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W0NDER CUP2023に見る「つながりの可能性」ーワクワクがもたらすeスポーツの価値

「地上300mの高層ビル内でも、eスポーツならサッカーもできる!」

これは大会当日、MCとして熱く会場を盛り上げてくれたユナイテッドメンバーの言葉だ。

今回は西日本を中心に4つの地域に拠点を構える就労支援B型事業所:『ワンダーフレンズ』の皆さんと車椅子eサッカーチーム『ePARAユナイテッド』とのeスポーツ交流プロジェクト「WONDER CUP 2023」の軌跡を、8月19日に開催したオフライン交流イベントの様子を中心にお届けする。

WONDER CUP 2023 の目的

本プロジェクトの目的はなんといっても「サッカーゲームをきっかけとした新たな交流の機会を創出する」ことであった。
それは間違いなく、勝敗以上に大切なもの。

①eスポーツを通じて持続可能な「わくわく」を創造する。
 -夢中になれる活動・舞台の提供

②他事業所の仲間や別のフィールドでも活躍する人との交流の場をつくる。
 -「ePARAユナイテッド」との交流を通じて他事務所の同志、仲間を増やす

【WONDER CUP 2023 概要】

そのために企画されたのが「WONDER CUP 2023」というわけだ。

ワンダーフレンズ×ePARAユナイテッド 本番に向けた関わりの軌跡

現地ePARAスタッフ集合写真
当日はePARAが誇る多様なチャレンジユニット「fortia」の関西有志メンバーも応援に駆けつけた

「選手全員が車椅子ユーザーのeサッカーチーム」ePARAユナイテッドと、「事業所内で日頃からeスポーツに勤しむ」ワンダーフレンズの皆さんとの関わりが始まったのは今年の5月。以来3ヶ月の間、毎月オンラインも交えて練習を重ねてきた。

初対面でも気兼ねなく、喜怒哀楽を表現できる。これもまた、eスポーツの醍醐味!
(金沢)

また、その合間を縫ってキャプテンとりちゃんと私アフロは、今回ご一緒させていただく大阪・金沢の事業所を実際に訪問。現地の熱気を感じつつ、ともにプレイすることで交流を深めた。

ゲームと髪型をきっかけに意気投合した2人。
2回目の再会となった本番では2人で見事にシンクロ!(大阪)


そんなわけで、すべては「WONDER CUP 2023」を一緒になって盛り上げるため。サッカーゲームというコンテンツを使って、言葉によるコミュニケーション以上の交流を生み出すこと。
こうした取り組みによって、単発の関わりでは決して生み出すことができないでは「何か」が生まれ、そこに関わった当人たちの言葉で実際に起きた”化学反応”を伝えてもらうことができたら。
その意義や価値は何倍にもなるだろうし、私たちと同じような境遇にいる方々にとっても大きな励みとなるに違いない。

現地に到着し最終打ち合わせを行うePARA代表の加藤大貴、
キャプテンとりちゃん(写真左)、みぽりん(同右)。


かくして、現地でそれぞれ1度ずつ、オンラインでは(平均)月1ペースで4度の練習を重ねた他、ワンダーフレンズの皆さんは各事業所で、ユナイテッドは変わらず週2の激しいトレーニングをこなし、いよいよ当日を迎えた。

それではここから、満を持して迎えた本番。舞台は天王寺、あべのハルカス29Fのオフィスの一角を貸し切って行われた「WONDER CUP 2023」の様子をご覧いただくことにしよう。

WONDER CUP 当日も関東からオンラインで参加してくれた、はる のX(旧Twitter)より。


オンラインとオフラインの融合ー当日の風景ー

8月19日。現地大阪は照りつける太陽が絶景を演出する中、天王寺の事業所からは9名、金沢からも9名の皆さんが参加。
さらに、その後ろにはたくさんの応援団もスタンバイ。モニター越しでもその熱気が伝わってくる。
そして、ユナイテッドからは努力の天才:片手プレイヤーはる と、普段は特別支援学校の先生として、多様な特性を持つ生徒たちと向き合うコーチのやまちゃんがスペシャル参加。

このまたとない企画を現地から盛り上げるのは、先日のファン感でも大いに会場を盛り上げた名物MC、ePARAユナイテッド所属のみぽりんと、誰よりも戦術の研究を欠かさないユナイテッドキャプテンのとりちゃん。
私アフロはオンラインメンバーと同じく、現地からプレイヤーとして参加した。


アフロの眼下にはあべのハルカス29階からの大阪の絶景が広がる。


いつもは事業所内で慣れ親しんだ仲間と練習を続けてきたワンダーフレンズの皆さんにとって、いつもとは違う会場やメンバー、カメラやマイクも相まった雰囲気に、戸惑っていた方が多かったように見受けられた。
事実、試合を始める前は皆一様に硬い表情だったのだから。

プレイを待つスタイルは人それぞれ。食い入るように画面を見つめる者、遠くから様子をうかがう者、気心の知れた仲間と話し込む者。
その様子が筆者には、それぞれがリラックス方法を探しているようにも見えた。

それがどうだろう。試合が進み熱気が高まるにつれ、MCもプレイヤーも関係なく、会場一体に笑顔の輪が広がっていった。

編集後記ー今大会は何をもたらしたのかー

本番直後、現地スタッフに見学者も交えての反省会。ワンダーフレンズの職員の方からこんな言葉が飛び出した。

「あの利用者さんは普段はあまり喋らないんですが、ゲーム(サッカー)をやっている時だけ『ウォー!』って声を上げるんです」

また、間近で撮影を担当していたカメラマンからは
「〇〇さんは△△さんが近くに来ると凄くいい笑顔になる」との声が。


マスク姿で普段はあまり表情を出さない彼も、親友が近づくととびきりの笑顔を見せる。


本番を終えて物思いにふけるキャプテン。


2度目の再会となった今回も熱い抱擁で迎えてくれた大阪の”リアルアフロ”を、とりちゃんも優しく見守る。

今大会が何をもたらしたかを、一言で端的に表現することは難しい。ワンダーフレンズを利用する方々にとってプラスになっているのかを直接ヒアリングしたわけでもないし、もしかしたらすぐには分からないことかもしれない、とも思う。

けれど、確かに耳にした言葉もある。

「楽しかった!」

今回、縁あって就労支援B型事業所「ワンダーフレンズ」の皆さんと交流する機会をいただいて思ったことがある。

それは「外に目を向ける大切さ」。
当然ながら、利用者の皆さんが過ごす世界は事業所の中だけではない。家に帰ればそれぞれの生活が、事業所を巣立てばさらに新しい世界が待っている。
だからこそ今回、そこで働く職員の皆さんが事業所の外に目を向け私たちとの交流に可能性を見出して下さったことに、大きな可能性を感じずにはいられない。

オンラインで物理的な距離を、オフラインで心の距離をさらに埋めることができた今回の交流。
単発ではなく継続的に関わってきたからこそ、ePARAユナイテッドにとっては、「自分たちの活動が誰かの笑顔につながる」という確信を持てたことが大きな収穫。


社会との繋がりを得るための、言葉だけではない確かな選択肢。

オンラインで、そしてリアルで。
私たちはこれからも、「本気で遊んだ先の景色」をともに追い続けていく。


同い年の3人とテクニカルスタッフ、サポートメンバーとワンダーフレンズ職員の皆さんも一緒に。


(文:アフロ/ePARAユナイテッド所属、CB,#4)

Photo by  方司音

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