ユニバーサルキャンプin八丈島レポート2018 ~前編~

今年も3年連続で『ユニバーサルキャンプin八丈島』に参加してきました!

イベントを起草してから15年、今年で14回目を迎える本イベントは各地から多様な人たちが集い、キャンプ場での2泊3日という”非日常”を通して、互いが持つ多様性に寄り添い、理解を深めていきます。

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行きは船で11時間かけて現地入りするのが毎年の恒例。

昨年からはキャンプ参加者とともにヘルパーを付けずに参加しています。

(撮影がヘタで脚が映り込んでいるのは、ご愛敬 笑)

1年目は1班「1ダフル」 2年目2班で「オムライス」 3年目の今年は3班で「13匹の子ぶた」

徐々に数を増やしていってます! たまたまです、はい^^

3班であることはもちろん、島の福祉作業所の方も含めて、いわゆる「生活班」の人数が13名だったことからこの名前になりました。

写真は今年の「気付きのフラッグ」

3日間を通して感じたたくさんの気付きや変化が書かれているのですが、ここに至るまでには色々なことがありました。

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ウチの班には本当に色々な特性・境遇の人がいて、最初はなかなかうまくコミュニケーションを取ることができませんでした。

この文章を書きながら気付きましたが、電動車椅子ユーザーである僕こそ「気付かれやすい」障害でしたが、メンバーは皆、「気付かれにくい」障害を持っていました。

まったく聞こえない人、見えにくさと聞こえにくさを併せ持った人、一見まったく分からない精神疾患を持っている人、参加者最年長の人、実は食事に制限がある内部障害を持っている人、そして、「このような人たちとこんなに深く関わったことがない(=知らない)」ことが障害になっていると思われる人…。

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その一方で、ウチの班にはありがたいことに、健聴で手話通訳ができる人がいました。

しかし、そのことが自分を含めた皆に「甘え」を生じさせていたのかもしれません。

活動プログラムも、ご飯の時間でも皆、通訳を期待して彼女に向かって(見ながら)話してしまっていた1日目の午前・午後。

僕は自分を戒めながら、頭の中で必死に手話や筆談に変わる共通のコミュニケーション方法を模索していました。

自分にとって手話は動きの制約で、筆談は(プログラムが盛りだくさんのキャンプでは)時間の都合で適さないと考え、口話に活路を見出そうと決めました。

そしてその日の夕方、夕食作りプログラムが始まる前に彼女に伝えたのです。

「活動プログラムでは僕も通訳をお願いしてしまうかもしれない。

でも、僕としてはせめてご飯の時間くらいはゆっくりしてほしい。

ずっと通訳をしなくてもいい方法を一緒に考えるし、『ご飯の時に聞こえにくい人とコミュニケーションを取る時には、話したい人が自分で工夫する意識を持ってほしい』と僕から伝えるよ」と。

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実は彼女の発案で、その日の午後には自らリーダーと相談し、ホワイトボードに「ろう者と話し合う時」の方法を見える化していました。

それでも、夕食づくりのプログラム中はまだまだ会話が弾んでいるとは言えず、僕自身も「包丁は危ないよね?」といった具合に必要以上に心配されていると感じていました。

密かに「明日はどうしようか…」と考えていたその日の夜、1日中ずっと通訳をしてくれていた彼女に呼び止められました。

「今日はありがとうございました!」と告げられ、思わず「何が?」と返答してしまいました。

お礼を言わなければいけないのは、状況に気付いていながら何もできていない僕のほうだと思ったから。

「1日通訳をしてくれてありがとう。本当に優しいよね。

でも、ご飯くらいはゆっくり食べてほしいから、皆にプログラム中以外は話したい人が自分でコミュニケーション方法を考えて工夫してもらえるように、僕から伝えるよ!」と約束したのです。

すると、こんな答えが返ってきました。


「『優しい』って何ですかね?

私は普段から健聴の子とろう者の子がコミュニケーションを取る時、通訳をすることがあるんです。

すると、みんなが『優しいね』『すごいね!』と言うんです。

私は当たり前に通訳をしているだけなのに…」

頷く僕に、堰をきったように続けます。

「今日もみんなが私ばかり見て会話をしようとしちゃう。

話しているのは『聞こえない人』なのに」

「私はまだまだ手話を学び始めた『見習いのようなもの』なんです。

でも、みんなに私の言っていることを『すべて正しい』と思われてしまうことが怖いんです…」

「そして何より、好きで学び始めた手話が、いつの間にか『私がやらなきゃ!』という義務感、偽善感、『やってあげたんだ!』という自己満足に変わってしまうのが嫌だし、手話を嫌いになりたくない」

彼女の訴えに、僕は心から反省しました。

なんて視野が広い子なんだろう。

「自分だったら得意分野を自慢して、すぐに活かしたくなっちゃうよ」

時間にしてわずか5分。自分の正直な気持ちとともに、意を決して想いを吐露してくれたことに対する感謝を伝えました。

解決策は見えずとも、明日はきっと良くなるー。

未来への希望が差した夜でした。

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