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何を頼んで、どう頼まれるか

 書籍『僕にしかできないこと あなただからできること~障害を忘れられる瞬間を求めて~』(ジュピター出版株式会社,2019)本編にも採用されたこの原稿も、やはり3年前に書いていたものの1つだ。

 自分で真摯に・・・とか言っちゃうあたり、未熟感極まりないですよね(笑)

「できない」は”のびしろ”の裏返し

 これは、日々の「仕事」に対して真摯に向き合う中で浮かんだフレーズです。障害者と呼ばれる私が仕事を遂行していく為には、その内容はもちろん周囲との人間関係が一際重要だと考えました。
 例えば、高い所の物を取ること、誰かの話を聞きながらメモを取ること、1人で整理整頓を行うこと。これらは、私が日常の業務で苦手なことの一部です。そのまま仕事に当てはめると、それぞれ「プリンターでのコピーや印刷」「電話応対時のメモ」「書類を揃え、運び、(ファイルや棚など)に収納したりすること」となります。
 裏を返せば、私が仕事をする際にはこうした「苦手」を他者に依頼することができれば、問題は解消するのです。しかし、学生の時代にも感じたように「やってもらってばかりでは申し訳ない」ですし、私が仕事を依頼するということは、一瞬でも誰かの手を止めてしまうわけです。当然、私以外の皆さんも会社に収入を得るために来ていますから、各自が限られた時間の中会で会社に貢献しなければなりません。私もサポートしていただいた分、他のことで「貢献」しなければという強い思いを持っていました。

 ですから、次は「(仕事を)どう頼まれるか」を考えなくてはいけません。そのためにはまず、自身の強みをしっかりと把握しておかなければならないというのが持論です。私にスピードを求められても他者より劣るのは明らかですから、得意な領域で貢献するしかない。私が働く中で苦手なことを克服して貢献できるほど、会社は甘くないと思っていました。これが「お金を払う立場」から「お金をもらう立場」への変化だと捉えています。自分は苦手だったとしても、それが得意な人は必ずいるものです。

得意な仕事を掴むために大切なこと

 さて、(私の得意な)人に伝える仕事をどうすれば頼まれるかといえば、それはもう「アピール」に尽きます。とことん自分を売り込み、信用してもらうしかないのです。しかし、世の中そんなにタイミングよく講師の仕事が舞い込んでくるはずもありません。ですからやることはただ1つ、チャンスが来るまで地道に丁寧に、「何でもこなす」ことです。
 電話1本、メール1通、お客様からの問い合わせ1つ・・・。どれも決して疎かにしてはいけません。人に伝える仕事がしたいのなら、そのために必要なスキルを目の前の業務で磨く必要があると思いました。見られていないと思っても、見ている人は必ずいます。良い行いは自分が言わなくても誰かが広めてくれますが、その逆もまたしかり。バレないだろうと悪さをすれば、いつかは必ず明るみに出るものです。

 かくいう私に、ヘルパー養成のための資格講座『重度訪問介護従業者養成研修』における講師の打診があったのは、入社4年目の春でした。「何を頼んで、どう頼まれるか」を考えながら、掴んだチャンスにあぐらをかかず、努力を続けることが何よりも大切ではないでしょうか。

いただいたサポートは全国の学校を巡る旅費や交通費、『Try chance!』として行っている参加型講演会イベント【Ryo室空間】に出演してくれたゲストさんへの謝礼として大切に使わせていただきます。