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人類は寝ぼけたままブレインテック災害へ突入する(のか?)

Humanity is sleepwalking into a neurotech disaster というFTのニュースから。

生理記録アプリを削除する女性たち

1973年に米国最高裁判所において「ロー対ウェイド判決」という判決が出されたことで、多くの州で中絶が合法化されることになります(それまでは重罪)。

しかしトランプ政権下で、米連邦最高裁判事の構成が「保守派5人 vs. リベラル派4人」と保守派が有利になったことで、「ロー対ウェイド判決」が覆されました。

これによって州によっては中絶が違法になり、その際に生理記録アプリをもとに罪に問われることを恐れた女性たちが、アプリを消すという事態が起きました。

ブレインテック(ニューロテック)データにおいても同様な不安(=データが不当に使われるということ)がないのか?というのが今回の記事の趣旨です。

※州政府が生理記録アプリを勝手に閲覧して住民を罪にという動きはありません

従業員の注意力や覚醒度を脳波で計測する企業

オーストラリアの企業は脳波計で従業員の「注意力」を計測して、疲労による事故を減らす取り組みをしています。MITもAttentivUという脳波(EEG)と眼電位(EOG)センサーつきのメガネを発表しており、ユーザーの注意力が低下した時に、音声や触覚によってフィードバックをする仕組みになっています。

この話題の震源地は Nita A. Farahany氏

従業員に対する脳監視の話は先日のダボス会議でもありました。ダボス会議で話されて、Financial Timesにも出て、そしてHarvard Business Reviewにも同様の記事があります。

これは世界中で流れが来ている…と思ったら違いました。ダボスでのプレゼンはNita A. Farahany氏が行いましたが、FTの記事にもNita A. Farahany氏の名前が登場します(おそらくダボスのプレゼンにInspireされて記事を書いている)。そしてHBRの記事はNita A. Farahany氏自信が執筆していました。

脳活動から従業員の思考を読み取られる危険性

Nita A. Farahany氏はFTの記事で「アルゴリズムは、脳の活動から、私たちが感じていること、見ていること、想像していること、考えていることに変換する能力が向上している」と警告しています。

残念ながら脳波から思考を読み取るのは至難の業

頭皮の上から計測している脳波から「やっぱり今年中には会社を辞めて起業しようかな」などという複雑な思考を読み取ることは不可能です。

侵襲的な技術、頭蓋骨に穴を開けて脳に剣山のような電極を刺して計測する、非常に精度の高い技術でも思考を読み取ることはできません。脳の信号からタイピングしている動画がありますが、あれは「文字を書く」であったり「言葉を話す(筋肉を動かすイメージを持つ)」という脳活動をデコードして文字にしているのであって、その人がぼんやりと考えている「思考」をデコードして文字にしているわけでありません。

侵襲的な技術よりも精度が低い、頭皮の上から計測する脳波から思考を読み取るのは不可能です。

しかし、脳波によって睡眠ステージを推定したり、画面に写ってるもの(=広告や商品)に対して、その人が関心があるかどうかをある程度の精度で推定する、など応用できることがたくさんあるのも事実です。

【龍成メモ】

現状で言うと脳波よりも、会社によってメールの内容やスマフォ位置情報による行動履歴、そしてウェアラブルデバイスから得られる生体データを解析される方がよほど怖いと思います。

ただし、近未来的な観点でのNita A. Farahanyの指摘は面白いので、彼女の新著 The Battle for Your Brain は気になるところです。

話は変わりますが、弊社neumoでは専門的なレポートも出していますので、ご興味のある方は是非お問い合わせください。

#ブレインテック #BMI #脳波 #イーロンマスク

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