が速く行われるということである。脳というハードウェアや心理的な段階というソフトウェアのそれぞれ

暴走温室効果2

日本気象学会機関紙「天気」の第61巻(2014年発行)に掲載された「暴走温室状態」という文献を読みました。以下に、その概要を簡単に書いてみようと思います。 文献: https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2014/2014_08_0123.pdf ――――― 1. 惑星海洋の消失恒星放射の入射量が惑星大気の射出限界を超えると、暴走温室状態となり、暴走的な気温上昇と水蒸発が発生し、最終的に海洋が消失すると考えられる。近年では、系外惑星の環境推定におい