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イカゲームとショーペンハウアーの振り子

※イカゲームのネタバレを含むので、これから観る方は読まない方がいいです

食わず嫌いだったイカゲームをようやく観る

イカゲームという韓国ドラマが大ヒットしましたが、話題になってる当時はカイジのパクりのような気がしてしまい、食わす嫌いでいました。

「イカゲームを観たけど、やはり段違いに面白かった」と友人がFacebookに投稿していたので、さすがにそろそろかな…と思うに至り、ようやくイカゲームを観ました。

イカゲームのあらすじ

あらすじというほどのあらすじは書けませんし、本当に面白いドラマなので、まだ観てない人は是非イカゲームを観てから、再度このnoteを読んで頂けると嬉しいです。

お金に困った人々が一つの場所に集められ、大金を稼得するために競い合う

借金や横領などをして究極的にお金に困った人々が集められて競い合い、最後まで勝ち抜いた者は大金を得られるという、構図としては「カイジ」そのものです。

高齢の母のもとで暮らす主人公にもゲームへの参加依頼が来る

主人公のソン・ギフン47歳は、多額の借金を抱えており、高齢の母親の家に居候しています。母親からお金をもらったり借りたり、またATMカードから無断で引き出したお金でギャンブルに明け暮れています。

そんな彼のもとに他の参加者同様、競技の主催者から参加依頼が来ます(依頼のしかたも手が混んでいて面白いですが、長くなってしまうので割愛します)。

脱落したら〇〇されるゲーム

イカゲームとカイジの違いはいくつもありますが、大きな違いはイカゲームは脱落するとその場で殺されてしまうということです。

カイジの場合、遠洋漁業に連れて行かれたり、地下に閉じ込められて強制労働をさせられますが、すぐに命を奪われることはありません(危険度の高い競技で命を落とすことはありますが)。

日本でも馴染みのある遊びばかり

456人の参加者は、だるまさんが転んだ、カタヌキ、綱引き、ビー玉遊び、ガラス渡り、イカゲームの6つの競技を行います。

日韓併合による日本の植民地時代があるため、映画に出てくる競技のほとんどが日本から渡った遊びなのは驚きました。

ちなみにガラス渡りも、カイジに出てくる鉄骨渡り(そして最後にガラスの階段がある)にInspireされたのかな?と思いました。

韓国映画の伝統、壮大な伏線回収

いくつも伏線を貼っておいて、それを徐々に、そして最後に大ドンデン返しで回収する様は、The 韓国映画です。見応えがあります。

日本漫画が原作になってるオールドボーイも伏線の回収が見事でしたが、イカゲームも負けず劣らずの伏線回収です。

最も大きな伏線、参加番号001番のおじいさん

456人の参加者の中に、脳に腫瘍があり認知症もわずらっているおじいさんが登場します。参加者番号は001番です。ちなみにギフンは456番で最も遅い番号です。

おじいさんは4番目の競技、ビー玉遊びでギフンに自分のビー玉を譲り、脱落してしまいます(2人1組ペアになり、相手のビー玉を全て獲得したほうが生き残るゲーム)。

主人公のギフンが最後ただ1人生き残り約46億円を手にするが…

各競技では1人脱落するごとに1億ウォンが積み立てられます。

6つの競技を終えて最後、ギフンのみが生き残り、456人✖️1億ウォン=456億ウォン(約46億円)を手にします。

ギフンはゲームを通して仲良くなかった仲間を失い、たまたま一緒に参加していた旧友も失い、久しぶりに帰宅したところ、母親も床で冷たくなっていました。

彼は大金を手にしたにも関わらず、お金と交換に生きる希望のほとんどを失い、廃人同然の状態で過ごすことになります。

老婆の花に潜むカード

大金を手に入れたにも関わらず、ギフンは全くそれに手をつけないためホームレス状態です。

夜中に川辺に座って川をながめながらお酒を飲んでいたギフンに、老婆が「花を買ってくれないか」と声をかけます。

ギフンは言われるがままに花を買います。

その花にはメッセージカードがついていました。

カードを見ると、イカゲームに誘われた時と同じデザインのカード(そして今度のカードは豪華)が入っています。

メッセージには「12月24日午後11時30分、スカイビル7階。カンブより」とあります。

黒幕が語る「金を持つ者と持たざる者」との共通点


招待カードの指示に従いビルに行くと、広くて暗い部屋の窓際に病院にあるベットがあり、呼吸器をつけた病人が寝ています。

病人の横顔を見てギフンは驚きます。

そう、その病院は一緒にゲームに参加し、ビー玉競技で脱落してしまった老人だったのです。

人生がつまらない

なぜあのような競技をしたのかと、ギフンは老人に尋ねます。老人は賭けに勝てば応えてやると言います。

しかし、賭けが終わる前に、そのヒントとなる問いを、老人はギフンに行います。

「金が全くない者と、金が多すぎる者との共通点は、なんだか分かるか?」

「人生がつまらないということだ。金があり余ってる者は、何を買ったり食べたり飲んだりしても、結局はつまらなくなってしまう。」

「いつからか、私の顧客たちがこう言うようになった。楽しいと思えることが、もうなくなってしまったと。」

クリスマスの訪れを知らせる0時の鐘とともに、おじいさんは息を引き取ります。

苦痛と退屈が、人間の幸福にとっての二大敵手

哲学者ショーペンハウアーは、人間の幸福にとって最大の敵は「苦痛」と「退屈」であると定義し、「下層階級の人々はたえず困苦と、つまり苦痛と戦い、裕福な上流階級の人々は年中、退屈を敵にまわして、しばしば誠に絶望的な戦いをしている」と言っています。

人間は「苦痛と退屈」という2つの間を振り子のように行き来し「一方からうまく遠ざかっても、もう一方の近づいてしまう」とも言ってます。

イカゲームで大金持ちのおじいさんが言ってることは、このショーペンハウアーの幸福を阻む二大敵手の定義に通ずる話です。

【龍成メモ(おじいさんは主人公の父親?)】

ネット上には、この黒幕のおじいさんがギフンの父親ではないか?という考察があります。

その根拠の一つが、ビー玉競技をしている時におじいさんが「私の息子の誕生日は24日なんだ」というシーンがあるからです(ネット上では誕生日が近いと解釈されてます)。

ただ、ギフンの誕生日は4月26日です。これは最初のATMのシーンで「母親のATMカードの暗証番号は自分誕生日のはず」と言って暗証番号を打ち込むシーンで分かります。

また、ネット上で競技をしている時期を4月と考えている人が多いため、上記が4月24日ということになってますが、ギフンが娘の誕生日(6月8日)を祝ったあとに競技が開始されているので、おそらくおじいさんの息子の誕生日は6月24日です。

4月26日と6月24日なので、誕生日は全く一致しません。

しかし、ここで2つの疑問がわきます。

  • おじいさんは黒幕であることを隠すために、ボケてるフリをしながら競技に参加している。特にビー玉ゲームの時は「認知症のフリ」が最高潮に達していた。ボケてるフリを貫くのであれば、息子の誕生日をそのまま口にするのはおかしい

  • 仮にギフンが息子だとした場合、息子の誕生日をそのまま伝えてしまったらバレてしまうので、やはり誕生日をそのまま口にはできない

つまり、上記2つの理由からおじいさんは、息子の本当の誕生日を口にすることはできません。ちなみに426を逆さに読むと624です。

本当の誕生日逆さから読むことで「息子の誕生日は6月24日」と言ったのかもしれません。

そう仮定すると、二人が親子である確率が少し高くなります。

#イカゲーム #イルナム #ギフン #誕生日


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