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島での出会いが教えてくれたこと

 本当なら来月も赴く季節。残念ながら2年連続で中止となりましたが、4年前に感じた感動を今度は主体となって届けるべく、現在は協会の理事として活動しています。

 この記事のベースは3年前に書いたものですが、来年こそまた、新たな1ページを紡ぐことができることを願って来月はこのテーマでイベントを実施します。

 今も変わらない、私の”新しい1歩”を後押しした3日間をまとめてみました。

人生を変えたユニバーサルキャンプ

 2016年9月、離島である八丈島へは船で向かいました。片道11時間余り、長旅の末の初上陸に若干緊張もしていたのですが、そこには同じ東京都都内とは思えないほど、のどかな時間が流れていました。
 目的は、ユニバーサルキャンプに参加すること。『NPO法人ユニバーサルイベント協会』が主催する毎年恒例の「ユニバーサルキャンプin八丈島」は2005年からスタートし、この時すでに12回を数える夏の風物詩となっていました。同年には、長年のこうした取り組みが評価され「第2回 JACEイベントアワード」(主催:一般社団法人 日本イベント産業振興協会)において『多様性体感賞』も受賞しています。

今も変わらない、キャンプのコンセプト

「ダイバーシティ(diversity)の考え方に立ち、年齢や障がいの有無に関わらず、参加者へ、そして社会全体へ向けて、「みんなが一緒にいきいきと暮らせる社会(ユニバーサル環境)への意識を喚起し、そうした行動を身につけることによってその普及発展を促進させていくこと」が、ユニバーサルキャンプの大きな狙いです。
 そのため、豊かな自然の中でのキャンプという日常生活より少し不便な環境を味わいます。そんな体験を通して、誰もが自身のできることやできないことに気づくとともに、互いが対等な関係で協力しながらサポートし合うことによって、1人ひとりが尊厳を持つ対等な関係としての自立・自律を目指すとともに、その輪を広げてゆく」ことを目的に行われています。
2015年冬に参加した知人主催のイベントで、私はたまたまその存在を知ることができました。そして運命の出会いから約1年後、満を持して参加した2泊3日は、多くの宝物を与えてくれたのです。

工夫がいっぱいの「キャンププログラム」

 そのプログラムは、各班がそれぞれのブースに分かれて行う(車椅子体験やアイマスク体験、口話伝言ゲームなどの)「きっかけコミュニケーション」や、各障害の当事者が部屋の主人となって自身の体験を参加者に直接伝える「どっぷりコミュニケーション」といった、参加者同士の理解を深め合うものから、八丈太鼓や盆踊りといった島ならではの文化を堪能するものまで、実に様々です。また、夜には参加者同士でお酒を酌み交わしながら思う存分語らう「ダイバー(Bar)」も開店しますし、朝には皆で海沿いを散歩する「ユニウォーク」もあります。
 中でもキャンプのハイライトといえるイベントが、2日目の夜に行われる「ユニバーサル盆踊り」(通称:ユニ盆)です。盆踊り当日には毎年、開催を知らせる町内放送が流れます。婦人会の方々による出店や地元の福祉作業所の皆さんによる手話歌のプレゼント等もあり、その様子を見ていると、まさに八丈町全体でバックアップして下さっていることが伝わってきます。

毎回新しい挑戦を続けています!

 そんな温かい雰囲気があるからこそ、私も安心して毎年新しいことに挑戦することができます。初回となった2016年こそ、(このキャンプに引き合わせてくれた)知人とともに参加(テント内での介助を依頼)しましたが、2017年からは「なんとかなるさ」の精神で単独参加し、参加者の方々にサポートをお願いしています。また、2日目の午後に行われる「選択プログラム」(島の自然や文化を満喫できる複数のプログラムの中から、自分の好きなものを体験することができる)では、初年度の「海水浴」に続き、この年は無謀にも「シュノーケリング」を希望しました。ここでしか味わえない体験をしたい」という申し出に応じ、快くサポートをして下さった現地のインストラクターの方には本当に感謝しています。

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*たくさんのウミガメを見ることができました!

 こうしたプログラムはもちろんのこと、私にとって何よりも大きかったのが、参加者の皆さんとの出会いでした。障害や国籍など各々のバックボーンに関わらず、まさに多様な方たちがただ純粋に(このイベントに魅せられ)キャンプを楽しみに来ている。異職種同士の出会いや繋がりは、私が「これまでいかに狭い視野(偏った考え方)の中で生きていたか」を教えてくれたのです。

「あなたにはもっとできることがある。こんなところで立ち止まっている場合ではない」
 まるで八丈島の真っ青な空と海に、そう諭されているかのようでした。

ユニバーサルキャンプがもたらした『劇的ビフォーアフター』

 それからというもの、私の行動は変わりました。どんなに忙しくても、どんなにヘルパーの手配が難しくても、心から「行きたい!」と思えばとにかく行動を起こし、会いたいと思った方には自分から会いに行くようになったのです。やるべきことがあればあるほど行動は積極的になり、私生活も充実していったのだから不思議です。いつの間にか、病気で療養していた頃とは真逆の考え方をするようになっていました。
 
「生きていく上で本当に必要なのはコミュニケーション力。自分が困った時や何か行動を起こしたいと思った時、大切なのは人との繋がり。感謝の気持ちを忘れず、誰かと協同することで、可能性はいくらでも広がる

 この思いこそ、島での出会いが私に教えてくれた財産です。今でも、キャンプで出会った仲間とは交流を続けています。  
「自分にはいくつもの選択肢がある」と感じることができる。私は今、この幸せを噛みしめています。

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