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初めて行った学校が素晴らしすぎた件〜大阪出張 冬の陣(1)〜

未開の地に降り立つ時のワクワク感は、今も昔も変わらない。

今月初旬、1泊2日の日程で初めて大阪にやってきた。到着早々新今宮駅まで足を延ばしたものの、主戦場はほぼ新大阪駅。1日半、ここを拠点にできる限りの予定を詰め込み、動き回った。

(※この辺りについては次回からのブログで少しずつ…)

とはいえ、駅を拠点にしていることからも分かるように、今回の目的は観光ではない。学校に行くこと、学校に行って子どもたちと関わること。


この度、大阪府大東市にある小学校を訪れた。子どもたちの「バリアフリー体験教室」をサポートするため。きっかけは自身が理事を務めるNPOユニバーサルイベント協会でともに活動する先輩からの1本のメールだった。

「どうしても12月3日に大阪で喋れる人が見つからないから、誰か紹介してほしい」

協会のメンバー全員に一斉に送られた1本のメールに、僕は即座に反応した。その場にいた友人に(同行を)頼み込んで。『子どもたちが僕を呼んでる(笑)』と思った。

思い違いでもいい。これが僕のやりたいことだったから。ダメ元で「僕、行けます!」と即答した。その間10分、その後の調整を含めても30分もなかったと思う。この時点ではまだ、本当に東京の人間にお呼びが掛かるのか、疑心暗鬼だった。それでも迅速に動いてくれた方々に感謝。

そうしたら本当に大阪出張が実現してしまった。

挑戦すれば道は拓ける!

(※迷った末に前乗りにしたのは、同行した友人に「せめてグルメだけでも堪能させてあげたい」という僕なりの心遣い。事実、授業当日は僕たちはほぼ別行動をしていたのである(苦笑)

その場に溶け込むのに、時間はかからなかった

「1度だけ打ち合わせをさせてほしい。特に資料はいらない。30分前までに来てくれればいい」

事前に言われていたのはたったこれだけ。本当に1度きりの打ち合わせで本番を迎えてしまった。(普段の僕は、前後のカリキュラムや授業のつながりも考慮して念入りに準備をするので)普通なら不安になるはずが、不安はまったくなかった。

今回はチームだから。

まず、今回は学校単体の依頼=長野個人の授業ではない。(大阪府)大東市あげての”事業”(バリアフリー教室)であり、日を変えて市内6つの小学校を回る中の1日であること。そして、運営には年間13,000ものイベントを手掛けるイベント製作会社「株式会社セレスポ」の方々が携わっていること。最後に、日頃からともに活動し今回の授業のきっかけをくれた先輩も現地に同行してくれること。

これだけでも心強いが、その場をメインで進行した僕と同世代と思われる女性(※セレスポ社員)の進行が実に的確で、しかも子どもに寄り添った目線と声掛けで進行して下さったこと。本当に頼りになったし有難かった。

1ヶ月の教育実習で精魂を使い果たし、情熱と(自身の確たる)ちょっと特殊な経験だけでたまに子どもたちの前に立っている己とは明らかに場数がちがう。

最初に資料を広げて流れの説明をしてくれたのだが、その時点で僕はすでに安心し、子どもたちへの第一声を聞いた瞬間に「すべてを委ねよう(そうすれば大丈夫!)」と半ば職務放棄しそうになった(笑)

すべてが終わってから彼女に経験を聞いてみると、「何もやってないんですけどね^^;」と謙遜しつつ、幼稚園と学童でアルバイトの経験があると明かしてくれた。いやいや、十分やっとる…!

瞬時に言葉で伝える難しさ

それでも、今回のメイン講師はこの私。その自覚はもちろんある。

百戦錬磨の彼女から僕に任されたのは、冒頭5分(=自己紹介)・ラスト15分のスピーチと、体験スタート位置での合図、適宜の声掛けという主に3つの役割。

同じく体育館の対岸では視覚障害者の体験、校庭(中庭)ではリフト付きバスへの車椅子乗車体験も行われていたけれど、僕がいるのはもちろん「車椅子操作・乗車体験」のスタート位置。これら3つを90分の中でローテーションしていくので1回で相手にするのは20人強といったところ。

ちなみに関西の学校は中庭がある形が多い、というのもこの方から聞いてこの日初めて知った。

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児童は最初に(車椅子に)乗る側と押す側に別れ、2人1組のペアになった状態で僕のところにやってきます。コースは全部で3ステップ。

まずは三角コーン2つを右、左と避けながら進んでいくスラローム。次の長机が左右に置かれた道をぶつからずに進むセッションは、狭い歩道をイメージしたもの。そして最後は体育館にある運動用のマットを段差に見立て、前輪を上げて乗り越える練習。

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後輪の間にあるステッピングバーを踏んで前輪を上げるのはもちろん、自分の腰を背もたれに押し当てて体重を前にかけることで、まだまだ力の弱い子どもたちでも、安全に車椅子ユーザーをサポートすることができるのです。

(乗る側と押す側それぞれ)時間にして1人1分ちょっとの体験。直前にデモンストレーションでは分かったように頷いていても、直後には予期せぬ動きを繰り出してくる子どもたち(笑)

・車椅子に乗る時に早速フットレストレストを上げ忘れ、押す側はグリップを持つことも忘れてガタンと前傾しそうになる車椅子。

→こんな時、その場でもう1度正しい動きを見せてあげられたら…!

・出発前、押す役が外すブレーキを高確率で乗っている子が外してしまっていた時、「今日は僕たちの気持ちを味わってほしいから、後ろの子に任せよう!」と飛んで行って助言してあげられたら…。
・スタート直後のスラロームに混乱し、ただただ通り過ぎたり左右交互のS字の動きが理解できず、同じ動きですり抜けて行こうとする子どもたちに追いつき、瞬時に動作を修正してあげられたら…^:^

そんなふうに思う場面がたくさんたくさんありました。

それでも子どもたちは素晴らしかった!

自分なりのもどかしさはたっぷりと感じた一方で、それでも子どもたちの”姿勢”には驚かされました。物理的な姿勢(行儀)がいいのはもちろんのこと、聴く姿勢、受け止める姿勢が素晴らしかったです。

先に述べたように内容の咀嚼が追いついていない子は確かにいたかもしれませんが、(それはこちらの問題であって)いわゆる車椅子体験に見られがちなガチャガチャ感は全くありませんでした。

教育に携わる1人の大人として、こちらの意図通りに動いてくれたから良い子などとは絶対に言いたくありませんし、それは教員免許を取得した時からずっと思っていることでもあります(だから一般的な”良い子”という表現をこの場で簡単に使ってしまうことに、とても違和感を覚えるのです)。

それでも、話を聴く準備・新しい体験を受け止める準備がきちんとできている彼らの姿勢に感嘆しました。その事実を自分の言葉でしっかり表現したいと思い、そのままの気持ちを校長先生に伝えました。素晴らしかったです!と。

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そんな子どもたちは最後にとっておきのサプライズを用意してくれていました。


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もちろん手作り、全編手書きの【学校案内図】をプレゼントしてくれたのです!まるで僕の超ド級の方向音痴を見透かしていたかのように。

(※手書きの詳細な校内図にはそれぞれ手書きで、「危険」とか「ここなら通れる」とか、「〇〇はもっとこうしたほうがいい!」といった子どもたちの詳細な気付きが丁寧にまとめられていました)

この日が彼らにとってこれまで行ってきたバリアフリー学習の総まとめであることを知ったのは、この直後でした。

本当にもらうことを躊躇ってしまうクオリティでした。。。

そんな彼らが大人になった社会はこんな授業をする必要がないくらい、みんなが生きやすくなっているといいな。

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僕が子どもたちに伝えたこと

(ここまでの長編を書いたら、せっかくなので)最後に僕が子どもたちに伝えたこともまとめておきましょう。

冒頭:自己紹介(5分)

皆さんこんにちは!長野僚です。僕は生まれた時から歩くことができません。だから今、こうして車椅子に乗っています。
ここまで話を聴いて、僕のことを「かわいそう」だと思う人?(全員の手が挙がる) 「大変そう」だと思う人?(8割型手が挙がる) 「楽しそう」だと思う人?(手を挙げる児童は皆無…。そして辺りの様子をうかがう)
そうか…!「楽しそう?」にはほとんど挙がらなかったね^^でも、車椅子があるおかげで僕はいろんなところに行けます。そして、車椅子には便利なところも不便なところもあります。みんなも今日の体験を通して何が不便で何が難しいか、たくさん感じてあとで僕に教えてください。楽しくやりましょう!


体験を終えて、講話(15分予定→3分)

皆さんどうでしたか?^^体験中少し話を聞いたけど「楽しかった!」という声があちこちから聞こえてきているね!最初の質問でほとんどの人が「大変そう…」「かわいそう…」だったので、僕はうれしいです^^
(子どもたちの目の前にあるバインダーに視線を落としながら…)今日みんなはたくさん気付いたことがあると思います。ぜひそれを自分の言葉でいろんな人に伝えてあげてください。
街に出れば本当にいろんな人がいます。今までは(すれ違っても)気付かなかったかもしれませんが、これからはたくさんのことに気付けるかもしれません。
最後に…。車椅子に乗っていても、元気に楽しいこともいっぱいできるんだということも覚えておいてください^^今日(昨日)僕は東京から新幹線できました!電動車椅子でも遠いところに行けます(笑)…これで僕の話を終わりにします。ありがとうございました!


「東京から新幹線で来た!」という部分で、この日1番の(エ〜ッ^0^!)という歓声が上がった。これだけで大阪まで来た意味はあったと思えた瞬間である。

子どもたちからもらったたくさんのお土産を4,000個の文字に変えて。


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引き続き、随時講演依頼をお待ちしています!

全国どこへでも、想いを届けます!(書籍)


いただいたサポートは全国の学校を巡る旅費や交通費、『Try chance!』として行っている参加型講演会イベント【Ryo室空間】に出演してくれたゲストさんへの謝礼として大切に使わせていただきます。