『どうせ死ぬんだから。』

朝の10時頃に目覚め、スマートフォンを確認する。その画面に映るメッセージ。

「13時に川崎駅に集合で!」

前日の夜中2時頃に明日は12時に集合しようねとLINEを送って「OK!」とスタンプが返ってきていたとは思うが、何かがあったんだろうと(勝手に)察して、ベッドから起き上がりティファールにお水を注ぎスイッチを入れる。

ティファールからぴんぷろりんと音がなった。お湯が出来上がった合図だ。それを聞いた僕は最近購入したドリッパーに珈琲の粉を入れ、自家製の珈琲を作りながら外出の支度をする。

色々と準備をしていると時計の針が12時を回っていた。マズい!と思って慌てて家を飛び出た。

電車に乗り込み、Bluetoothイヤホンをセットする。最近の僕はひたすらスティンガーのEnglishman in new yorkを鬼リピートして聞いている。曲が終盤に差し掛かるとすかさず曲の頭に戻るスタイルだ。お気に入りはとことん味わうのが僕のスタンスだ。

13j友人は川崎のマクドナルドで待機していると連絡を受けていたので、川崎ミューザ店寄りの1Fにあるマクドナルドに行くと、窓際に彼はいた。

「ごめんね、遅くなった」
「おう」
「今日これから熱海、行くよね?」
「熱海!?」

衝撃だった。認識の相違が発生していたのだ。

「LINEしたやん」
「見てないもん」

見ろよ。

「あ、ほんとだ。書いてあるね」
「でしょ?」
「でもこれから熱海は遠くない?」
「・・・」

ということで別の温泉を探すことになり、状況は飛んで横須賀にある湯楽の里に行ってきた。

道中はやはり電車小旅行でもあるので、駅弁!かと思いきやミスタードーナッツで3個ドーナッツを購入して、僕一人でもぐもぐと食べながら向かった。

京急本線の馬堀海岸駅が最寄り駅のため、川崎駅からは1時間程度で到着した。馬堀海岸駅は人がいなくて本当にここに湯楽の里はあるのか!?と疑心暗鬼だった両者だったが、トボトボと歩いているとそこには里があった。徒歩12分のところだ。

到着後、すぐに食堂に向かった。目的は一つ、アルコール飲料の摂取である。そこまでアルコール依存症ではないのだが、三連休の初日であるので初日からテンションぶち上げPONPON状態になっていたいと思ったのだ。

「カンパ~イ!」

夕方から飲むビールはやはり美味しかった。3貫のお寿司とビールを飲んでしばらく休息していたためか、お風呂に入ったのは16時30分頃になっていた。

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お風呂に浸かり、目の前に広がるのは絶景のオーシャンビューだった。室内風呂からもサウナからも東京湾は見える。

なぜだろう。人は海を見ると心が研ぎ澄まされた気持ちになる。広大すぎてあまりにも自分がちっぽけな存在のような気になるのだ。

何者かになりたい自分、努力すればなれそうな自分がいるわけだが、その大きさを前にするとひれ伏さざる得なくなる。仮に東京湾に飛び込み、目の前に見える孤島に泳いでいけるように思えたとしても実際やってみると(勿論やってないが)想像の数百分の一程度しか近づけていないことに気付くのだ。

この理想と現実の差はとてつもなく恐ろしいことに、サウナに入りながら僕は気付いてしまった。そして思ったのだ。

「どうせいつか死ぬんだから、悩む時間が無駄だな」と。

どうせいつか死ぬんだから、いっぱい恥かいてもいい。
どうせいつか死ぬんだから、嫌なことはしなくていい。
どうせいつか死ぬんだから、したいことをたくさんすべき。
どうせいつか死ぬんだから、いろんな人にもっと積極的に会おう。
どうせいつか死ぬんだから、恥ずかしがってる場合ではない。

温泉に入っていると、いろいろなことが整理されるんだけど、その内容をすぐにメモすることができないのが悔しい。

そして僕らはサウナ12分と水風呂3分を5ターンくらい繰り返して風呂場を後にした。

「プハー!」

僕らは風呂上がりにまたしてもビールを飲んでいる。このビールは休息のためではなく、ご飯のお供として飲んでいるのだ。

ご飯を食べながら、お互いの仕事のことや家族のこと社会情勢で大学時代の友人のその後について語り合った。

僕らには共通の友人が一人いたのだが、突然弁護士になるといって会社を辞め、Facebookも辞め、さらにLINEからも消えた。連絡を取ろうにも連絡先を知らないからコンタクトすらできなくなってしまった。

きっと、何か自分の人生に対して思うところが変わったんだろうと察する。

平坦に生きるより、熱く野望を達して死んでいった方が絶対いい。


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