日記・春そのものは存在しない

 春生まれなのに春の記憶の中に誕生日は入っていない。誕生日は誕生日の記憶、そこに春は関わらないらしい。春を思い出す時に誕生日が現れた試しがない。
 気温が高かったからなのか、月曜日からずっと春を思い出している。それを春に入ると言っていて、思い出すというより体の感覚が春にいる時の感覚になる。
 春ではないのに春の空気感が記憶から湧いてくる。どこかに出かけた記憶や何かをしている記憶がなんとなく浮かぶが定かではない。多分これなんじゃないかと思うものは春の記憶そのものではなく一番手前にあった物を手に取ったような記憶で、思い出しやすいからそれだと思い込んでいる。
 ああ、そうだ、春そのものは存在しないのだ。何かのまとまりを春と呼んでいるだけで、春と呼ぶ為の要素がいくつか揃うと僕は春っぽいと思っている。だから春の要素を揃えてやれば春に入れる。
 知らない街の桜を見に行きたい。仮想ではなく本当の姿で、春に行きたい。

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