YOASOBIのライブ会場で『はじめての』を読了した話
5月5日、YOASOBIアリーナツアーの仙台公演に行った。
開場15時半、開演17時と分かっていたから、開場から開演までの時間に読む本を持っていった。ふと『はじめての』に収録されている『色違いのトランプ』が未読だったことに気づく。
『はじめての』に収録されている小説は全てYOASOBIによって楽曲化されているが、僕はいつも楽曲を聴いて耳に馴染んでから小説を読み、また楽曲を聴く、という順序で楽しんでいたので『セブンティーン』が耳に馴染んでから読もうと思っているうちに仙台のライブの日になってしまった。
本は読む場所を選ばない。本とページを照らす明かりさえあれば読める。通信が混み合うライブ会場でも本ならば自由に読める。
最近、なんとなく本を読了する場所に意味があるような気がしている。いつもの自分の部屋で読み終わってもいいけれど『はじめての』を読了する場所はここであるべきだと思った。
ライブ会場で未読の『色違いのトランプ』を読む。宮部みゆきさんの作品はほとんど読んでこなかった。だからこの文体が新鮮でおもしろかった。
まず世界観がおもしろい。短編で収めるにはもったいなかったのでは、と思わされた。物語が終わった後も続きを読みたいと思えたし、映像化してほしいと思った。
『はじめての』を読了したあと、ライブが始まった。いつもはサブスクの音源で聴いている歌をライブで聴ける。それも『はじめての』読了後すぐに。こんな贅沢な体験ってないなと思った。
セットリストの何曲目かで『セブンティーン』が始まると、音楽に踊るのも忘れて聴き入ってしまう。歌を聴きながら、物語を思い出せる。ライブを見ながら頭の中では違う景色が見えている。
久しぶりに声を出せるライブだったけれど、ずっとライブを楽しめていなかったという感覚はなかった。YOASOBIの武道館のライブって本当に楽しかったよな、とふと思い出した。
コロナ禍になる前のライブの風景がどんな感じだったか、もう忘れてしまった。でももう別にコロナ禍以前のライブを再現する必要はなくて、これから楽しめるライブが作られていけばいいんだと思えた。
思えば、ずっと元に戻ろうとしていたが、元に戻るためには戻るための型が必要で、多分いまさら過去の型を探す必要もないんだと思う。この3年間でいろんなものが随分変わってしまったし、それは社会的な物事から個人的な物事まで様々で、それを全部3年前に戻そうだなんて無理な話だ。
ライブ会場で読む本がおもしろいとは3年前には思いもしなかった。あの時から3年後を既に生きている。どんな過去にも戻れはしないから、これからの楽しいことを見つけていけばいいんだと思う。
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