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2020.5.12 あの飲みはオレンジ色をしている。

いちばんいい飲みの思い出はオレンジ色をしている。光源が照明の色なのか、人々の表情なのか、酒の味なのかはわからない。

けれども、思い出すあの酒場は、オレンジ色をしている。群青色を勝手に背負って店に入るわたしを平手で包む。虚空を見つめる。一言かわす。二言かわす。虚空がひび割れて、あたりがオレンジ色にかわる。誰かがかえているのか、なぜだかかわるのかは、誰にもわからない。

憂いが清算される。一杯目のとっくりか、お猪口か、そこらへんが持っていったのだ。憂い―欲の成れの果て、湿った予期、実現しなさが妙に魅力的な一夜の夢―は酒によく溶ける。酒は憂いを、よく溶かす。

憂いはブルーであるというのは世迷い言なのかもしれない。憂いは、今宵まさにオレンジの色をしていた。ため息をつくのだ。黄金色のため息をつくのだ。オレンジ色に憂いを混ぜて、黄金色の。

―ゆえに酒場は今日まであり続けた!

オレンジ色のともし火を胸にくべる。
オレンジ色の時をひとは求める。

あの飲みは、オレンジ色をしていた。している。

しているだろう?

わかるかい?

酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。