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思うこと:原作ありのドラマ化・映画化

 あるTVドラマの原作者が自ら脚本を担当した件についてニュースになっていました。私はこのドラマは見たことはないのですが(原作も未読)、原作ありのものをドラマ化・映画化するにあたって、媒体によって表現方法が異なるため、それに合わせたアレンジが必要だということは重々承知ですが、あまりにも原作を蔑ろにしていることも多いような気がしますので、ちょっと自分の考えを整理する意味でも書いてみます。

 今回の件については、原作者側の言い分が正しく事実であれば、そもそも原作をかなり忠実にトレースすることが最初から求められているので、TVドラマ化にあたり表現等のアレンジは必要だといっても、原作から大きく逸脱してはいけないでしょうし、その逸脱の範囲を決めるのは原作者しかいません。TVドラマのプロデューサーでもディレクターでも脚本家でも出演者でもなく、ましてや視聴者でもありません。

 ドラマ化の許諾にあたり、その旨を事前にハッキリと伝えており、それを受け入れてTVドラマ化したのなら、TVドラマが原作者の意向に沿わないものになっているとすれば、TVドラマ製作陣が原作及び原作者に対して敬意を払っていない証左となります(原作に対する愛もないということですねw)。TVドラマが例え面白くても、です。

 TVドラマ製作陣が好きなようにやりたいのであれば、オリジナルで作るのが一番いいでしょう。どうしてそれをしないのかの商業的な理由は分かりますが、それに逃げてばかりでは業界としてのレベルアップは厳しいでしょう。

 TVドラマにしても映画にしても、原作はあくまでも土台だという認識でしかいない製作者が多いように思えます。原作者側がそれを許諾していれば問題はありませんが、そうでなければ問題しかないでしょう。

 原作者側とTVドラマ側のコラボだという意見も見ましたが、コラボはどちらもしっかりと商品又は作品として確立されている同士が連携、連動して行うもので、今回の場合だとドラマの脚本家が人気の方ということで、その方がどうアレンジするのかという部分がコラボ要素にあたるといえるのかもとは思いますが、TVドラマ化における許諾の出発点からがそういう性質ではないので、コラボとするには少々乱暴だと考えます。

 オリジネーター・クリエイターとアレンジャーは性質が異なります。どちらが上とか下ではなく、やることや求められることが異なるのです。今回の場合は、原作者側はオリジネーター・クリエイターで、TVドラマ製作側はアレンジャーの役割が求められていたのですから、オリジネーター・クリエイターの領域侵犯をしてしまってはハレーションが起こるのは当然でしょうし、それを理解できないのならプロとしてどうなのかと疑問が残ります。TVドラマ製作側がしっかりと仕事をしていなかったということです。

 こういった場合、往々にして原作者がTVドラマ化されたものや映画化されたものを受け入れる度量が何故か求められてしまいますが、それもハラスメントにあたるような思考ではないかと考えます。

 作家性を発揮する一番の方法は、オリジナルで作ることでしょう。今回の場合で言えば、オリジナルでのTVドラマを作ることです。他人の褌で相撲を取るといった今回のような場合、TV製作者側に求められるのはアレンジャーとしての役割です。原作者側の土俵に入らないといけないのです。

 原作を改変して、改変した側の人が責任を取るとか発言したりする場合もありますが、この場合の責任とは、原作者と同等のリスクと損害を享受し、改変に伴う影響を最低限に抑えることで、それが社会通念上妥当な対応だと認められてこそ責任を取ったと言えるでしょうけど、そこまでした人っていないですよね。結局、責任を取るという言葉に酔いしれて、責任から逃げているだけの人が多いのでしょうね。

 原作は原作、TVドラマはTVドラマと分けて考えろという意見は理解はできますが、これも恐ろしい押し付けとも言えます。他人の作った物を自分の物だと言い張るのと似たように感じます。脚本家の方は原作者が口出して云々と言われているようですが、それは当然のことだと受け入れないといけないでしょう。それが嫌なら自分で原作を書きましょう。としか言えません。

 確かに、原作ありでも原作から逸脱しているのに結果的に面白いというものも沢山あります。ただ、「面白ければなんでもいい(何をしてもいい)」というのは、物凄く恐ろしい言葉であり思想です。見つめ直すのにいい機会なのかもしれません。

※追記
2024年1月29日、原作者の方が自殺されたとの報道がありました。お悔やみ申し上げます。
今後、こういったことが起きないよう、原作や原作者に対する敬意はしっかりと持って、原作を改変してもいいという意識からの変革を求めたいものです。

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