おれのうまれたまち

おれのうまれたまちに帰ってきた。
思いのほか、山が近くにあった。
こんなに近かったっけ?
山が近い町は閉塞感に溢れているものだ。
少年の頃はそれに気づかずにいたんだろう。
片町線の終着駅が世界の端だと信じていた時期が俺にもありました。
全くしゃべらない運転手のタクシーで向かった先の病院で、全くしゃべらなくなったオトンの手を握ったら、腹が減った。
病院のとなりのコメダコーヒーに立ち寄った。
美しい山が近くにある落ち着いた店内に腰をおろすと、いいところだなぁと思えてくる。
だけど、この町には俺をばかにするやつがウロウロしてるんだ。
用心せねばなるまい。
近くのテーブルで頭がつるつるの、いかにもこの町の名物品の、ブルーカラー労働者風の男が「同士少女よ敵を撃て」を読んでいた。
時おり何かに感じ入って、表情を歪めている。
馬鹿の象徴のような大きな裸足の足をほっぽりだしてだよ?
もうこの町の知性の輝きとしか言いようがないじゃないか。

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