見出し画像

映画感想 『aftersun/アフターサン』

 名作になるには一歩及ばずかなというのが率直な感想です。察して系の映画で、シンプルに見えるようで暗喩、比喩的な表現が多いです。それらの説明はほぼありませんが、それを理解しなくても楽しめることを意識した作りにもなっており、映画的な表現テクニックが抜群にうまいなと思いました。

 初期のジャームッシュやハートリーの作風に70年代のアメリカンニューシネマ的なふりかけをしたものというか、ハートリーの映画の皮を被ったジャームッシュの映画に、アメリカンニューシネマ風味の粉を入れてシャカシャカポテトにしたという印象です。

 また、この時期(タイミング)にしか撮れないであろう映画で、ノスタルジックな物語を表面に塗布し、切なさの調味料をまぶすことで、狭間で踠く年頃の視点からのセンシティブな題材を狂おしいまでに美しい様に見せることについて、上手に料理していると思います。

 鑑賞中、イーグルスの名曲「ホテル・カリフォルニア」を思い起こしていました。あのホテルに一時でも滞在したとしたらこんな感じなのだろうかと思い耽りました。

 私が若ければ、ジャームッシュが大好きになった二十歳前後の頃に本作に出会えたとしたら、もしかしたらオールタイムフェイバリットな映画になっていたかもしれません。ただ、年老いた今の私の感性では付いていくのも気力と体力が必要な映画であったのも事実です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?